八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百二十七話 飲んだ後でその三
「ティーセットをね」
「どんな感じか確かめる意味でも」
「そうしましょう」
「じゃあ後片付けをして」
僕は二人のやり取りが一段落したのを見て声をかけた。
「そうしてね」
「ええ、そしてよね」
「それからですね」
「寝ようね、僕も今日は寝るよ」
もう飲まないつもりだった、とにかく汗をかいたので。
「そうするよ」
「それじゃあね」
「また明日よね」
「そうするよ」
こうした話をしてだ、そのうえでだった。
僕達は三人で後片付けをしてだった、そのうえでそれぞれの部屋に戻った。僕は一旦部屋に戻ってから歯を磨こうとした、けれど。
畑中さんにだ、ふと声をかけられた。
「宜しいでしょうか」
「はい、何か」
「お話したいことがあるのですが」
「僕と」
「はい、書斎に」
「それじゃあ」
こうしてだ、僕は今度は畑中さんと話をすることになった。そして二人で書斎に入るとだ。
何とだ、畑中さんは白ワインを差し出してくれた。傍にはチーズも置いてあった。僕はそのワインとチーズを見てから畑中さんに言った。
「ワインは」
「よかったらお飲み下さい」
「それで飲みながらですか」
「お話をしましょう、私もです」
畑中さんもワインを出していた、僕に出してくれたのと同じ白ワインだった。
「飲ませて頂きますので」
「飲みながらのお話ということは」
「軽いお話ですので」
「飲みながらする様な」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「ご安心下さい」
「それじゃあ」
僕は畑中さんの言葉に頷いてだ、そしてだった。
畑中さんとの話をはじめた、僕も飲むつもりはなかったけれどワインもチーズも美味しそうなので誘惑に負けた。
それで自分でコルクを開けてからだ、畑中さんが入れようとするのを微笑んで静止してだ。自分でグラスに入れて飲んでからお話をはじめた。畑中さんは僕に話してきた。
「実は先日大阪に行ってきまして」
「あちらにですか」
「はい、義和様は法善寺の辺りはお好きでしょうか」
「法善寺って夫婦善哉の」
僕はすぐにあの小説を思い出した。
「織田作之助の」
「そしてそのお店がある」
「あそこですよね」
「行かれたことはありますね」
「はい、何度か」
実際にとだ、僕は畑中さんに答えた。
「あります」
「そうですね」
「ですが最近は」
「行かれたことはないですか」
「ちょっと」
「では今度行かれてはどうでしょうか」
「あそこにですか」
「夏のあの辺りは暑いですが」
神戸とは全く違う、とにかく大阪の夏は暑い。
「ですが風情もあってです」
「いいんですね」
「そして善哉もです」
「美味しいんですか」
「何か夏に食べますとこれが」
こう僕に話してくれた。
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