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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百二十七話 飲んだ後でその十

「今から帰るの?」
「そうなんですか?」 
 美沙さんと千歳さんの声だった、声の方を向くと実際に二人がいてそうして僕に笑顔を向けてきていた。
 そのうえでだ、二人で僕にこうも言ってきた。
「帰るのならね」
「ご一緒しませんか?」
「あっ、僕でよかったら」
 僕は二人に笑顔で応えた。
「是非ね」
「じゃあ決まりね」 
 僕の言葉を受けてだ、美沙さんが笑顔で言ってきた。
「三人で帰ろうね」
「うん、八条荘までね」
「そうしようね、ただ」
 僕はここで美沙さんと千歳さんを見てあらためてこう言った。
「ちょっとね」
「ちょっとって?」
「いや、八条荘ならともかく」
 僕達が住んでいるそこならとだ、僕はあらためて言った。
「学校で二人一緒になるのは」
「はい、実はです」
 千歳さんが僕に穏やかな笑顔でその辺りの事情を話してくれた。
「たまたまです」
「たまたま?」
「先程お会いしまして」
「それでなんだ」
「帰る時間が一緒になりまして」
 それでというのだ。
「だからです」
「二人一緒にいるんだ」
「そうなんです」
「いや、あたしもね」 
 美沙さんと言ってきた。
「ちょっと校庭のガジュマル観に行ったのよ」
「あの木を」
「気が向いてね、そしてたらね」
「お会いしまして」
 千歳さんがまた話してくれた。
「それで、です」
「二人一緒になってなんだ」
「帰ろうとしていました」
「それでそこでまたたまたまね」
 美沙さんはまた僕に話してくれた。
「あんたと一緒になったのよ」
「これで全部わかったよ」
「じゃあ今からね」
「うん、帰ろうね」
「そうしましょうね」
 にこりとしてだ、美沙さんは僕に言ってくれた。そしてだった。
 僕達は三人で八条荘まで帰ることにした、その中で。
 ふとだ、僕は夕暮れの赤い空とその空を作っている夕陽を見てだ。それで二人にこんなことを言った。
「もう涼しくなったね」
「夕方になると」
「そうなりましたね」
「そうだね、ちょっと前まで夕方でもね」 
 この時間になってもだ。
「暑かったのに」
「それがね」
「すっかり涼しくなりましたね」
「そうだね、もう夏もね」
 本当にだ。
「織わりだね」
「いや、それでもです」
 ここでだ、千歳さんが僕に言ってきた。
「神戸の夏はまだです」
「涼しい方だよね」
「そうなんだよね」
「江田島は暑かったです」
「あそこはね、ただね」
「はい、江田島は暑いですが」
 それでもだとだ、千歳さんはあそこの夏についてこうも言った。
「何処か過ごしやすかったですね」
「周りが海でね」
「風もあって」
「気候がからっとしてるからね」
「だからですね」
「あそこはまだね」
 確かに暑いことは暑いけれどだ。 
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