ソードアート・オンライン~剣と槍のファンタジア~
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ソードアート・オンライン~剣の世界~
1章 すべての始まり
2話 演説
前書き
どうも、白泉です!最近かなり冷え込んできましたねー!僕は寒いのが好きなので、こんなのはへっちゃらです!皆様は、体調を崩さないように、気を付けてくださいね♪(なんて自分が風邪をひかないように細心の注意を払いますw)
いやはや、今の時期、学生の身である僕は最高に忙しいんですよー。部活も山盛りですし、なにより来週期末テストという…つまり、現実逃避で書いてます、ということですw
なんていう作者の日常はさておき、今回は「なんでや!」の人とか、巨漢の黒人とか、灰色ずきんちゃんも出てきます。うまく描けるか心配ですが…頑張りますね!wでは、本編をどうぞ!
「こんなのありえへん…あの茅場ってやつの全部戯言やろ…そうや、絶対そうや!」
こんなものが真実だと信じたくなかった。もし、これが現実だと認めてしまったら、それがまた現実になってしまうような気がしてならなかった。いまなら、全面否定さえすればこれが夢になるような気さえもしてくる。
これは夢だ、と、もう一度そう自分に言い聞かせた時だった。唐突に、
「皆さん、いったん落ち着いて、私の話を聞いてください!」
自分の思うままに叫び続ける声の中に混じって、その雑音を突き抜けるような、張りのある美声が彼の耳に入った。その声が広間に響いた瞬間、一瞬にしてあたりが静けさに包まれる。その声には、人々の怒号をやめさせる、不思議な力があるようだった。
いったい誰があの声を発したのか…と皆があたりを見回し始めたとき、広間にある演説台のような場所に一人の少女が昇るのが見えた。キバオウの位置からでは、身長はよくわからない。しかし、その容姿には目を見張るものがある。いや、そんな言葉では生ぬるい。正直、一瞬彼女のアバターだけSAO配信直後のキャラメイクされたものと思ってしまった。つまり、まるで人の手で作られた物のように、完璧な造形美を誇ってたのだ。誰もが異様なほどに美しい少女にくぎ付けだった。彼女のダークブラウンの腰ほどまで届きそうな髪が、仮想世界の風に舞うその様子は、キバオウが見てきたどんな風景よりも美しいと思えた。
広場にいる約一万人の人々が彼女にくぎ付けになっているのは、彼女の容姿だけではない。もしかしたら、彼女はGMかもしれない、先ほどの茅場昌彦の言葉は全部嘘だと言ってくれるかもしれない、そして、自分たちは安全に現実世界に戻れるかもしれないという、淡い希望の光のほうが多いくらいだろう。
少女は、広間が十分に静かになり、自分に注目が集まったと判断したからか、いよいよ話を始めた。
「皆さん、確かに今とても混乱しているお気持ちはよくわかります。いきなり現実世界へ帰れず、しかもデスゲームになってしまったということがまだ受け入れられないのも、当然の反応でしょう。でも、今はいったん落ち着いてください」
凛とした彼女の声は、広間の隅々にまで響き渡っていた。と同時に、人々の希望の光が陰っていくのがキバオウにもわかった。今の彼女の言動を聞く限り、彼女はGMではない。そして同時に、彼女にはこの世界を変える力がないということが。そんな観衆の陰りには目もくれずに、少女は言葉を続ける。
「先ほどの茅場昌彦のチュートリアルは信じられないというものばかりだったでしょう。ゲームなのにゲームオーバーになったら現実世界からも退場するなど、戯言だと思われるかもしれません。しかし、私は彼の言っていることはすべて本当のことだと思っています」
少女の言葉を聞いた瞬間、彼…いや、キバオウの中で怒りが吹きあがった。認めてしまっては現実になってしまう。まるで子供の持論だが、今この場では正常な反応だった。
「嘘に決まっとんだろうが!たかがゲームで死ぬなんてありえへん!絶対にありえへん!あの茅場ってやつがわいらをからかっとるだけや!」
キバオウは無意識的に、そう叫んでいた。彼の声に触発され、あちこちから彼に賛成の声が上がる。
「それは絶対にないです」
しかし、それらあっさりと少女によって切り捨てられた。何の躊躇もなく。消して大きくない声だったが、その鋭い言葉はあたりを再び静寂に戻すのに、十分な力を持っていた。静かになるのを待ってから、少女は、一切の迷いもなく、言葉を続ける。
「あの人のことはよく雑誌で読みました。メディアでの露出を嫌う彼の数少ないインタビューや話だけですが、あの人が命のやり取りについてからかうなんてことは絶対にありません。それに、彼の性格からして、この世界を観賞するためだけに作られたといっても何の不思議もないような人です。これは私が保証します。」
「な…!ならなんであいつはこんなこんを!?こんなこんしてあいつに利益なんてこれっぽっちもないやろ!」
そうだそうだ!という声が再び上がる。しかし、少女が動揺する気配はまったくない。
「先ほどのチュートリアルを聞いたでしょう。あの人は、この世界を創っただけ、それだけで満足なんですよ。そこに理由なんてないし、私たちが理解できるようなものでもないでしょうね。…私たちは、彼が実現したい世界のためだけに、この場に連れてこられたんです」
再び切り捨てられ、ぐうの音も出なくなったキバオウは、その場にへたり込んでしまった。とてつもなく大きな波にのまれてしまったような気がした。今自分が立っているのは夢でも何でもない。仮想世界だが、現実世界。そのことが、真に迫ってきたのだった。
キバオウの周りも同じようにへたり込んでしまっている人が多くいた。皆、自分が置かれているこの現状を理解せねばならない。信じられないが、信じなければいけない。
そんな彼らを上から見下ろしている少女の瞳には、同情や憐みの感情は一切ない。ただあるのは強い光のみ。この場面としては異質なものだったが、現状が現状のため、だれ一人気づかない。少女は彼らを前に次の言葉を紡ぐ。
「しかし、彼は絶対に私たちを現実世界に返さないと言っているわけではありません。この城の頂を極め、ラスボスを倒せば、返すといいました。私たちがすべきことは、自分の置かれている現実を否定し、泣き叫ぶことではないです。自らを強化し、彼からたたきつけられた挑戦状を果たすことではないのですか?」
静かな少女からの問いかけ。広間は水を打ったように静まり返っていた。ここにいる全員が少女の言葉に耳を傾けている。
「もちろん、ゲームオーバー=死を意味するこのゲームで、戦うことは恐ろしいと思います。ですから、全員に全員、攻略をせよ、とは言いません。安全圏の街にとどまるというのも一つの選択肢です。でももし、この中で命を懸けてでもこのゲームを攻略したい、という方は、明日の午前9時にまたここに集まってください。私が全力で来ていただいた人にこの世界での戦い方をレクチャーします」
ざわざわと、人々が騒ぐ。その中で、一人の男性プレイヤーがが少女に問いかけた。
「一つ教えてくれ。君の言動を聞く限り、君はβテスターなのか?」
少女は、躊躇なくうなずいた。
「ええ、私はβテスターです。ですから、10層ほどまでのこの世界のことはよく知っていますし、ここでの生き残り方もよくわかっています。私の言葉を信じてくださるかつこの世界の攻略をしようとする人は、また明日会いましょう。
それともうすぐに日が暮れます。夜になると夜型モンスターへと変換され、レベルも、難易度もより高くなり、夜の狩りはありようを変えたこの世界ではあまりにも危険すぎます。くれぐれも夜は圏外から出ないようにしてください」
彼女はそういうとひらりと軽い身のこなしで演説台から飛び降り、フード付きのローブを翻して路地の裏へと姿を消してしまった。
人々はしばらく沈黙していたが、再びしゃべり始め、少女の助言通りに圏外は出ずに皆、宿屋へと移動していく波が生まれていった。しかし、キバオウの足は動かぬままだった。少女の言葉がキバオウの頭の中でぐるぐると回る。この世界で戦うということは、自分の命を危険にさらすということだ。正直、実感はない。いきなりこんなことを言われても、実感などわくわけがない。しかし、誰かがやらねば、この世界に終わりは来ない。
まだ答えを出すには十分な時間がある。今晩はじっくりこれからの身の振り方を考えよう。そう思い、キバオウも人々の波へ身を預けるように入っていった。
リアは跡をつけているものがいたとしても巻けるように複雑に道を駆ける。やがて路地の壁は視界から消え去り、壮大なフィールドが見えてくる。一応圏外だが、モンスターがポップしない場所。そこにある一本の木によしかかって目をつぶっている青年がいた。肩上で切りそろえられた黒髪が頬にかかっているその姿は息をのむほど美しい。
リアが近づいてくると、青年は目を開け、ふっと微笑んだ。
「お疲れ、リア。よかったよ」
「ありがと、ツカサ君。それにしても、あんな大人数の前でしゃべるなんて初めてだったけど、声震えてなかった?」
「大丈夫だったよ。うまく言ってた」
「そっか。それならよかった」
そういってリアは笑ったが、再びすぐに顔が曇った。
「なんか上から目線で言い過ぎたかな?」
が、ツカサはすぐに首を振る。
「いいや、あれでよかったと思う。この状況で、慈悲も憐みも優しさもいらない。彼らに今必要なのは、ただ淡々と客観視し、絶対に揺るがない指導者だ。この人についていけば何とかなるだろうと思わせるためには、あれぐらいやらないと恐らくついてこないだろうな」
「それを聞いて安心したよ。そこが心配だったんだ」
再びリアは笑顔を浮かべた。
「明日も頑張らなきゃなぁ」
「もしだったら俺も一緒にいようか?」
リアがつぶやくように言うと、ツカサがそう提案する。しかし、リアは首を振った。
「ううん、いいよ、大丈夫。危なくなったら駆けつけてくれるんでしょ?」
リアはいたずらっぽい笑みを浮かべる。ツカサの頬もつられて緩んでしまう。
「まぁな。…モンスターだけじゃないからな、変な男に絡まれないように注意しろよ」
リアはツカサの言葉を聞くと、あきれたように笑った。
「ツカサ君、日本に来た時からそればっか言うよね。大丈夫だって。ここではハラスメントコードもあるし、大体そんなのが出る前にこれでもかってぐらい痛い目にあわせてやるからね」
「ならよろしい」
腕を組み、ツカサはもっともらしくうなずく。そこから数秒後、2人の口から笑いが漏れた。
後書き
はい、いかがでしたか?今回はリアの演説でした!
これから二人はどうするのでしょうか?
次回もお楽しみに!
※感想、評価等お待ちしております!
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