八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百三十一話 梅酒その四
「飲んだわね」
「蒸留酒はあまり飲んでなかったわね」
「焼酎は別にしてね」
「けれど相当に飲んでるわね」
「こんなに飲んだ夏はじめてよ」
「私もよ」
二人共だった、とにかくこの夏は飲んでいるというのだ。
その二人にだ、僕はこの話をした。
「それロシアから来た先輩を言ってたよ」
「あのお酒をやたら飲む」
「あの国の人もなの」
「うん、自分のお国並に飲んでるってね」
そのロシアだ。
「八条学園の人達はね」
「ロシア人がそう言うのは凄いわね」
ダオさんは僕のこの話を聞いて深く考える顔になって述べた、述べながらそのうえで今も梅酒を飲んでいる。
「あそこは滅茶苦茶飲むわよね」
「うん、ロシアはね」
「ウォッカをいつも飲んでるから」
「昔からね」
帝政ロシアの頃からだ、寒いのでお酒で暖を取っているのだ。
「そうだよ」
「あそこはそうよね」
「それでそのロシアからの先輩が言われてたんだ」
今は八条大学で日本文学を学んでいる、和泉式部日記がお好きとのことだ。
「八条町はロシア並に飲んでるってね」
「それは凄いわね」
「そうよね」
二人共僕の言葉に強く頷いた。
「ロシアからの人が認めるってね」
「お酒のことでね」
「それなら」
「それだけ飲んでることはね」
思い返してみてもだ、自分自身のことも含めて。
「確かだね」
「というかそれだけ飲んでいるのね」
「ここじゃそうなのね」
「そういえばダオ達もだしね」
「この町に来て相当飲む様になったわ」
「飲める人はそうなるんだよね」
相当に弱い人は別にしてもだ。
「もうどんどん飲んでいってね」
「こういう風になるのね」
「つまりは」
「そうだよ、あの合宿の時も凄かったしね」
実は去年もそうだった、飲んで飲んで飲みまくった。毎朝それで頭が痛くて仕方がなくてお風呂で解消していた。
「お酒はロシア並だよ」
「そういえばあの国の人八条荘にいないわね」
「そうなのよね」
ダオさんとラブポーンさんはここでこうした話をはじめた。
「太平洋の国ばかりでだけれどね」
「ロシアも太平洋に面してるけれどね」
「あの国の人はいないわよね」
「学園にはいてもね」
「うん、そうなんだよね」
このことは僕も知っている、というか二十四人入ってから思ったことだ。八条荘にロシアからの入居者の人はいない。
「これが」
「そうそう、何故かね」
「いないのよね」
「ロシアからの留学生も結構いるのに」
「うちの学園にもね」
「うちの学園昔はいなかったらしいんだ」
ロシアからの人はだ、職員さんを含めて。
「ソ連崩壊かららしいよ」
「それからなの」
「あの時からなの」
「うん、そう聞いてるよ」
これは一族の人から聞いたことだ、昔はロシアの人は一人もいなかったが最近変わったと僕に話してくれた。
「うちの学園は企業グループが経営してるからね」
「八条グループね」
ラブポーンさんがすぐに言ってきた。
「義和のお家が経営している」
「そう、昔からね」
創設の時からだ、何でも宗教団体とかじゃなくて純粋な企業グループが経営している私立の学園は珍しいらしい。
「今の理事長さんも一族の人だし」
「そうよね」
「僕の親戚の人だよ」
親父の従兄になる、親父はひいお祖父さんの末っ子の家系の末っ子だけれどその人は長男さんの家系の次男さんだ。
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