八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百三十四話 件その二
「他の家ですが」
「そのお家に匿われれていて」
「政府要人の屋敷を盥回しにされていたともです」
「言われていますか」
「そこはよくわかりませんが」
「牛女はいたんですか」
僕は畑中さんに問うた。
「あるお家に」
「はい、そしてです」
「空襲で、ですね」
「そのお家が焼けてです」
そしてというのだ。
「牛女は六甲に逃れたそうです」
「それで今もですか」
「あそこにいるとか」
「そうだったんですね」
「あくまで噂です」
根拠はないというのだ。
「しかしです」
「畑中さんはですか」
「この噂を信じています」
否定せずにというのだ。
「そうしています」
「まさか」
「見ました」
「牛女を」
「はい、六甲に車で行った時に」
「六甲で、ですか」
「夜に進んでいましたが」
その六甲の山中の道をというのだ。
「その道の横にです」
「いたんですか」
「ちらりとですが間違いありませんでした」
畑中さんは嘘を言わない、それに見間違えたりする様な迂闊な人でもない。それだけしっかりした人だ。
「人の身体に牛の頭」
「牛女ですか」
「私と同乗していた方が二人おられましたが」
「お二人もですか」
「見られたとのことです」
畑中さんだけでなく、というのだ。
「牛女を」
「そうだったんですか」
「それに件もです」
まさにこの妖怪自体もというのだ。
「一度見たことがあります」
「本当ですか?」
「はい、八条家が昔から契約している牧場の一つですが」
「何処のですか?」
「長野の方のです」
そこのというのだ。
「牧場にたまたまその時お仕えしていた方のお供で行きましたが」
そこでというのだ。
「私は見ました」
「件をですか」
「牧場の責任者の方も驚いていました」
「そうでしょうね」
「はい、まさか件が生まれるとはと」
「その人は件のことは」
「妖怪の存在自体を信じておられませんでした」
そうだったというのだ。
「その時までは」
「そうだったんですか」
「はい、しかし」
「件をその目で御覧になって」
「信じました」
「そうだったんですね、それじゃあ」
その件の話を聞いてだ、僕は畑中さんにさらに尋ねた。
「その件も予言を」
「しました」
「やっぱりそうですか」
「近く台風が来ると言っていました」
「台風ですか」
「そして実際にです」
「後で台風が来たんですか」
「そして件ですが」
生まれてすぐに人の言葉で予言をしたこの妖怪はというと。
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