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夢幻水滸伝

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第三十二話 九州上陸その六

「一軍の総大将の器ではない」
「その通りやな」
「しかしだ」
「僕がわかってるからやな」
「そもそもこれまでこうした攻め方をしてきたな」
「ああ、まずは遠間から攻める」
 術や砲撃でというのだ。
「いつも通りな」
「戦はそこからだ」
「ほんまその通りやな」
「それで勝てたらよしだ」
「こっちに損害を出さへんでな」
「最善だ、ではな」
「今からな」
「砲撃と術で攻める」
 こうしてだった、関西の軍勢は水際に集結し既に布陣し終えている九州の軍勢に攻撃を仕掛けた。しかし今回もだった。 
 損害は思ったより受けていない、吉川はその状況を見て言った。
「まただな」
「美鈴ちゃんの術やな」
「結界と風をそれぞれ幾重にも上に出してな」
「それで軍勢を守ってるな」
「そうしている」
 壇ノ浦の時と同じく、というのだ。
「今回もな」
「何か向こうのお家芸になってるな」
「攻めればそれに備える」
 芥川が中里に言った。
「それも戦やろ」
「その通りや」
「つまり九州は攻めるのが好きやけどな」
「守るのもやな」
「得意やっちゅうことや」
 そうなるというのだ。
「つまりは」
「そういうことか」
「そや、けれどな」
「ここはか」
「砲撃と術の攻撃を続ける」
 例え思ったより損害は与えておらずとも、というのだ。
「損害を与えているのは確かやからな」
「だからやな」
「このまま攻め続ける、とにかくこうして上陸前に敵を弱めてな」
「それから上陸する」
「そうする」
 このまま予定通りというのだ。
「そしてや」
「上陸出来る状況になって」
「そこからそれや」
「上陸やな」
「そうする、今は焦らへんことや」
「焦らずこうして攻めてくか」
「そうや、我慢して攻めるんや」
 例え敵の軍勢に思った以上に相手に損害を与えられておらずとも、というのだ。与えている損害は予想の半分以下だ。どうやら美鈴の出した結界と風の術は壇ノ浦の時以上に堅固なものになっている様だ。
「このままな」
「攻めて攻めてか」
「タイミングを見るんや、ええな」
「わかったわ」
「ほな攻める時は見極められるな」
 芥川はここで中里に顔を向けて彼に問うた、真剣な目であった。
「そこは」
「ああ、任せるんや」
「むしろこうした時はな」
「軍師、四智星の自分よりもやな」
「大将、六武星の自分の方がな」
「わかるってことやな」
「伊達に武やない」
 その六武星、つまり戦う星達ではないというのだ。
「攻めと守り、そして一騎打ちはな」
「僕の方が自分より上やな」
「そやから攻める時はな」
「わかった、見極めるわ」
「ほなな」
「そうさせてもらうわ」
 中里もその目を鋭くさせて芥川に答えた、そうして今は上陸する時そして上陸の仕方を考えていた。 
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