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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第三十七話

 
前書き
どうも、テスト週間でして、今回もなかなかに忙しかったです。正直、今週無理かと…………。人間って諦めないとなんでもできるんですね。 

 

「こなくそっ…………!」
 
俺は自分に喝を入れながら対空射撃を繰り返していた。
 
どうやら向こうになかなかの空母が居るのか、さっきから偵察機の数がかなり多い。何機かはとりのがしてしまったらしい。
 
しかし、と俺は一言言った。
 
「これって見事にオトリ役だよな…………。」
 
そう。俺は今、完全に他の奴とは別行動をしている。
 
長門さんから伝えられた作戦は、「派手に動いていろ。」だった。何をどうこうしろと言わないのは木曾と一緒だった。
 
取り合えず俺は、目立つところで敵艦隊に突撃。全員の艦種を確認した。扶桑、霧島、瑞鶴、鳥海…………の四人しか判別出来なかったけども。
 
しかし、長門さんもなかなか腹黒いこと考えたな、と考えていた。

男とはいえ、軽巡一人に戦艦一人と空母一人を任せるのかよ。
 
正直、ちょっとでも気を抜いたらあっという間に大破させられそうだ。流石に戦艦と空母だな。
 
俺は近くの岩影に隠れて、息を整える。
 
「くっそ…………早くしてくれよ、木曾…………!」
 
『もう終わってらぁ。そっちこそ一人ぐらい大破させといてくれよ。』
 
俺がそんなことを呟いたとき、耳元で木曾の声がした。木曾からの通信だ。
 
「は?もうか?」
 
『当たり前だ。オレと長門さんの二人で重巡二隻だぜ?沈めないように手加減する方が大変だったわ。』
 
長門さんの作戦はこうだ。
 
トラック基地の提督は、二手に分けて行動することが多い。片方は陽動部隊、もう片方は主力部隊みたいな感じで。前に陽動に見事に引っ掛かったことがあったらしい(因みに、そのあと木曾がぶちギレたらしく、敵戦力を小破しながら壊滅させたらしい。相変わらず頭おかしい)。
 
だから今回は俺を主力部隊にぶち当てて、その間に他の奴らが陽動部隊を潰すらしい。頭おかしいと思ったね。
 
まぁ、なんとかしてる訳だけども。そうなると摩耶さんたちに早くなんとかしてほしい。二対三だから大丈夫だとは思うけど…………。
 
「取り合えず、木曾たちはこっちに来てくれないか?なんか瑞鶴さんが他の方向に艦載機飛ばし始めてるぞ。」
 
俺が敵艦隊の二人の方を見たとき、何やら瑞鶴さんが他の方向に弓を引いていたのを確認した。方向的には、恐らく木曾と長門さんの方向だ。
 
大破した仲間から位置を聞いたのだろうか。
 
『成る程なぁ。長門さん、そいつら気絶させといてくれ。』
 
『ん、わかった。そぉい。』
 
長門さんの声がした後、ガツン!という大きい音が二回聴こえてきた。
 
…………ご冥福をお祈りしよう。
 
『取り合えず、オレらもそっち向かうわ。あーあ、オレ対空射撃苦手なのになぁ…………。』
 
木曾はそう言いながらゴソゴソと何かを探していた。恐らく対空装備だろう。
 
実は、ほぼすべての能力が呉鎮守府最強の木曾(噂によれば水上機もらしい)だが、なんとなんと、対空射撃だけは並だ。
 
…………いやまぁ、木曾も普通の人間だ。苦手なことのひとつくらいある。
 
だけどさ、
 
「俺より成績良いくせになーに言ってんだか。」
 
こうなるとただの嫌味にしか聴こえないよな。
 
『あーはいはい。んじゃま、もうちょい持ちこたえといてー。』
 
木曾はやらかしたとでも思ったのか、早々に通信を切った。
 
たまに不用意な発言するんだよな…………色々常人離れしてるけど、一応年相応なんだな。
 
 
ドゴォン!
 
 
そんなことを思っていたら、俺が隠れていた岩に砲撃が直撃したらしい。
 
「わっとっと…………これは気合い入れてかねぇとなぁ。」
 
俺は腰に付けたあるものに手を掛けた。
 
さぁて、木曾ほどじゃないけど、暴れて来ますかね。
 

 
―数分後―
 
 
 
「なぁ、なんかおかしくないか?」
 
千尋との通信を切ってから数分後。千尋の元へと進んでいた時に、長門さんがそう切り出してきた。
 
「ん?なにがだ?」
 
「いや、二つあるのだが…………摩耶からの通信が無いんだ。」
 
そう言えば、演習開始直後に分かれてから一回も通信が来ていない。摩耶には、『作戦が終わったら通信するように』と言っておいた。
 
「でも、だとしたら時間がかかりすぎてる。いくらなんでも摩耶と時雨、おまけに赤城なら戦艦と軽巡一隻ずつなら十分も掛からないだろう。」
 
既に、演習開始から一時間は経っていた。
 
「と言うことは…………かなり、粘られてる…………?」
 
実際、オレ達が相手にした二人はかなりちょこまかと動いて、逃げ回ってるようにも見えた。
 
「何かの時間を稼いでいる…………?」
 
オレはそれに気付くと同時に、何の時間なのかを考え始めた。
 
「後さぁ…………。」
 
そんなところで、長門さんはたった今向かってきた爆撃機を指差す。
 
「あれ、赤城のではないか?」
 
 
 
―更に数分後―
 

 
 
「ふぅ…………何とかなった…………。」
 
俺は大破に持ち込んだ敵艦二人を明石さんに連れて行って貰いながら、汗を拭っていた(ルールとして、大破された艦娘は回収担当の艦娘に連れていかれることになっている)。
 
わざわざこの一ヶ月、天龍に教えてもらって良かった。
 
『おい二号!聴こえてるか!?』
 
すると、いきなり耳元から大音量で木曾の叫び声が聞こえた。

「っ!おい!そんな大声出さなくても聴こえるわ!何だよ一体!」
 
すると、木曾はかなり焦った様子でこう言った。
 
 
 
 
『ヤベェ…………あいつら、赤城さんを食い物で寝返りさせた!』
 
 
 
 
 
 
―演習開始前―
 
 
 
 
 
「あのー、赤城さん?ちょっといいかな?」
 
「あなたは確か…………瑞鶴さん?どうしたのかしら?」
 
「いえ、ちょっとですね。…………寝返って二三人ほど沈めたいから、協力してもらいたいんですよ。」
 
「なに言ってるんですか。するわけ無いじゃないですか。」
 
「ここに、そちらの提督の弱味と間宮食堂裏食券があるのですが。」
 
「やりましょうとも!!(じゅるり)」
 
 
 
 
 
―今―
 
 
 
 

「はぁ!?」
 
確かに、赤城さんは食い物に弱い、いや、かなり弱いけど、そこまでなのか!?
 
『今オレ達は、飛んでくる爆撃機とかを目安に進んでたんだが…………間違いなく赤城さんが飛ばしてる。』
 
なんて人だ…………。
 
ただのダメ人間じゃねぇかよ!
 
「っつーことは、赤城さんはこの通信も聞いてるのか…………ヤベェな。」
 
ぶっちゃけ、それってアリなのか?ってぐらいの手だけれども、戦場では騙し合いなのだ。騙された方が悪い。

…………深海棲艦と手を組む人がいるかどうかはさておき。
 
「あー、ついでに言うと、取り合えず俺が担当してた二人は大破にさせた。けど、この様子だと、時雨と摩耶は絶望的だな…………。」
 
俺が相手なら連れてきたところを間違いなく大破させてる。
 
『おまけに食い物で釣ったとなると…………今の赤城さんは間違いなく暴走してる。』
 
「暴走?」

あれか、夜戦のときの夕立みたいな感じか?
 
『あんな感じになったら、オレでも止められるかどうか…………。』
 
「嘘だろ!?」
 
『魔神木曾』に止められないものをどうやってオレらに止められるんだよ!
 
『こーなったら、まず演習を終わらせよう。そうしたら、加賀さんに来てもらおう。あの人にしか赤城さんは止められねぇ。』
 
すげぇな加賀さん。
 
「取り合えず、俺も爆撃機をたどってみる。恐らく、残りの二人もそこに居るんだろうな。」
 
『あぁ。それじゃ、着いた方から攻撃開始で。んじゃな。』
 
そう言うと、木曾は通信を切った。

「明石さん、すいません。この海域の近くに加賀さんを呼んでください。『赤城さんが暴走してる』と。」
 
俺が明石さんにそう伝えると、顔を真っ青にして頷いてくれた。どんだけ怖いんだよ。
 
「さてと、俺も行きますかね。」
 
俺は空を飛んでいる爆撃機のあとを追いかけ始めた。
 
 
 
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。ウチの赤城さんはよく二次創作とかで描かれる赤城さんを想像してくれれば、概ね間違いないと思います。赤城さんファンの方ごめんなさい。
それでは、また次回。 
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