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戦国†恋姫 ー無双の狩人ー

作者:兄犬
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第四章 腕試しと来襲

 
前書き
投稿が遅くなり誠に申し訳ありません。

それではどうぞ。 

 
2人の人物、森可成こと桐琴と、その娘、森長可こと小夜叉。

この二人はアオアシラを軽く狩猟したばかりの森羅に対し、睨んでいた。

そんな二人に対して麦穂が森羅を庇うように、彼よりも一歩前に出た。

麦穂「二人共、この方は久遠さまの大事なお客です。ですのでどうかご容赦を」

そんな彼女に、桐琴が口を開く。

桐琴「五郎左、そいつに聞きたい事があるからちと黙れ」

麦穂「しかしっ!!...「構わん、麦穂」...森羅殿」

自分の庇い立てをしてくれた麦穂の一歩前に出て、桐琴に尋ねた。

森羅「それで、お前らは俺に何を尋ねたいんだ?」

桐琴「貴様が今殺した熊の化け物だが、何だそいつは?それに貴様は?」

小夜叉「そうだ!てめぇ、そいつを簡単に殺したよな?てめぇも化け物か?だったら殺すぜ?」

そんな中でも、小夜叉は不敵に笑いながら森羅を挑発する。

森羅「雑魚は黙ってろ。俺はそこの女に聞かれている」

小夜叉「んだとぉ!!てめぇ!!」

淡々と返す森羅の態度に腹を立て、小夜叉は槍を構えようとするが、桐琴に戒められる。

桐琴「クソガキ!!」

小夜叉「....分かったよ」

戒められた小夜叉は槍を構えるのをやめた。



桐琴「うちのガキがすまなかったね。しかし話しを聞く前にまずその兜を取って素顔を見せてはくれんか?」

森羅「いいだろう」

桐琴の問い掛けに応じて兜を取り、素顔を二人に晒す森羅に桐琴は「ほう」と不敵に笑みを浮かべて、彼の間近まで近づき、値踏みをするかの如くじっくりと彼の顔を見上げていた。



そんな桐琴の行動に麦穂は困ったような顔をし、小夜叉は欠伸をかき、そして桐琴に値踏みをされている森羅本人に至っては別段これといって取り乱す事もせずにいた。



桐琴「中々の良い男じゃあないか?ええ?五郎左よぉ」

麦穂「桐琴殿、森羅殿は田楽桶狭間での御方です」

その言葉を聞いた桐琴はピクリと眉を動かして、不敵に浮かべていた笑みを無くして、今度は真顔になった。


桐琴「こいつがか?そうか...それで殿がか?」

麦穂「はい」

桐琴「へぇ~....ふふっ」

森羅「何だ?」

尚も森羅に対し興味深々に笑みを向けている。

桐琴「おい、五郎左。殿はこいつに執心しとるんだな?」

麦穂「はい、そうです。ですから....」

桐琴「ああ、分かった。殿が良いと言ったのならきっと良い事なのだろうさ。ワシらがとやかく言う事はないさ。な?クソガキ」

小夜叉「ん?おお。母ぁの言う通り、殿がそう言ったのならこっちに文句はねぇよ.....だけどなぁ!!」



小夜叉が森羅に近づく。



森羅「?」

小夜叉「いいか!?今度、またあの化け物が出てきたら、オレが仕留めるっ!てめぇは引っ込んでろっ!!」

森羅を見上げて言う小夜叉に森羅は、どうでもいいと言わんばかりに無視する。


小夜叉「無視すんなぁ~っ!!ゴラァっ!!」

桐琴「黙ってろ!クソガキ!...ったく、ええっと貴様、名は?」

森羅「...荒神...森羅だ」

桐琴「そうか、良い名じゃないか。なら、森羅。ワシの名は森 可成、通称は桐琴だ。で、このガキのは....」

小夜叉「....」


桐琴が自身の娘を紹介をしようとするが、小夜叉は森羅を睨んだままで、一言も言わないでいる。


桐琴「おい!ガキっ!!」

小夜叉「....森、長可、通称は...小夜叉だ」


そっぽ向いて、自分の名と真名を教えてくれた。


桐琴「はあ~。もういい、帰って酒でも飲むか」

小夜叉「お?酒!だったら付き合うぜ母ぁ!」

桐琴「じゃあな、五郎左」



桐琴と小夜叉は、そのまま帰って行き、残された森羅と麦穂は、2人が去るのを見届けた。



森羅「はあ。アイツらも、久遠の配下か?」

麦穂「はい。彼女たちも久遠さまの家臣である森一族です。腕は確かなのですが....」


森羅の問いに答える麦穂であるが、苦笑いを浮かべる。


麦穂「それよりも、森羅殿」

森羅「何だ?」


麦穂「あの熊の化け物が、森羅殿の世界に居るもんすたーと言う者なのですか?」

森羅「ああ、だがあんなのは俺から見て、ただの雑魚の部類だ。アオアシラなんか比べものならない位に厄介な奴が山ほどに居る」

麦穂「そ、そうなのですか?森羅殿は、あのような化け物を狩ってきたのですか?」

森羅「それが仕事だからな」

麦穂「なんと...」


麦穂は言葉を亡くした。森羅から見て、アオアシラなど敵ではないという事と、アオアシラ以上の存在が数多くいるという事に。


そんな時、森羅が....



森羅「いつまで此方を盗み見ている。出て来い」

麦穂「え?.....壬月さまっ!!」

木の陰から、壬月が現れた。


壬月「気づくか」

森羅「当たり前だ。で?何か用か?」

森羅の問いに、壬月は答える。


壬月「ああ。久遠さまがお呼びだ」

壬月が現れてから、森羅は彼女に尋常では無い敵意を向ける。これに気づいた壬月は、内心焦りながらも表には出さずに言う。


壬月「そう敵意を向けんでいい。今日はもう抜き打ちはせん」

森羅「“今日は”か。また在りそうな言い方だが?」

壬月「状況しだいだがな」

森羅「くだらん。それよりも...」

壬月「ん?何だ?」


森羅「虎鉄は無事なのだろうな?無事ではなかったら.....」

またも敵意を向ける森羅。そんな彼に呆れる様に壬月は溜息を漏らし、麦穂は焦りながら説明する。


壬月「はあ、無事だ。安心しろ」

森羅「信じろと?ありえん」

麦穂「森羅殿!貴方様の御連れの猫?さんは、無事です。今は、配下の者たちに見て貰っています。ですから!」

壬月「私が言うのも何だが、お主の相手を信じぬその態度、何とか出来んか?」

森羅「俺に対して牙を剥けてきた貴様等が言うな。それに一度敵意を向けてきた人間を信じる程、バカでは無い」



アカムトXの兜の中から放たれる森羅の敵意の眼差しは、2人を射殺さんとばかりに睨んでいる。



麦穂「...信用...できませんか?」

悲しげに言う麦穂に、森羅は冷たく言う。

森羅「信用という言葉の意味、理解して言っているのか?」


これ以上の問答は無駄だ...と、言わんばかりに二人を突き放す森羅。


森羅「そんなことより、戻るのだろう?」

壬月「ああ」

森羅「なら戻るぞ」

壬月「分かった」

森羅は、久遠の屋敷に戻って行く。その背中を壬月と麦穂は複雑な面持ちで眺めながら、彼に付いて行く。




屋敷では、風呂の用意がされていた為、今までの汗を熱い湯水で流す。





森羅「ふぅー。.....それにしても、まったく厄介な事になった」


森羅は1人呟く。自分らは今何処に居るのか?そして自分らは元居た場所に戻れるのか?そしてもう一つ、それは...





森羅「奴は....今、何処に居る?」



奴....それは彼が元の世界で戦っていたモンスター....あの純白の龍。



森羅「奴が放った眩い光の所為で、この地にやって来たのか。奴を見つけ、あの光に包まれれば....いや、止そう。今は難しく考えても無駄だ」



すると天上を眺めて風呂に浸かりながら、彼はまた呟く。



森羅「俺は....どうなっていくんだ?」














――――――――――――――――――――――――――――――――――











とある森で、ある巨体が動いていた。その者は、森羅と戦ったあの純白の龍である。


しかしその純白の巨体には、剣か何かで斬りつけられたと思われる深い傷があった。


傷に苦しみながらも、ゆっくりと四足で歩く。


そして月の光が照らされている場所にたどり着く。その場所で己の体を休めながら、純白の龍の前頭部の剣のような角に光が集まり始めた。



純白の龍は、不敵に笑みを受けべていく..........












――――――――――――――――――――――――――――――――――――







翌日



森羅「ん..んんっ、朝か。やはり夢ではないか」

森羅は、上半身を起こして周りを見渡す。そこは、久遠が彼に用意してくれた部屋である。それを確認してから完全に布団から離れて、傍に置いてある自分の防具...アカムトXを纏い始める。



下半身から着替え、次は上半身の着替えに移った時である。




久遠「起きろ森羅!!」


彼の部屋の襖が開けられ、久遠と彼女の妻である帰蝶が現れが、間が悪かった。彼の着替えの最中であったからだ。


久遠「す///すまんっ///!!着替えの最中であったかっ///!」


彼の逞しい上半身を見た久遠は、頬を赤くして慌てながらそっぽ向いた。



しかし彼女とは裏腹に、帰蝶は違った。彼女は、森羅の上半身を見て絶句した。



森羅「...何だ」



帰蝶「いえ、なんでもないわ」


帰蝶が見た彼の上半身には、夥しいほどの凄惨な傷跡が多々あったからだ。モンスターハンターとは常に命懸け。故に傷を負うのは当たり前だが、彼の傷は余りに人1人が受けていられるほど軽いものではなかった。


背中には、巨大な爪で斬り付けられたかのような物が、背中を覆っていた。しかし背中だけではない。腕、胸板など、彼に付いている傷は余りに酷い。



帰蝶「貴方...その傷は...一体」

久遠「なに?...っ!!そなた、一体その傷は....」

森羅「別段大したことではない。それよりもいつまで人の上半身を見ているつもりだ?」


久遠「お、おお!!すまなかったな。実はな......お主を我が夫とするっ!!!」


森羅「.........は?」


突然、彼女の口から、彼を夫とするという発言に、内心こいつはバカかと思っている。


森羅「...頭大丈夫か?医者に診て貰え」

久遠「な!なんだとっ!!我は至って正気だ!!」

怒る久遠とは違い、帰蝶が話す。


帰蝶「今日はお城で久遠を前にして評定が開かれます。貴方の事はその時、家中の者にお披露目をします」

久遠「お前を夫にする、とお披露目をするのだ...ふふっ」

森羅「...」

久遠「ん?何だ?どうした?」

森羅「お前、俺と本気で夫婦なるつもりはないだろ?何のつもりだ?」


森羅の険しい表情に、久遠は一歩後ろに下がってしまいながら答える。


久遠「ぐっ、分かった。我は周辺の諸侯から、縁談の話しで困っている。そこらの軟弱な男の妻など、絶対になりたくはないっ!そんなとき...」


森羅「要は、俺に他の男どもの魔除けになれ、っと?」

久遠「うむ、そうだ。だがその代わり、そなたの衣食住はこちらが用意する。どうだ?」

森羅「.....」


久遠の提案に、森羅は思考する。自分の置かれる状況がとても奇異である為、どうにも出来ない。ドンドルマに戻る手がかりすらない。



久遠「森羅?」

故に森羅に残されたのは.......



森羅「いいだろう。その提案聞こう。だが、条件がある」

久遠「ん?いいだろう。何だ?」

森羅「今からお前は、俺の雇用主だ。そして俺との契約期間は、俺が元の世界に戻れるまでだ」

久遠「分かった」

森羅「次に、偽の夫婦を演じてやるが、俺に対して必要以上に干渉するな。いいな?」

久遠「何故だ?」

森羅「俺はハンター...つまり狩人だ。誰かと仲良しこよしをする気は無い」

久遠「何とも面倒な男だ。辛くは無いか?その生き方」

森羅「ハンターとはそういう者だ。俺みたいに、群れるのを好まず1人狩りに赴く奴だっている」

久遠「はあ、分かった。そなたの条件は飲もう。だがその代わり、こちらが協力してほしい時はしてもらうが、よいか?」

森羅「ああ、いいだろう。これで決まりだ」

久遠「では、部屋の外で待っておるから、着替えは...その鎧か?」

森羅「ああ」




森羅の返答に、久遠は溜息吐く。



久遠「はあ、いずれはお前の服を用意せねばな。まあ、それはまた今度だな」

帰蝶「では、部屋の外でお持ちしています」


そう言って、2人は襖を閉めて部屋から出た。




森羅「...はあ~」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――












屋敷から出た森羅は、久遠と帰蝶の案内で彼女たちの城に辿り着く。


そして、久遠は評定に赴き、森羅は別室で待機となった。



森羅「....」


床に胡坐を搔き、瞑想に入っていたが、ある疑問に考えていた。それは前回現れたアオアシラである。


森羅「(何故、この地でアオアシラが現れた?まさか他のモンスターも居るのか?だとしたら奴も...」



そこで在る事に気づく。


森羅「あ、虎鉄の事忘れてた」



そんな時....



麦穂「森羅殿、麦穂です。襖を開けて宜しいでしょうか?」

襖の向こうから麦穂の声が、聞こえた。

森羅「ん?ああ。構わない」

麦穂「では、失礼します」


麦穂は襖を開けて、三つ指を立てて床に伏せて挨拶をする。


麦穂「おはようございます。森羅」

森羅「ああ」

麦穂「昨日の夜は、助かりました。改めて御礼申します」

森羅「別に気にしなくてもいい。無事であればそれでいい」

麦穂「はい...」

森羅「....」


2人の間に、微妙な空気が包まれる。


森羅「...所で、何か用か?」

麦穂「え!あ、はい!久遠さまがお呼びですので、どうぞこちらへ」

森羅「ああ」




麦穂の案内で、評定の間に事になった森羅。しかし.....








???「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!!!!」


自己紹介を済ませた森羅に、赤い髪の少女がいきなり声を上げた。その彼女に壬月が諌める。


壬月「頭が高いぞ、和奏。御前で在るぞ」


しかし、彼女の制止の声に反発する和奏。


和奏「だって壬月さま!いきなり出てきた鎧ずくめのこんな男が殿の夫なんて、どう考えたって....!」


壬月「その件は後にしろ」

それでも壬月は、表情を険しくしながら諌める。

和奏「むぅー...」

和奏が唸りながらにいる時に、今度は和奏の左隣に座っていた滝川 一益。通称、雛が和奏と同様に異を唱える。

雛「まぁ佐々殿の意見も分かりますよー。雛もそう思いますしー」

犬子「佐々殿、滝川殿の意見に犬子、じゃなかった、この前田又左衛門犬子も同意見だよ!!」

麦穂「犬子ちゃん、無理して言葉遣いを改めなくても良いですからね?」

犬子に苦笑いを向けながらに言う麦穂。

犬子「えへへ、ごめんなさーい」

雛「と、言う訳で、我ら三若は反対の立場ってことでー」

和奏「そうそう!やっぱ雛も犬子も分かってるなー。さすが相棒だ!」

雛「まあ、久遠さまがお決めになったことだから、認めるしか無いんじゃないかなーって、雛は思ってるけどね」



と、掌を返す雛。



和奏「なに軽く言ってるんだよ雛ぁ!久遠さまの夫と言えば、政戦両略で尾張にとって重要な位置に当たるんだぞ!」

和奏「それをどこの馬の骨か分からない男が、いきなり出てきて夫になるとか、そんなの認められるかー!!」

犬子「そうだそうだ!!」


壬月「...と、いう意見が出ておりますが」

久遠「うむ...。まあそうなるであろうな。...おい、和奏」

和奏「はい!」

久遠「どうすればこやつを認める?」

和奏「ぼくより強かったら認めます!」

犬子「え。結局それなの、和奏ぁ~」

雛「まあ、和奏だし」






犬子と雛の二人は、呆れながらに言う。しかし久遠は、何かを決めた表情であった。





久遠「強ければ、か。.....ならば簡単だな。森羅、和奏と立ち合え」

森羅「結局、こうなるのか」

久遠「そう申すな。これもお前の為だ」

森羅「まったく、生意気なガキどもだ」

久遠「ならばやめて、逃げるか?」

森羅「いや、確かにこれからの自分の事を考えると、やるしかあるまい」



森羅の答えに、久遠は喜びの笑みを浮かべる。


久遠「うむ。よくぞ申した。それでこそだ」

森羅「まったく。......所で、どこでやるんだ?この評定の間では、壊しかねん」

和奏「なら庭でやればいいだろう!!」







――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――










城の広大な庭の中に設営された仕合の場所に集った森羅たち。



設営された勝負場を見渡す森羅は1人呟く。

森羅「手回しがいいな。まったく」

そんな彼に帰蝶が言う。

帰蝶「先ほど先駆けが参りましたので。....まぁ精々頑張ればいいんじゃない?」

森羅「随分、手厳しいな?」

帰蝶「気のせいではないかしら?ご武運を」




そのまま帰蝶は、自身の観戦席に座る。



森羅「面倒な奴らだ」


その時、久遠の声が響く。


久遠「両者、位置に着け!」


森羅と和奏は、互いに見合って立つ。


和奏「謝るなら、今の内だぞ!」


森羅「何故俺が謝る必要がある?」


和奏「それはお前がぼくに勝てないに決まってるからだろ!!」


すると、和奏の雰囲気が変わる。


和奏「黒母衣衆筆頭、人呼んで織田の特攻隊長、佐々内蔵助和奏成正!」


森羅「荒神、森羅」


和奏「へへっ、いい度胸だ。そこは認めてやる!」


森羅「はいはい。それよりお前の武器はどうした?」


和奏「待ってろ。おい猿!ボクの槍を持ってこい!」


少女「は、はいぃぃぃぃ~」


猿と呼ばれる少女が、槍らしきものをもって来た。


森羅「それが...槍か」


和奏は槍?を受け取ると、槍の柄を地面に突き立てながら、自慢する。


和奏「ただの槍と思うなよー!この槍は国友一貫斉の絡繰り鉄砲槍だ!」


森羅「鉄砲槍?ガンランスか?」


和奏「がん...らんす?何だそれは?槍か?」


森羅「ああ。俺は持っていないが」


和奏「何だそれは...まあいい。どうせお前の負けは決定的だ」


森羅「(ここの娘どもは、年上に対する敬い方がなっていない。どういう育てかたしてんだ)」



ひとり愚痴る森羅に和奏が、彼の背中に背負っているチャージアックスを指摘する。



和奏「お前の武器は、その背中に背負っているのがそうか?」


森羅「ああ。さっさと始めて終わらせよう」


和奏「なめるなっ!!」


そして、壬月の開始の合図が響く。


壬月「それでは....始めっ!!」



和奏「一発で仕留めてやる!そりゃーーーーーーっ!!」


先手を取り、和奏が攻撃を仕掛ける。


森羅「...」




ガギンッ!!!



しかし、それを森羅はチャージアックスを抜き、盾で受け止める。



和奏「なんだとっ!!」


初撃を防がれた事に驚く和奏は、一度距離を取る。


和奏「なら!これはどうだ!!おりゃーーーーーっ!!」


槍を森羅に向けて突きさすと共に、槍の先端部から火が噴く。


チャージアックスの盾に直撃、しかし別段、森羅にとって痛くも痒くもなかった。何故なら盾にも何のダメージもなかった。


これには驚愕する和奏。


和奏「っ!?そんな!!傷一つも付かないなんてっ!!」


森羅「どうする?止めるか?....ガキ」


和奏「こいつぅー!!はああぁぁぁぁぁぁっ!!」


ガキンッ!!


森羅「なんだ?この程度の斬撃は?」


和奏の斬撃を盾でなく、防具に包まれた片腕で防ぐ。


和奏「くっ!!」


森羅「ならば今度はこっちからやるぞ?」


チャージアックスの剣を寸分違わず振り翳し、容赦なく攻める。


ガギンッ!!


ギンッ!!


ジャギンッ!!


連撃によって、和奏は押されていく。これを見た久遠らは....

久遠「ふふっ♪やるではないか森羅」

帰蝶「凄い...」

麦穂「なんという...」

犬子「ああ!和奏が負けちゃうぅ」

雛「これは確定かなぁー」


皆が呟く中、壬月は......


壬月「......ふふっ」









和奏「くそ!!強いぃ!!」


そこで鍔迫り合いとなる和奏は、アカムトXに身を包んでる森羅の顔と向き合う。すると兜の眼の部分から睨んでくる彼の凄まじい眼光に、和奏は一瞬怯える。


和奏「ひっ!!」


それが仇となった。森羅は力で押し返してから、彼女を後ろに吹っ飛ばす。その時、彼女の鉄砲槍は空中に蹴り飛ばされる。



ガンっ!!



和奏「ああっ!!槍がっ!!」


しかし次の瞬間、彼女の眼前には森羅のチャージアックスの剣が向けられる。


和奏「....」


森羅「どうする?ガキ。まだやるか?」


和奏「....参った」


その声が響くと共に、周囲は静寂に包まれた。


帰蝶「――――」

麦穂「――――」

壬月「........」


久遠「うむ!見事なり!」

久遠は立ち上がり、森羅を賞賛した。


森羅「これで終わりか?」

と、森羅の前へ1人の少女がやって来た。



雛「次は雛の番だねー。.....でも和奏ちんが負けたのに雛が勝てるとは思えないんだけどー」

愚痴る雛に壬月の怒号が響く。

壬月「グダグダ言っとらんで、さっさと仕合えぃ!!」

雛「ぶー、相変わらず怖いですよ壬月さまー」

森羅「...次は、お前か?」

雛「はいはいー。和奏ちんとの立ち合いは見せて頂きましたよー。なかなか強いですねー。お兄さん」

森羅「お兄さんか...これでも三十路近くなのだがな」

雛「うふふっ、背が高くて、声も素敵だと雛は正直思いますよー。でも今回、雛本気だしますねー」


言いながら、両側に()いた刀をスラリと抜刀する。


森羅「(....妙な娘だ。気配がおかしい....)」


小太刀を構える雛。和奏よりも隙が少ないところを見れば、慎重な性格なのだろうと森羅は考察する。


すると、雛の周囲に白い靄が発生する。


森羅「ん?これは...」


そう呟くと同時に、雛の姿が彼の前から消えた。


森羅「消えただと?.....後ろかっ!!」


ガギンッ!!!


森羅は咄嗟に剣を自身の背後に振う。その結果、剣が雛の小太刀と火花を挙げながらぶつかる。


雛「ありゃー、外したかぁ―」

森羅「なるほど、気配を消す程の速さか、まるでナルガクルガだ」

雛「?...何それ?」

森羅「なぁに...きにする、なっ!!」


剣を握る力を強くし、押し退け雛の軽い体を吹き飛ばす。




雛「いつつ...なら、もういっちょいくよー!」




彼女はまた気配を消して、仕掛けようとする。これに森羅は剣と盾を構え、周囲の気配を察知する為、神経を研ぎ澄ます。



森羅「そこぉっ!」



シールドバッシュを用いて、自身の真上から仕掛けてきた雛を地面に叩きつけた。



雛「きゃん!!...あいたたたたたー....」


地面に叩きつけられた雛は、痛そうに立ち上がる。


森羅「一体何だ?...その攻撃は」

雛「これは滝川家お家流、頑張って足を動かせば、早く動くことが出来るの術!」

雛の説明に呆れながら壬月が訂正する。

壬月「阿呆。滝川家お家流、蒼燕瞬歩、だ」

雛「ふふっ、それでーす」

森羅「メゼポルタ地方の超越秘技みたいなものか?」

久遠「それぞれの家紋に伝わる秘技だとでも思え」

森羅「了解した」


森羅は、雛との距離を詰める


森羅「絡繰りが分かればどうとでもなる」


雛「んじゃ、もういっちょ行くよー!」

また気配を消す雛。それに合わせる様に森羅はまた神経を研ぎ澄ます。

そして......



雛「お兄さん覚悟――――――――!!!」




姿を見せた雛の二刀の小太刀が襲う。しかし....




森羅「.....ふっ!!!」


雛「―――っ!!」


森羅はチャージアックスの盾を、雛目掛けて投擲する。これには雛や久遠たちも驚いたが、時すでに遅く、盾と衝突した雛は地面に再び叩きつけられた。


そして....



シュンッ!!スパンっ!!


手刀を用いて、雛の首筋を当て、気絶させる。


森羅「これで2人目だな?」


犬子「じゃあ犬子の出番!良いですか、久遠さま!」

張り切りながら嬉々とした顔で久遠に問いかける犬子。

久遠「許す。存分にやれぃ!」

犬子「ふふふっ♪それでは前田又左衛門犬子がお兄さんのお相手しまーす!」

森羅「さっさと来い」

壬月「それでは、両者構え!」


互いに槍と、剣と盾を構える。


壬月「始めッ!!!」


壬月の合図と共に、犬子の槍が森羅に振りかざされる............................................










――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――









犬子「きゅううう~」


壬月「勝者、荒神 森羅!!」


久遠「これで三人抜きとは.....やるとは思っていたが、中々やるではないか森羅」


森羅「単に三馬鹿が弱いだけだ」



三馬鹿「「「ううう~」」」



そんな森羅の前に、壬月が己の得物をもって来た。



壬月「次は、私が相手をする」

余りにも大きい斧をもって来た壬月に、森羅は「ほう」と口から漏らす。


森羅「....」

彼は、無言で剣と盾を構える。これを見届けた壬月が不敵に笑みを浮かべる。

壬月「その意気や良しっ!柴田権六壬月勝家!押してまいる!!」

その言葉と共に、壬月の轟撃が森羅を襲う。


ガギンッ!!!


森羅「ちっ!中々の馬鹿力だ」


壬月「どうした!!その鎧はただの見てくれの飾りかっ!!」

森羅「言ってくれるな、女。なら、少し本気になろう」

壬月「なにっ!?今まで本気ではなかったのかっ!!?」

壬月の問いに、答える気は無く、そのまま彼女の斧を受け止めている盾を使い、押し退ける。


壬月「くうっ!!」



すると、森羅は剣を盾にしまう。これに壬月は問いかける。



壬月「きさまっ!!どういう事だっ!!得物をしまうなどっ!!」

森羅「侮辱されたと思うなら、さっさと来い。時間の無駄だ」

壬月「きっさまああああああああああっ!!!」




彼女の斧が再び森羅を襲う。しかしこれを待っていたように、森羅は剣を仕舞った盾を変形させ、巨大な斧が姿を見せた。


壬月「なにぃ!!」

森羅「ではな....ふんっ!!!」


チャージアックスの斧形態を、壬月目掛けて振りかざされ、彼女は自身の斧で防御するがそれでも森羅の攻撃を止める事は出来ず、彼女の斧を壊しながら彼女を吹き飛ばし、地面に叩きつけたのだった。


壬月「ガハッ!!」





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





気絶した壬月の意識が戻るのを待っている久遠は、森羅の強さに賞賛した。


久遠「まさか権六すら、赤子同然に扱うとは....どれだけ強いのだ、森羅」


森羅「それよりも次は誰だ?麦穂か?」



森羅の視線が麦穂に向けられる。しかし、彼女は首を横に振る。


麦穂「いえ、貴方様のお力は昨夜で勝てないと分かっておりますので、辞退します。それに貴方様の事を、私は認めます」


麦穂は微笑を森羅に向けて言う。それを聞いた久遠は、三馬鹿...三若に問うた。


久遠「権六は、眼が覚めてから聞くとして、お前たちはどうだ?」

三人は、互いに見合わせながら頷き、久遠に言った。


雛「雛は賛成でーす!」

犬子「犬子も賛成です!とっても強いですし!なによりカッコいいですし!」

久遠「うむ。和奏は?」

和奏「僕も...賛成です。これだけの強さを見せつけられれば....ん?」


すると、和奏は何かに気づいた。そんな彼女に久遠が聞く。


久遠「ん?どうした?和奏」


和奏の表情が驚愕したものへと、空へ向けて指を指して叫ぶ。



和奏「あ、アレっ!!」


久遠「ん?な!!」


帰蝶「何!!アレっ!!」


麦穂「と、鳥!?」


しかしその中で、森羅は違った。何故ならば、その鳥らしき存在に覚えがあるからだ。


森羅「....お前ら、直ぐに城に戻れ」

久遠「森羅?お前はアレが何か分かるのか!?」


久遠たちが驚く中、麦穂がハッとなって森羅に問いかける。


麦穂「まさか!森羅殿の故郷に居る化け物ですか!?」


久遠たち「「「「「っ!!?」」」」」



森羅は静かに答える。


森羅「ああ、だから下がれ....いや、もう遅いか」

麦穂「え!?....!!」


そう既に鳥らしき化け物は、森羅たちが居る城の中庭に着地した。



その者の体は大きく、桃色の外殻、しゃくれた大きな(くちばし)、そして扇状に開く大きな耳を持つ。


その者は、多くの新米ハンターにとって大型モンスターとの狩りの鬼門、皆は呼ぶ「先生」と.....


その者の名は....







クカカカ...ホォォォォォァァァァォ!!







イャンクック........次回に続く........









 
 

 
後書き
大変、申し訳ありません。リアルで忙しく中々書く暇がありませんでした。

久しぶりに書いたにしては、余りに酷いですが、どうか今後も宜しくお願い致します。 
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