ヘタリア大帝国
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198部分:TURN19 イーグル=ダグラスその九
TURN19 イーグル=ダグラスその九
「ガメリカを立て直す。今以上に偉大な国家にするさ」
「祖国さんもその言葉を聞くと喜ぶわね」
「俺はあの人が好きだ」
アメリカについての感情もだ。ダグラスは素直に述べた。その顔は微笑んでさえいる。
「国家の中で一番な」
「愛国心ね」
「そうだな。愛国心だな」
「それ故になのね」
「ああ、俺はあの人を今よりもずっとよくする」
その明るい笑顔を思い浮かべながらだ。ダグラスはクリスに話すのだった。
「きっとな。祖国さんは今よりも遥かに素晴らしい国になる」
「そうね。きっとね」
「俺はこれでもお坊ちゃんだったんだがな」
「そうらしいわね」
「ところが世界恐慌で経営している会社が破綻した」
ガメリカではよくあることだった。ガメリカは永遠の繁栄の二十年代から恐慌の三十年代に陥ったのだ。多くの会社が破綻してしまったのだ。
そしてダグラスの家もだ。どうなったかというのだ。
「後は。苦しかったな」
「あの頃は誰もがそうだったわね」
「ああ、親も姉さんも必死に働いてくれてな」
「貴方を大学に行かせてくれたわね」
「そうさ。まあニューディール政策が上手にいってな」
今の大統領ルースの政策だ。民主党のこの政策が当たってだというのだ。
「ガメリカ自体も俺の家もよくなってな」
「それで何とかなったのね」
「俺は映画スターになった。けれどな」
「恐慌で多くのことを知ったのね」
「あんたことは二度と御免だ」
忌々しげな顔になりだ。ダグラスは述べた。
「とはいっても共有主義も反対だがな」
「あの思想は危険よ」
「そうだな。共有主義は全部ぶっ潰しちまう」
「貴方を育ててくれた家族も何もかもね」
「ソビエトにしてもな。厄介な相手だ」
「あのカテーリンという娘だけれど」
「あの娘は何なんだ?」
怪訝な顔でだ。ダグラスはクリスに尋ねた。
「急に出て来てソビエトの書記長とやらになったが」
「そしてあれだけの政策を行う」
「とんでもない政策だが統率力が半端じゃない」
「まるで女王蟻の様ね」
「あんなことをあんな子供ができるのか?」
ダグラスは真剣にこのことを疑問視していた。
「まだ小学校に通う様な歳じゃないのか」
「けれどソビエトでは絶対の存在ね」
「それがわからない。あの娘は何者だ」
また言うダグラスだった。
「何か秘密があるのか」
「諜報部が探っているけれど」
「謎に包まれたままらしいな」
「ソビエトは今や学級会の様なものよ」
それがソビエトだというのだ。
「言うならカテーリンがね」
「クラス委員か」
「若しくは生徒会長か」
「どちらにしろそうした世界か」
「一見清く正しいわ。けれどね」
「それが行き過ぎるとな」
「生徒集会も恐怖の会合になるわ」
クリスは学校の持つそうした一面を語った。
「それがソビエトではないかしら」
「あそこは元々。ロシア帝国もな」
「強権政治だったわね」
「皇帝の独裁だった。あれはあれで問題があった」
「けれど今のソビエトは」
「独裁の裏は独裁なんだな」
ダグラスは忌々しげに言い捨てた。
「それでしかないんだな」
「そうね。円と同じね」
「回っていけばその先にあるのは同じか」
「右でも左でもね」
「あれはファンシズムだ」
ダグラスはソビエトの本質を見抜いていた。それだというのだ。
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