八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百三十四話 件その五
「ですから」
「信じられますね」
「そうです」
僕にしてもだ。
「妖怪や幽霊の話は」
「私はこの目で見たので」
「余計にですね」
「終戦直後は人魂もよく見ました」
こちらもというのだ。
「空襲の後で」
「空襲で死んだ人の魂ですか」
「そうだったのでしょう」
「それは悲しいですね」
「はい、この世に存在しているのは我々だけではないです」
人、そして普通の生物や植物だけではないというのだ、もっとも人間も他の命ある存在も変わらないと思うが。違いは文明の有無だけで。
「このこともご承知下さい」
「妖怪も幽霊もですね」
「この世に存在します」
確かにというのだ、畑中さんとそうした話をした。
そしてそのお話の後でだ、僕は一階のリビングに降りると早百合さんがピアノを弾いていてだった。裕子さんが隣に席を持って来て座っていた。
二人は僕を見るとだ、こう言ってきた。
「何かありましたか?」
「学校でのお話の続きでしょうか」
「続きになりますね」
そちらだとだ、僕は二人に答えた。
「多分」
「と、いいますと」
早百合さんは僕に演奏を止めて尋ねてきた。
「一体」
「件ですけれど」
畑中さんとの会話を思い出しつつ話した。
「あの妖怪のことですが」
「あの牛の身体で人の頭の」
「はい、あの妖怪です」
「予言をしますね」
「あの予言ですが」
その件の予言について話した。
「本当でしょうか」
「はい、おそらく」
「おそらくですか」
「私もそう思います」
早百合さんもというのだ。
「件の予言は真実です」
「そう思われますか」
「事前にはっきりと言いますね」
「後でとかぼかしたりでなくて」
「それはです」
「予言ですか」
「はっきりとした」
まさにそれだというのだ。
「それだと思います」
「件のそれはですか」
「予言は本来そうあるべきです」
「事前にはっきりとですね」
「そうです」
まさにというのだ。
「ですから件の予言はいいです」
「予言ですか」
「正しい予言です」
本来あるべき姿のというのだ。
「それは」
「そうですか」
「はい、はっきりと事前に言うので」
「その予言はいいですか」
「後で言う予言は卑怯です」
このことは本当に裕子さんも言う、先生も畑中さんも同じだけれど心ある人の思うことということか。
「しかもどうとこれる解釈を出して」
「それはですね」
「商売目的かより以上よからぬ目的か」
「そうしたもので、ですか」
「言っています」
オウムや破滅願望の強い漫画編集者のチームみたいにだ。
「そう思います、私は」
「そうですか」
「しかし件はそうでないので」
「信じられるんですね」
「私は件を見たことはありません」
裕子さんはこのことは断った。
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