八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百二十七話 飲んだ後でその四
「それでと思いまして」
「今日僕にお話してくれたんですね」
「左様です」
一緒にワインを飲みつつお話をしてくれた。
「いらぬ背話かもしれませんが」
「いえ、そんなに美味しいのなら」
「それならですか」
「行ってきます」
「はい、それでは」
「そういえば最近あちらに行ってませんし」
法善寺、あの辺りにだ。
「ちょっと」
「行かれますか」
「そうします」
「夏の善哉は実はです」
「美味しいんですね」
「冬だけでなく」
「あれですね、暑い時には暑いもの」
僕は冬の善哉が何故美味いのかをだ、畑中さんに言った。
「そういうことですね」
「そうです、確かにあんみつ等もいいですが」
「善哉もですね」
「またいいのです」
「そうですか、では」
「お楽しみ下さい」
「そうさせてもらいます、ただ今は」
白ワインを飲みつつだ、僕は自分がもう限界近くまで酔っているのを自覚しながら畑中さんに話した。
「善哉どころかこれを飲んだら」
「もうですね」
「チーズも食べていますし」
それでだった。
「限界です」
「左様ですね」
「意地汚く飲んでますけれど」
美沙さん達と飲んでいてそこで今日は飲むのを止めようと思ってまた飲んだ、それで自分を意地汚いと思ったのだ。
「もうこれで」
「限界ですね」
「はい」
「それでは」
「善哉はその時で」
「そうしたお気持ちですね」
「今は出なくてもです」
出る筈がなかった、善哉なんてすぐに出せるものじゃない。餡子とお餅か白玉があって煮ないと食べられない。
「もう」
「そうですね、義和様は今日は」
「相当に酔ってます」
言葉も呂律が回らなくなってきていた、今以上に。
「自分の部屋に帰ったら」
「すぐにですね」
「寝ます」
もうそのつもりだった、心から。
「そうします」
「そうされる方がいいですね」
「はい、ただ明日も部活があります」
「では二日酔いなら」
「もうその時はお風呂に入ります」
二日酔い解消の為にだ。
「そうします」
「それでは」
「はい、しかしこのワインも美味しいですね」
白ワインもだ、甘口でチーズともよく合っている。チーズは普通の日本のスライスチーズだ。オーソドックスだけれどこれが美味い。
「何処のワインですか?」
「ドイツのワインです」
「ドイツですか」
「モーゼルです」
畑中さんもにこにことして飲んでいる、見れば今の僕より飲んでいて一本目を飲み終わって二本目に入っている。というか何時の間に二本目まで持って来ていたのか。お酒が回っていてそこまで気付かなかったのだろうか。
「そちらです」
「ああ、それですか」
「とはいっても安いものですが」
「いえいえ、ワインは値段じゃなく」
「味ですね」
「それですよね」
「その通りですね」
畑中さんも僕のこの言葉には笑って答えてくれた。
ページ上へ戻る