夢幻水滸伝
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第三十話 壇ノ浦の戦いその九
「そうです」
「そうでごわすな」
「そのうえで周防、長門に上陸し」
「西国を制圧し」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「西国からです」
「東国も倒し」
「天下統一です」
「おい達こそが」
「そうしましょう、では」
「前に進むでごわすよ」
北原は全軍に告げてそうしてだった。
軍勢を壇ノ浦に入れた、関西の艦隊が見えてきたところで。
砲撃が来た、まだ彼等の攻撃射程ではなかったが。
関西の軍勢は砲撃を開始した、忽ちのうちに砲弾が雨あられと来るが。
自軍の砲撃と砲撃を受ける九州の艦隊の状況を見てだ、吉川は三笠の艦橋で言った。
「結界を張ってだ」
「風も操ってやな」
「そうして守りを幾重にも配してだ」
こう芥川に話す。
「我が軍の砲撃を防いでいる」
「大体どれだけ砲撃を抑えられてるんや?」
「半分だな」
吉川は望遠鏡で九州の軍勢の状況を見つつ答えた、見れば彼等は確かに損害を受けているが彼の予想よりも遥かに軽微なものだ。
「今の時点で沈んでいる船は殆どいない」
「爆裂弾を放ってもか」
「そうだ、その爆裂弾もだ」
彼等にとっては切り札であるがだ。
「どうも最後の風の術が強くてな」
「爆風も破片もか」
「完全ではないが」
それでもというのだ。
「そうしたものが風で流され衝撃を弱められていてな」
「予想よりもか」
「効果を出せていない」
「成程な」
「相手も考えているということだな」
「そやな。美鈴ちゃんの策やな」
誰がこの様な対策を用意したか、芥川は即座に察して言った。
「見事なもんや」
「全くだ、しかしだ」
「このまま砲撃続けるな」
「そうしていく、そしてだ」
「敵が来たらやな」
「接近してきてもだ」
例え相手がそうしてきてもというのだ。
「方法がある」
「今度は水平射撃やな」
今は砲の角度を上げて遠距離攻撃用に砲弾を放物線で放っている、だがそれを近接した砲撃用にというのだ。
「そうするな」
「そして鉄砲も使う」
乗り込んでいる兵士達のそれをというのだ。
「とにかく徹底的にだ」
「自分はやな」
「敵が接舷してくる前にだ」
「敵を弱めていくんやな」
「そしてだ」
それからのこともだ、吉川は言った。
「敵は間違いなくそれでも来るがな」
「その時は僕等が出るわ」
中里が笑って言ってきた。
「筋書き通りやな」
「そうだな、ではな」
「このままやな」
「予定通り進めていこう」
「戦いをな」
「何かあればだ」
その時のこともだ、吉川は話した。
「その都度変えていく」
「戦の基本やな」
「戦いは常に兵法書やこちらの思惑通りには動かない」
相手もいるしその時の状況の様々な要素が関わってくる、霍去病が言った通り常に変わっていくものだ。
「だからだ」
「その都度やな」
「変えていく」
その戦術をというのだ。
「そのことは任せてもらう」
「海のことやしな」
「私は陸での戦は出来ないが」
それでもというのだ。
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