DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~
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猛攻
前書き
バトルスタディーズの衝撃展開に驚かされながらの投稿
追記:点数間違ってた9対8だった(笑)
『4番キャッチャー統堂さん』
ランナーを二塁に置いて迎えるは4番の英玲奈。前の打席こそ抑えたものの、相手の裏をかくことができたからの結果であり、この打席でもそれができるとは限らない。
(にこちゃんの生命線はコントロール!!左右高低で揺さぶっていくしかない)
サインを受けて構えを取った英玲奈を見て前の打席で見逃した内角を要求する穂乃果。
(英玲奈さんに内角は怖いけど・・・そうも言ってられないわよね)
当てたらと思うとうなずくのに勇気がいるが、にこは憧れの打者にそんなことを思っては失礼だと考えを改める。二塁ランナーを視野に入れつつ腕を振り思いきり内角を攻める。
カーンッ
要求通りに来たボール。英玲奈はそれを腕を畳んで捉えるが三塁側ファールスタンドに吸い込まれる。
(いいスイングをする。次はどんな球を使えばいいだろうか)
花陽、海未に比べるとにこ、その次の投手である絵里は投球の幅が狭い。彼女たちでいかにこの打線を抑えるかを考えながら試合を見守っていると、キャッチャーが腰を上げ高めに構える。
(高低で勝負か。だが高めじゃ持っていかれる確率は上がるからな。思いきり投げさせろよ)
にこの渾身のストレート。打者はそれに反応したがバットを止め見送る。これでカウントは1ボール1ストライク。
(次はカーブを入れるよ。低くお願いね)
(ワンバンしたら頼むわよ)
先程よりも低い位置からボールを曲げる。これでできることなら詰まらせたいと願ったが、英玲奈はピクリともせず見送る。
「ストライク!!」
追い込んだがバッテリーの意図通りにはならず次の選択肢を講じなければならなくなった。穂乃果はわずかに迷った後、再度カーブを要求する。
(さっきよりも低くね。ワンバウンドで空振りさせるよ)
ワンバウンドする変化球で空振り三振を奪うのは基本的な攻めの1つ。さっきよりも真ん中から曲げれば打者は食い付き、バットは空を切る。
はずだった。
キンッ
「「えぇ!?」」
振りに出た英玲奈はワンバウンドする手前でボールを捌くと、ほぼ左腕だけで強引に打ち返す。だが打球は力ないフライ。打ち取ったかに見えたが、振り抜いたためかボールは内野と外野の間にポトリと落ちヒットになってしまった。
「海未ちゃん中継!!ストップ!!」
真姫がボールを拾いサードの海未にすぐさま返す。あんじゅは際どい当たりだったためハーフウェイでしか出れず、本塁には突入できない。
(だけどランナー一三塁でバッターはツバサ。前の打席で海未のチェンジアップを拾われてる・・・さてどう攻めるべきか)
内野は1点は仕方ないと定位置。それよりも打者を打ち取ることの方が重要だ。
(どうしましょう、剛さん)
困った穂乃果が剛に助けを求める。彼はしばしの思考の後、初球のサインを出した。
ビュッ バシッ
「ボール」
スクイズ警戒か初球を外したバッテリー。だがツバサにそんなことなどさせるわけもなく、カウントを1つ悪くしてしまっただけ。
(統堂は走らないか。まぁツバサは長打も打てるし、盗塁失敗のリスクを考えたらここはステイか)
ゲッツーをなくすため走ってくるかと外させたが予想が外れ眉間にシワを寄せる。続くボールは外角へのストレート。ベルトよりも高めにそれを放らせると、ツバサは見送るが球審の手が上がった。
(今の入ってる?ちょっと高くないかしら)
不満げな表情のツバサ。それを見て剛はニヤリとほくそ笑む。
(やっぱりあの球審、速いピッチャーの後に遅いピッチャーで判定が甘くなってる。こっちの時にやられたら堪ったもんじゃないが、相手の時はいくらでもやってくれって思ってしまうよ)
剛は甲子園での一件で審判のことを100%信頼していない。彼らにいかにこちら有利の判定をさせるか、それを思考することさえ高校時代は行っていた。
(そろそろカーブが頭を過るだろ?だけど、ここはもう1球ストレートだ)
内角低めへのストレート。外れてもいいから厳しく行くようにと指示をすると、にこは目一杯の力をボールに集中させ投じる。
カンッ
どちらと判定されてもおかしくないコース。そのボールをツバサは体を回転させながら打つと、打球はサードの海未の脇を抜けていこうとしてベースに直撃。そのまま転々とする打球を追いかけ拾い上げるが、英玲奈は三塁、ツバサは二塁に到達しておりどこにも投げられなかった。
(打ち取った当たりだったけど、向こうに運があったか)
結果的にランナーを出されたが打ち取ってはいた。ただ前進守備を敷いていればもしかしたらと思ってしまうところもあるので、そこは判断を誤ったと反省する。
(ただ、にこならベース前で捌いてたな。このシフトだとこの問題が出てくるのが難点なんだよなぁ・・・)
花陽、海未に長いイニングを投げさせたいのは守備陣側にも問題が出てくるからである。花陽は完投能力を手にいれるために徹底的に走らせたため守備が必要最低限しかできない。
海未はライト、ピッチャー、サードと複数のポジションを練習させたがメインはライト、ピッチャーとなっているためサードの守備がおぼつかないところがある。さらに絵里がマウンドに上がるとにこがショートの守備に入らなければならないため彼女への負担がさらに増える。
(3年以外のメンバーでせめてもう1人投手が作れれば・・・そんなこと言っちゃいけないんだけどな)
一度守備の見直しが必要だと思いつつも今は目の前のピンチをなんとかしなければならない。打順は下位に向かっていきここからはヒットが出ていない。この1点で食い止めたいところだ。
(1打席目はフォアボール、2打席目はショートゴロ。ここは内野を前に出すべきか)
内野を前進させホームでのアウトを狙う。となれば投球は当然低め中心にしてゴロを打たせたい。
(初球からカーブ使えよ、穂乃果)
(もちろんですよ)
最初は外角低めに決まるカーブ。これを見送り1ストライク。
(もう1球行ってみるべきだよね)
(と俺は思うんだが)
チラッとベンチに確認の視線を送ると彼もそれにうなずく。
2球目はベルト高から落ちてくるカーブ。これに対応できず打者は空振り。しかし、ここで穂乃果がバウンドしたボールを後ろに逸らしてしまう。
「ランナー出たわ!!」
ネットに付くほどまでではないが大きく逸らしたことでランナーがそれぞれ進塁しようとする。穂乃果はボールをすぐさま拾うと振り向き様にホームに送球。だが送球が乱れたこともあり三塁ランナーの生還を許してしまった。
「ごめんにこちゃん!!」
「大丈夫よ、次は止めてよね」
まだ経験が浅いだけに止めきれないことがある。ランナーがいるときはワンバウンドするボールをあまり使わないので目立たなかったが、ここでこのプレーが出てしまったのは大きい。
(三走はツバサだし、転がったら突っ込んでくる。でも点数はやれないから内野を戻すわけにはいかない)
そのままの守備で外野だけ定位置に戻させる。カウントは追い込んでいる。ここもカーブでできることなら三振がほしい。
カキッ
ストライクからボールになる球。打者はそれに食い付きなんとか転がす。打球はセカンド正面。転がったボールが弱いこともありツバサは突っ込んできているが、ギリギリ刺せそうなタイミング。凛は捌いて本塁に投げようとしたが、焦りすぎたのか弾いてしまった。
「凛ちゃん1つ!!速く!!」
ホームはもう間に合わない。だが弾いた距離がそこまで大きくなかったことでギリギリ一塁は間に合うかもしれない。凛は素手で溢れたボールを拾い投げるが、それも逸れてことりの足が離れてしまう。
「ごめんことりちゃん!!にこちゃん!!」
立て続けに起きてしまったミス。ここで剛はタイムを取り伝令を走らせる。
「みんな、ごめんなさい」
「大丈夫だよ、凛ちゃん。穂乃果もごめんね」
マウンドに集まって謝罪する凛と穂乃果。伝令で来たヒデコは帽子で口元を隠しながら剛の言葉を伝える。
「ミスは仕方ないから切り替えて。連鎖しちゃうのが一番怖いから」
励ましの言葉にうなずきながら聞き入る面々。そこから細かな指示を伝えていく。
「同点になったからここからは0-0のつもりでやっていこう。1つずつアウトを取っていくこと、いい?」
「「「「「OK!!」」」」」
輪が解けて守備位置に散っていく音ノ木坂。ここからは下位打線。ノーアウト一塁とはいえ、これ以上点数をやらないために気を抜くことはできない。
(セオリーなら勝ち越すために送りバント。でも、こっちにミスが出てて流れが向こうに行ってるから、強打もあるかも)
それでもノーアウト一塁でバントシフトを敷かないわけにはいかない。でもランナーを進めさせたくないため、初球は内角高めにストレートを要求。
カキーンッ
(バントじゃない!?)
安易に行きすぎてしまった結果、絶好球を投げた形になってしまい打球はレフト頭上を越えていく。クッションボールを真姫が処理し返球するが彼女は肩が弱い。絵里、海未とカットマンを挟んだことでホームに間に合わず中継を止める。打ったランナーは二塁で止まっており、逆転されなおもノーアウト二塁になってしまった。
「穂乃果!!」
ここで堪らず投手交代。不運な当たりが続いていただけににこを責めることはできないが、流れが完全に傾いた以上それを切るために投手を代えることで対応するしかない。
『音ノ木坂学院、シートの変更をお知らせ致します。ピッチャーの矢澤さんがショート、ショートの絢瀬さんがピッチャーに入ります』
まだ6回の表。ここで絵里に繋ぐと花陽に投げさせることも視野に入れなければならないが、背に腹は変えられない。
(ここで切るしかない。外野は前に寄せておこう。ホームには絶対帰らせない)
外野を前進させて二塁ランナー死守の体勢。絵里と穂乃果がマウンド上で打ち合わせを終えるとプレーが再開される。
(打順は8番。絵里ちゃんのスピードでここは凌げるはず!!)
絵里はストレートとスライダーしか持っていないが、センスがあるため球速は海未と同等なものが出る。初球はまずそのストレートでストライクを取ろうと思ったが、力が入ったのか高めに浮いてボール。続く2球目はワンバウンドするボール。穂乃果はこれをなんとか止めて進塁は阻止した。
(ヤバい・・・絵里は経験浅いからな・・・しかもこの状況じゃ力が入って当たり前だ)
結局先頭をストレートの四球で出してノーアウト一二塁。UTXはここで代打を出してきた。
(守備に難があるから代打でしか出てこないバッターだっけ?)
(それも塁に出ればすぐ代走を出されるから1打席だけの勝負)
チャンスで出てきたUTXの代打の切り札。だが1打席勝負であれば、分があるのはバッテリーの方だ。
(初球はスライダー。ここは入れてね、絵里ちゃん)
(わかってるわ)
深呼吸してからセットポジションに入り動き出す。だが、先頭を四球で出したことで焦っていたのが、彼女は周りをよく見ていなかった。
「「走った!!」」
ダブルスチール。完全に盗まれたことで刺すのは厳しいタイミング。それでも穂乃果は腰を上げスローイングの形を作るが、キャッチする直前でボールが視界から消えた。
「レフト!!」
UTXが仕掛けてきたのはヒットエンドラン。押せ押せムードの今なら決まると考えての決行だったようだ。
三遊間を抜けてレフト前に転がる打球。すでに走り始めていた2人のランナーは次の塁を蹴ってさらなる進塁を狙う。
「行かせない!!」
ホームは厳しいが三塁はまだ狙えなくもないと真姫は果敢に狙う。しかし、投げることに気をとられた彼女は上体を起こすのが早くなってしまい、グラブの下をボールが通過してしまった。
「「「「「あ!!」」」」」
急ブレーキをかけて慌てて拾いに行く真姫とバックアップにかけていく希。その間に二塁ランナー、三塁ランナーが続けてホームイン。それどころか打者走者が帰ってくる勢いで走っているためカバーした希がすぐさまバックホーム。にこ、海未とカットを挟み内野にボールを返すと、打者走者は自重して三塁に留まった。
「うぅ・・・」
「気にしちゃダメよ、切り替えて」
ガッカリと項垂れている真姫を慰めるにこ。守備が苦手なので仕方ないことだが、ここでのミスが大きいことは彼女も十分に理解している。
(9対7か・・・もう1点は仕方ないから次の攻撃に・・・)
ここからのシフトを考えている剛の視界にある少女がキャッチボールしている姿が目に入る。それは彼らに絶望を与えるには十分すぎるものだった。
「ツバサ・・・」
ベンチ前で軽いキャッチボールを行っている綺羅ツバサ。近付いてくる絶望に彼は頭を抱えることしかできなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
UTXの猛攻が開始されましたね、現時点で一挙6得点と破竹の勢いを見せています。
さらにはここから上位打線に繋がってくるのを音ノ木坂は止められるのか、見ものです。
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