夢幻水滸伝
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第二十六話 浮島その十
「うち等も」
「そうやねんな」
「ちなみにどっちもまだある下着やで」
褌もさらしもというのだ。
「あれはあれで人気のある下着や」
「それで今もあるんか」
「こっちの世界ではメジャーなままやで」
そうだというのだ。
「着けてる人も多いから」
「そうなんか」
「この浮島でも作ってるわ」
「工場でか」
「そや、手工業やで」
「それを大量生産していきたい」
芥川がまた言ってきた、尚彼の下着はボクサーだ。
「そうした技術もどんどん取り入れてな」
「太宰とそうした話もしてるんやな」
「そや」
実際にというのだ。
「してるで」
「やっぱりそうか」
「ものを大量に作って売る」
「それで儲けてやな」
「国も国民も富ます」
「政治の基本やな」
「資本家も労働者も育ててな」
そうしたことも忘れていなかった。
「ここで対立も起こさせん」
「共産主義みたいにか」
「はっきり言うて共産主義にするつもりはない」
自分達の国家をというのだ、芥川ははっきりと言い切った。
「何もならんからな」
「共産主義な」
「ソ連は歴史にあるな」
「ああ、失敗したな」
「経済的にもな」
「能率的やないか」
「経済は生きものや」
芥川はここでこの言葉を出した。
「そうそう上手くいくもんやない」
「共産主義の計画経済みたいにはか」
「ならん、共産主義は他にも宗教の否定とか思想の統一とか政治将校とかあかんもんばっかりや」
今の視点から見てだ、共産主義はこうした問題の多いシステムだ。だが長い間その問題点に気付いていない者も多かった」
「そやからな」
「絶対にやな」
「取り入れん」
こう言うのだった。
「絶対にな」
「資本主義で行くか」
「あっちの世界で言うな。これは太平洋全部がそうや」
「何処も資本主義か」
「そや」
その通りだというのだ。
「それでいくわ」
「資本主義やとな」
「大事なんは金持つ奴に力を与え過ぎへんでな」
「銭は力やからな」
「金があるのはええねん」
それ自体はというのだ。
「けれどあんまり力持っな」
「好き放題やられるとか」
「それは困る、まあ商売人同士で切磋琢磨して技術や資本への投資で金使ってもらうし」
芥川はさらに言った。
「栄枯盛衰もある」
「あかん商売人は落ちる」
「それが資本主義やな」
「ああ、その通りや」
「マルクスはそれを見落してた」
その共産主義の始祖と言っていい学者だ、尚ユダヤ系であったが宗教を否定し反ユダヤ主義者でもあった。
「金はあったらまず生き残りに使う」
「その殆どをやな」
「財閥位やったらええわ」
銭があるにしてもというのだ。
「まだな、むしろ財閥がよおさんあったら」
「それでかい企業でもやな」
「ええねん、まあうちもそこまではいってへん」
財閥が出て来るまで経済が育っていないというのだ。
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