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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第五話




あのコンフェイト大森林の出来事から数日。大分森の方も落ち着いてきたとの事で、僕達とは別にアドリビトムで調査隊が結成され、調査が行われた。
結果は案の定、星晶《ホスチア》であった。

それで現在、あのコンフェイト大森林の場所と同じ様な現象が起こったらしき別の場所、オルタータ火山の調査が開始されるらしい。


で、今現在、僕が行っているものは……



「――はぁ、メリアもご飯くらいちゃんと食べてよ…」


ロックスさん特製のお弁当を手に、オルタータ火山への調査に向かうであろうメリアを船内で探していた。

何でも彼女、ロックスさん曰わく朝から依頼に出て戻ってきた今現在まで食事をしていないらしい。しかも、この後直ぐオルタータ火山への調査も行くらしく、ロックスさんがせめてお弁当でも、と作り、僕に任せてメリアに渡す事になった。

パシりじゃない。そう、頼まれたんだからきっとパシりじゃない。ロックスさんは良い人だから。


取り敢えず、彼女の部屋の前へと向かい扉を三回ノック。いきなり扉開けて入るというラッキースケベスキルは僕には付いてない筈だ。


「はーい、どうぞー」


扉越しに聞こえてきたのはメリアではなく、よく聞くカノンノの声であった。
あ、そう言えばメリアとカノンノ、相部屋なんだっけ。


「すみませーん。乾衛司ですけど、再確認で入って大丈夫ですかー?」


「え……衛司?あ、ちょ、ちょっと待っててっ!!」


「………衛司…?」

僕と分かった瞬間、先程の声とは打って変わって扉越しでも分かるように慌てながら何かをしているカノンノ。少し遅れて確認するようなメリアの声も聞こえた。
うん、再確認しといてよかった。


「……も、もう大丈夫でーす」


「えっと……失礼します」


数分程して聞こえてきたカノンノの声に思わず恐る恐る扉を開ける。
扉を開けてみると……やけに綺麗にその桃色の髪をとかし終えた様を見せるカノンノと、いつもと変わらず不思議そうな表情をしたメリアが居た。




うん、さっきの数分で何があった。
気のせいかカノンノの表情は何かを期待しているようにも見えた。

「えっと……それでどうしたの?」


「あぁ、うん。実はメリアに用が……って待って、何でカノンノはさっきと一転不機嫌になるの?」

「別にぃ……」


何故か本来の用を言ったらさっきまでの表情とは一転、さもどこか不機嫌そうな表情となるカノンノ。いや、本当になんでさ?


「衛司…用って……?」


「うん。メリアご飯食べてないんでしょ?それで直ぐにオルタータ火山に行くんならせめてお弁当を持っていきなよ、だってさ」


小さく首を傾げるメリアに手に持っていたお弁当を渡してそう言う。
今更だけど、メリアってあんまり食べる所見たことないから少食なのかな?

「お弁当……あり、がとう……」

「うん、どう致しまして。でも、ちゃんと食べないと身体壊しちゃうかもしれないから、頑張るのも十分だけど、気をつけないと駄目だよ」

「ん……うん……」

メリアの言葉にそう言った後、そっとメリアの頭を撫でると、心地良さそうに目を細めるメリア。
最近分かったけどメリアは頭を撫でてあげると嬉しいらしい。

「………………」

――……そしてその近くにカノンノが居ると、カノンノが大層不機嫌になるのもよく分かった。








――――――――――――



あの後、メリアはルビアやウィル達と一緒にオルタータ火山の調査に向かった。
で、僕は現在……


「いや、なんか、本当にすみません」


「別にぃ……何で衛司が謝るのかなぁ」


甲板で依然不機嫌なカノンノに全力で土下座していた。
プライド?此方の世界に来てオタオタに負けたあたりでどこかに行ったよ。


「いや、それは、その、本当にすみません」


「もう……別にいいよ。どうせ、衛司の事だから絶対分からないだろうから」


カノンノのやけに意味深なお言葉に首を傾げてしまう。
……どういう事だろ。


「……むぅ。衛司のせいで今日はあんまり思い付かないや」

「本当に酷い言いようだね…。思い付かないって……?」


「ぁ、衛司には言ってなかったっけ。えっと、これの事なんだけど……」


そう言ってカノンノが差し出してきたのは少し大きめなスケッチブックであった。
手にとって開いてみると…此方の世界ではまだ見たことのない風景の絵が書かれていた。


「……この風景、見たことある?」


「……残念ながら、わからないよ」


「衛司もかぁ。メリアもそうだったけど、記憶の手掛かりになるかと思ったんだけど……」


僕の返答に残念そうな表情を浮かべるカノンノ。正直な話、この風景は僕が元いた世界でも此方でも見たことのない風景であった。

「…なんかごめんね」


「ううん、気にしないでいいよ。……私もね、この風景を実際に見た事無いんだ」


「カノンノも見た事のない風景……?」


「不思議でしょ?スケッチブックの白い紙を見てるとね、たまに見えてくるんだ。色んな風景が。その見えた風景を筆でなぞって、出来たのがこれらの絵なの」


カノンノの言葉を聞きながら、パラパラとスケッチブックに描かれている風景を捲っていく。
うん……やっぱりまだ見たことのない風景だ。


「他の人にも見せたけど、誰もこの風景を知らない。それに、作り話でしょって、笑われちゃうの」




そう言って少し俯くカノンノ。
確かに、誰も知らない風景なら、そんな言葉が帰ってきても当然だろう。





「……でも、僕は信じるよ」


「え……?」


「カノンノがこんなに綺麗に描けてる風景を、『嘘』だとか、『有り得ない』とか考えれるわけないよ。こんなに鮮明に、分かりやすく描けてるならきっと直ぐに見つかるよ。僕は『嘘』なんて言わない。ちゃんと信じて、もし良かったら一緒に探してあげるからさ」


当然の事でしょ、と付け足し、小さく笑ってそうカノンノに言った後、メリアの時と同じ様にそっとカノンノの頭を撫でる。カノンノは驚いた様子を見せた後、嬉しそうに微笑んだ。


「ん、…うん。……ありがと、衛司」


「どう致しまして」


カノンノの感謝の言葉に、笑ってそう返す。
しかし、カノンノのこの風景……本当になんなんだろうか。
カノンノの頭から手を離し、再びスケッチブックを捲って見ていると、最後の絵が描かれているであろうページが前のページと二枚上手く重ねられて見えなかった。


「………?あれ、この最後のページ…」


「え……っ!ちょ、そこは見ないでっ!!」


重なったページを捲ろうとしたらカノンノに物凄い勢いで引ったくられた。


「え、ちょ……カノンノ……?」


「このページは駄目っ!!ぜぇったい駄目っ!!」


「うぅ……分かったから、落ち着いて……」

大事そうにスケッチブックを抱え、僕から退いていくカノンノに、何故か僕は落ち着いてといいながら、反射的に土下座をしていた。


……元の世界の両親や僕をよく知っている部長へ――


――僕の土下座は、本当に上達していっております。


……何故だか泣けてきた気がした。





――――――――――――



衛司とのそんなやり取りがあった後、カノンノは自室に戻り、抱え込んでいたスケッチブックをゆっくりと捲り上げ始める。



「……見せれるわけないよ」


そう、カノンノは呟いて、二枚重なっている最後のページを捲り上げた。


「……不思議だなぁ。なーんで書いたんだろ」

最後のページに、ふと不思議に自分が描いた『衛司』の絵を見てカノンノはそう呟くと小さく笑った。
僅かながら、その頬は若干赤く見えたのは、気のせいではないだろう。




 
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