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~異世界BETA大戦~ Muv-Luv Alternative Cross Over Aubird Force

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重頭脳級攻略

 
前書き
いつもながら、もたもたしていまして申し訳ありません。
最近何かとやらねばならない事が重なっておりまして・・・・。 

 
アントワープの命令一下、周辺のBETAは瞬く間に壊滅し、その機を見たダイスケはすかさず、「情報部大隊、続け!!」と配下部隊へ命令、部隊は手前のボール周辺へ向かい、これを制圧する。
「中佐、破壊しないのでしたら具体的にはどうするんですか?」前回、ロドリグの際にはボールは完膚無きまでに破壊してゲートをこじ開けたのだが、今回は違う方法を試すというダイスケに、タケルが疑問を投げかける。
「まぁ、見ててくれ。」といいながら、ダイスケ機はボールを撫で始める。
その場にいる全員の頭の中は「???」だったが、撫でているうちに少し赤みを帯びて膨張を始めた。
もう少し撫でていると急に地響きがして、ボールが少し縮んで中に入っていく。
そうすると奥の丸扉が全開になった・・・・・。
『・・・・・いったいどういう事ですか?・・・・・。』アントワープの他、ほとんどの兵士たちは状況が飲み込めずぽかーんとしていた。
なにしろ作戦前のブリーフィングでは、“ボールは破壊して電流を流さないとゲートは開かない”とされていたからだ。
「いや、破壊してから電流流したときは、ゲートが中途半端にしか開かなかったので、おかしいなぁと思って正規に開ける手段を考えていたら、この方法を思いついたんですよ。」
『ただ撫でただけ?ですか?』アントワープが皆を代表して尋ねる。
「いえ、表面をまんべんなく撫でながら放電していましたよ。この間は破壊したので中途半端にしか通電せず、そのため扉も半端にしか開かなかったのだと思います。」
『なるほど、最初に通電というワードが提供されていたのに、私たちも気づけませんでしたね・・・さすがです!』
「いえ、先に言いましたが、今回は確証がなかったので試してみたら当たったというだけですから・・・それよりも?」ま、思いつきだったんだけどね。さぁ早く先へ進まないといけないので、アントワープを急かしたけど、わかってくれたかな?
『ええ、そうですね!・・・・これより敵本拠へ突入します!ローブ大隊は引き続きこのエリアの警戒、後方支援を!フリージア大隊が先導!クルーズ大隊、情報部大隊は続いて下さい!』アントワープが部隊へ突入命令を下すと、配下の各大隊は指示通りに動き始める。
だが、先行したフリージア大隊は突入してすぐに何か強力な敵個体に出会ったようで、かなり混乱をしていた。

「重頭脳級か?いや、今までいくつかのサンプルがあるのだから、今さら混乱するはずもないよな・・・。」
「こんだけ規模の大きいハイヴですから、重頭脳級も触手の数が多いとか巨大だとか、何かイレギュラーな事が起きているんじゃないですか?」ダイスケの疑問に、タケルが想像で応えた。

とにかく現状把握しない事には対処も出来ないので、ダイスケは最初にフリージア大隊とともに突入したアントワープに確認をとろう。
「アントワープ中佐!現状はどうなっていますか?」
『ああ、カミナガ中佐、すまない・・・今までのデータにない新種らしき個体がいてかなり手こずっています!』アントワープがかなりテンパった様子で伝えてきた。
「新種・・・ですか?どのような個体か伺っても?」ここに来て新種とか、何だいったい?
『明らかに人型に近い形状で、とにかくすばしっこいのです・・・・そのうえシールドを破って攻撃する方法をあみだしているようで、3機ほどスラスターをやられました。』まじか?!かなりやっかいな奴だな・・・・でも今回はわざわざ最初にオリジナルハイヴを攻撃したのだから、学習して対処してくる時間なんておおよそ無いはずだ。
このくらい育ったフェイズのハイヴって学習能力がとんでもなく高いって事なのかな。

「シロガネ大尉、どう思う?」とりあえずタケルちゃんの意見を聞いてみよう。
『今まで見たことない個体です・・・でも何となく強化外骨格に似ている気がするんですよね・・・。』
『そう言われてみればそう見えます!』すかさず遠野が同意する。
『これは想像ですが、私が思うに機械化歩兵装甲ハーディマンを参考にモデリングしているように見えます・・・・。』
「ハーディマン?」碓氷中尉の言っているそれ聞いたことある気がするけど、なんだっけ?
『ハーディマンというのは、地球の中の一国、アメリカという国が今から30年ほど前に開発して、この月面へ持ち込んで侵入してきたBETAとの戦闘に使用していた歩兵用の装甲装備です。』
そっか、確か1970年代に月面で戦った際に米軍が機械化歩兵装甲を使用していて、BETAがそれを鹵獲していたなら、人類の軍との戦いに利用する為にその形状を真似たBETAを製造した可能性はかなり高いように思う。
だが、当時作られたは良いが、月面の人類兵力が撤退したために活躍の場が無くなり、大量生産の必要がなくなったので数も限られ、この部屋の守護を司るようになったんだろうな、きっと。

そんなことよりも対応策を考えないと・・・・。
この速さだと一機毎での対応は下策かな・・・・2機単位での対応がベストか。
「アント『部隊傾注!各機ペアで対応せよ!お互いをカバーし合えば対応力は増します!』・・・・」
『『『ラジャー!!!』』』
『カミナガ中佐?献策しようとしてくれていましたね?感謝します!』アントワープはまるで分っていたかのように笑顔でそう言った。
「いえ、出過ぎた真似を、すみません。」この女性(ひと)には敵わないな・・・。
『そんな事はありません。でもさすがですね!情報部なんてもったいない、機甲師団へ転属して欲しいくらいですよ?良ければ検討してくださいね!』アントワープは今度はウィンクしながらそう言った。
右のモニター見るとタケルが笑いをこらえているのが見える・・・・ちくしょうめ・・・。
『あ、シロガネ大尉も大歓迎なので前向きに検討してくださいね?』
『うえ?えあ、は、はい・・・。』ハハハ、急に話をふられたタケルが焦ってる・・・・ひとの事笑ってるからだな。
それにしても戦闘中でしかも強敵が現れたというのにこの余裕感・・・・。
さすがはオルキス軍最強部隊・・・というところなのかな。

そして、アントワープの命令一下、2機一組のロッテ隊形のジグレータは次第に人型BETAを圧倒し始め、どんどん与撃墜数を上げていく。

そして数分後、最後の1体は隙を見てすぐ近くにいたジグレータに攻撃を加えようとしたところを周囲の機体から集中砲撃を受け、ハチの巣にされて沈んだ・・・・。
さて、残るは重頭脳級1体―――――こいつがまたやっかいなのだが・・・・。
数機で近づくが、通常の個体よりはるかに大きく、かつ触手の数も倍くらいあるようで、破壊切断しても次から次へと触手を繰り出してくる。

と、ここでオルキス派遣軍司令部のオーダーにより情報部が用意してきた通信機材を使用して、重頭脳級との会話を試みることにする。
実は、エレミア星系へ侵入してきたBETAの重頭脳級が放ったと思われる通信波や、一時鹵獲した重頭脳級(危険なのでデータをとった後、速やかに処分された)などから得たデータをもとに翻訳が出来るようになった。
今回はそれを活用して重頭脳級を尋問する事になっている。
ただし、尋問と言っても軽い会話?確認の後、強制的にデータを抜き取るだけなのだが。

「応答せよ。我らは知的生命体であるヒト種。汝は誰の命にて我らと敵対するのか問う。」
『ガッガッピーーーー・・・・・・・・・チテキセイメイタイ・・・・ショウメイセヨ・・・・・セイメイタイ・・・・・ユウキカゴウブツ・・・・ケイソ・・・・ショウメイセヨ・・・・タンソ・・・・ムキブツ・・・・・セイメイタイ・・・・デハナイ・・・・・。』
チッ、まぁこれはわかっていた結果だけど、よほど自己中な珪素系クソ宇宙人が自分たちだけが唯一無二の生命体と信じてAIにインプットしている状態だよな・・・。
「我々の認める生命体とは有機化合物は炭素である。珪素は無機物。生物では無い。」
『ショウメイセヨ・・・・・ケイソハユウキカゴウブツ・・・・・・ジョウイソンザイニヨリミトメラレテイル。』
「上位存在の見解は誤りである。我々の認める生命体の主な構成要素は炭素である。」
『ミトメラレナイ・・・・セイメイタイのオモナコウセイヨウソハケイソデアル。』
・・・・・もうだめだこの、ポンコツAIめ・・・あとは強制的にデータを吸い上げるだけだな。

「シロガネ大尉、やってくれ。」
『ラジャー!』タケルは返事するやいなや、背面に装備していた大きい注射器のような形状の物体を重頭脳級の中枢部にぶっ刺した。
そして側面のスイッチを押すと、重頭脳級から半透明の液体がどんどんすいとられていく。
この液体―――ODLは、構成している分子ひとつひとつがマイクロチップのような記憶媒体となっており、主に重頭脳級から各BETAへの指令や、各BETAからの報告などのやり取りをしている記録が逐一記録されている事が、エレミア星系で鹵獲した頭脳級のODLから判明していた。
エレミア星系では、重頭脳級は全て完膚なきまでに破壊していたので、彼らの上位存在もしくは母星などの情報を得ることが出来なかった為、今回の遠征ではODLを入手する事も情報部の優先任務のひとつとなっていた。
まずは彼らの習性、目的、そして本拠地、一体どこから現れて来たのか、誰がどのような目的で方々へクソ迷惑なこいつらを放っているのか、徹底的に調べて報復攻撃を行い、これ以上の犠牲が発生するのを止めさせなければならないのだ。
巨大な注射器、4本ほどで吸い取った頃、やっと全身の体液が枯渇したのか、重頭脳級の反応が消失した――――活動停止したと思われる。

『よし、本作戦は今時を以て終了とする。ファリス大尉、HQおよびザカリスへ任務完了の報告と帰還する旨の連絡をしてください。』アントワープは相変わらずキリッとした表情で指令を飛ばす。
『では各隊全機、これより各母艦へ帰投!突入時と逆の陣形で退出します。残敵掃討しつつ進んでください。』連隊および情報部大隊は陣形を組み直し、速やかに退出に入る。
途中、外へ向かっていたBETAの集団にいくつか出会ったが、戦意は全くなくひたすら出口へ向けて移動していた。
連隊は命令通りそれらを掃討殲滅しながら出口を目指した。
ハイヴの出入り口を出ると、外は既に戦闘は終わっており、ビクスンとファーデット両連隊はほとんど
帰投した後だった。
一面BETAの死骸だらけ・・・・細菌やバクテリアの存在しない真空空間である月面では放っておくと乾燥だけして干からびた物体となって月面上に残り続けるだろうと思われる。
いずれは地球人類が再進出してきて基地なり都市なりを建設するのだろうが、その時彼らがこれを見て何と思うのだろう・・・・・。

帰投中、大隊のメンバー、特に地球人組は、初めてのBETAハイヴ攻略、しかもオリジナルハイヴを攻略したとあって、これ以上無いほどの高揚感と嬉しさで大はしゃぎだった。
途中、他のハイヴ攻略に向かったデュミナス軍のスクワイエル部隊とすれ違ったが、正直ちょっと恥ずかしかったな・・・・。
彼らのはしゃぎっぷりは帰艦後も続いていた・・・・・まぁ、今まで例外なく知人友人含めた相当数の仲間をBETAに殺された(喰われた)ような状況だろうし、そんな敵に対して一矢報いるどころか殲滅できたのだから、よっぽど嬉しかったのだろうな・・・・。
そんな中、オリジナルハイヴ以外のハイヴで俺たちが最後に重頭脳級の部屋で戦った人型のBETAが現れて部隊を混乱に陥れているという情報が入ったのだ。
既に一戦して状況が良くわかっているという事と、なぜオリジナルハイヴ以外で人型BETAが現れたのか、などの調査も併せて行う為に我々情報部大隊に司令部から出撃命令が下った。
直掩と護衛にアントワープがロワーヌ連隊からフリージア大隊を引き連れて来てくれる事になった。

そして、忙しく再出撃の準備をしていると、そこに優奈が見送りに来てくれた。
「大輔くん、気をつけてね?」
「ああ、大丈夫だよ!」心配してくれてるみたいだけど、なんの不安要素も無かったので、元気にそう答えたよ。
「なんかね、情報によるとデュミナス軍の中にオルキス人の事をあまり良く思って無い人もいるようななの。」え?なんですか?唐突なその情報。
「少し前にデュミナスの士官と打ち合わせの後に軽い雑談をしたの。でね、エレミア戦役の時、デュミナスはデトロワ軍に包囲されていたのは知ってると思うけど、その時ディー司令が率いてた第86戦隊が、作戦でデトロワの包囲を破ってデュミナスの軌道まで接近してデュミナス軍と連絡を取って包囲しているデトロワ軍の背後にいる連合軍と連携出来るようにした事があったの。」
「ああ、その話は戦史に載ってるので、読んだことがある。」というか、俺の記憶がそう言っているんだけど・・・・。
「それでね、その時デュミナスの大気圏内でも戦闘があったみたいなのだけど、撃破されたデトロワの軍艦が何隻かデュミナスの地上に墜落してその巻き添えになった市民がけっこういて、その遺族がオルキス軍、特にディー司令とその麾下部隊に反感を持っているみたい。」
「うーん、もちろん同情はするけど、それは不可抗力だし、逆恨みみたいなものだよなぁ・・・・。」
「そうなんだけど、やっぱり自分の家族が死んでしまったら、その原因を作った人に対して恨みの一つは持ってしまうのも仕方が無いと思う・・・・。」優奈は悲しげに俯いてそう言った。
そういえば優奈は、あっちの世界では戦争に巻き込まれて死んだんだよな・・・・・・。
「そうだね・・・・もしそういう人がいたとしたら、ちょっと気を付けて対処するよ。」
「そうね・・・・これから合流するデュミナス軍部隊に実際そういう人がいるみたいだから、気をつけてね!“ミリーア・ベステル准尉”というらしいわ。」なんだ、そうか、優奈はそれを伝える為に来てくれたのか・・・・。
「わかった!優奈ありがとう!」俺は優奈に礼を言ってから、スクワイエルの搭乗口へ向かった・・・・まぁ優奈の話を聞いて、またやっかい事が・・・・と思ったのは仕方ないよね? 
 

 
後書き
もうちょっとで月面ハイヴ攻略が終わってとうとう地球人類へのコンタクトを行います。
特に脈絡はないですが、スタートレックのファーストコンタクト という映画を思い出してしまいました。 
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