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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百二十五話 秋田の思い出その十六

「このことはいいです」
「そうですね、巨人が強いと」
「何一ついいことはありません」
「世の中にとっても」
「巨人が優勝して何処かがバーゲンになるか」
 畑中さんはここでこの例えを出した。
「何処もなりませんね」
「阪神百貨店はバーゲンになりますけれど」
「巨人はそういうものを持っていません」
「新聞は安くなりませんしね」
「日本に、世界に何の貢献もしません」
 例え勝ってもだ。
「ですから」
「負ける方がいいですね」
「そうです、世界の為に」 
 世界の野球を愛する者達の励みになるからだ。
「巨人は負けるべきです」
「だから今日本も元気があるんですね」
「巨人の敗北を見ていますから」
 日本人全員がだ。
「励まされているのです」
「そういうことですね」
「そうです、そして」
「皆元気に働いて勉強して」
「日本はよくなっています」
「そういうことですね」
「かつて巨人軍、大鵬、卵焼きといいましたが」
 昭和三十年代の子供が好きだったらしい。
「後の二つは置いておきまして」
「巨人はですね」
「間違いです」
 まさにという言葉だった。
「巨人が勝ってもです」
「いいことはなかったですね」
「九連覇の時は学生運動や公害で悩まされていました」 
 日本自体がだ。
「事故、事件も多く」
「社会の歪が出て来た頃もあって」
「巨人が勝っていていいことはありませんでした」
「それが現実だったんですね」
「はい」
 まさにとだ、畑中さんは僕だけでなく他の皆にも話してくれた。
「巨人が勝っていいことはありませんでした」
「それが現実ですね」
「むしろ今の様にです」
「巨人が負ける方がいい」
「世の中にとって」
「負けることを望まれているチームということですね」
「まさにそうです」
 畑中さんは僕達にはっきりと話してくれた。
「優勝なぞ間違ってもしてはいけません」
「阪神が優勝せずともですね」
「巨人は優勝してはいけません」
「これからもずっと」
「人類の文明がある限りは」 
 巨人は未来永劫最下位になるべきだ、畑中さんはこの正論を僕に話してくれた。そして僕達も畑中さんのその言葉に頷いて夕食を食べた。


第百二十五話   完


                         2017・1・24 
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