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DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~

作者:山神
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立ち位置

 
前書き
今スクフェスイベでいまだに3桁の順位にいるぞ!!
目指せ10000位以内!! 

 
「にこちゃん、サインはいつも通りでいいよね?」
「えぇ。このニコニーに任せなさい」

規定の投球練習を終えてマウンドで打ち合わせをするバッテリー。打順は1番。1人でも出るとクリンナップに回ってしまう。

「初球から攻めていくから、腕振ってね」
「わかってるわよ!!あんたも後ろに反らすんじゃないわよ」

ピンチの状況に臆することないにこの姿に安堵した穂乃果は戻ると野手に指示を出しにこにサインを送る。
ランナーを牽制しながら投球に入るにこ。その初球は打者の体に向かっていくボール。これを見て思わず避けるがボールは変化して穂乃果のミットに吸い込まれる。

「ナイスボール!!」

にこの得意とするカーブでまずストライクを取る。続く2球目は外角へのストレート。打者はこれに手が出ず2ストライクと追い込まれる。

(3球勝負で攻めるよ)
(当然!!)

ボールをもらうとすぐにサインを見て投球に入るにこ。その間隔の短さに打者は構え遅れファーストファールフライに倒れた。

(久々に出たランナーだからここは意地でも返さないと)

相手の四球で出塁したランナー、それもノーアウトからのランナーのためここは是が非でも返したい。その思いが力みを生んでしまったのか、初球の難しい球を引っかけてあえなくショートゴロに倒れた。

「クソッ!!」

思わずベンチを蹴る西村。選手たちはそれにビクッとした後、逃げるようにして守備に散っていく。

「にこ!!ナイスリリーフ!!」
「ありがとうにこ!!」

憧れの名選手からの誉め言葉に嬉しそうな笑顔を見せる。守備を終えて集まってきた選手たちを見て、剛は円陣を組む。

「あのピッチャーがマウンドに上がってからここまでヒット1本なわけだが、ちょっと試したいことがあるんだがいいか?」

確実な戦法は思い付かなかったが、もしかしたらいけるかもしれない攻め方を思い付いたので選手たちに意見を聞いてみる。当然、全員彼の力を信じているため指示を仰ぐ。

「追い込まれるまではストレート狙い。追い込まれたら、あえてあのカーブを狙っていこうと思う」
「「「「「えぇ!?」」」」」

思わぬ指示に絶叫するナイン。それもそのはず、ここまで捉えたものがいない相手の決め球に照準を合わせるというのは普通なら考えられないからだ。

「それも、左はお化けカーブ、右は屈伸カーブに狙いを絞ろう」

相手の決め球は左右によって変わってくる。その中でもより相手が自信を持っているボールに狙いを定めるというのだ。

「何か攻略法があって言ってるんですか?」
「あぁ。ちょっとこれを見てくれ」

その場にしゃがみ地面に何かを書き始める。穂乃果たちもそれを見るために姿勢を低くすると、それがホームベース付近の絵であることがわかった。

「左打者は打席の1番前の真ん中部分、右は打席のど真ん中部分に立つ」

打席部分のおおよその位置に丸を付ける。通常の立ち位置とは異なるため選手たちもその意図に耳を傾ける。

「そこからホームベース方向に踏み込んで流して打つ。以上だ」
「え?でも踏み込んだら内角がますます打てなくなりますよ?」

ベースから離れることで内角球を狙うのかと思ったら、踏み込んで流して打つという指揮官に疑問をぶつける。それを聞いた青年は待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべる。

「この位置に立って内角球を投げたがるピッチャーはいるか?」
「なるほど!!」

少なからず相手はベースから離れることで内角を狙われていると思う。そのため外への投球が多くなるが実はそこが狙い目。徹底的に流して短打で点数を稼ごうと言う戦法だ。

「うまくハマるかわからないし早々に気付かれて内角を攻められるかもしれない。はっきり言って賭けだが、あの投手から点を取るにはこのくらいしないとな」

好投手だからこそ全員で攻めることが重要。それが相手へのプレッシャーになるし、チームの統一感も上がる。

「守備で流れ来てるからな。そろそろ点取れよ!!」
「「「「「はい!!」」」」」

円陣が解けて打席に向かう穂乃果。彼女は指示された通りの場所に立ち投手を見据える。

(打席の前、しかもベースから離れた位置に立っている。これは変化球が曲がる前に打とうということか?)

変化球主体のあんじゅへの対策として打席前に立ち、変化しはじめを捉えようとしていると考えた英玲奈。彼女は初球外角へのストレートで様子を見ることにした。

ビュッ

(スト・・・遠・・・)

狙い球に反応しかけたが遠かったので見送る。判定はボールで1ボールとなる。

(ストレートに反応した。ということは立ち位置は変えても狙い球は変えてないってことか?ならなぜこの立ち位置・・・)

考えられる候補はあるが、それを特定することが彼女の役割ではない。英玲奈は先頭を切るために最善の配球をしようと考えた。

(次は真ん中から外に逃げていくスライダーだ。ストレート狙いならこれで空振りを取れる)

その狙い通り腰砕けのスイングになる穂乃果。続く球も同じような攻め方をするが、今度は見送り2ボール1ストライク。

(ここは内角にストレートだ。この立ち位置なら内角狙いのはず。球1つ分ボールにすれば詰まってくれる)

剛の狙い通り内角狙いと勘違いした英玲奈は厳しいボールで詰まらせようとした。足を上げてサイドスローから放たれたボール。それは穂乃果に背中にぶつかった。

「デッドボール!!テイクワンベース!!」

踏み込んだ彼女の背中に直撃したことで一塁への進塁権を与えられる。帽子を取り謝罪するあんじゅに穂乃果は大丈夫と言いながら一塁に向かった。

(なんだ?いつも通り来たと思ったが、厳しく攻めすぎたか?)

この時英玲奈は違和感を感じていた。しかし、ボール球を要求した手前当たってしまったことには文句を言えない。切り替えて次の凛を打ち取ることを考える。

(点差は1点。ここは送りもありだと思うが・・・)

相手監督の動きを見て何を仕掛けようとしているのか考える。しかし、打者にはバントの構えが見えないので、少し長めに思考する。

(セーフティはあるな。サードを前に寄せて、あとは定位置で十分だ)

セーフティ対策に三塁手を前に寄せ、あとの者はヒッティングに備える。初球は低めにスクリュー。凛はこれを見送り1ストライク。

(ストレート狙いなら見せ球に使うべきか。外角へのストレートをボールに)

相手が徹底してストレート狙いのため、それを見せ球として有効に使おうと考えたが、予定よりも大きく外れるボールになってしまう。

(見せ球には使えないか?変化球だけでは合わせられるのが怖い・・・)

狙っていても打てるとは限らない。それに立ち位置との関係からもバッテリーは外角に、今度はストライクでストレートを使うことを決める。

要求通りに向かってくるストレート。しかし、それは音ノ木坂の狙い通りだったため、凛は踏み込んでレフト線へと持っていく。

「ボール3つ!!」

レフトがすぐさまボールを拾い三塁に返球。穂乃果は狙おうとしたが、さすがに無理かと停止する。

(踏み込んで打ってくるのか。いい反応をする)

コースを見て咄嗟に踏み込んだのだと思い込んでいる英玲奈。しかし、UTXベンチからタイムがかかりマウンドに集まると伝令から言われたことに驚愕する。

「音ノ木坂は外を狙ってきてるって!!立ち位置に騙されるなって監督が」
「何?」

内角狙いだと思っていた相手が実は外角を誘い出してきていたと聞いてにわかには信じられない面々。だがベンチからの伝令には逆らうことができないため、その言葉を信じるしかない。

「全員そのまま聞け。ここからは全部カーブ狙いで行く。他は捨てていい」

相手がマウンドで何を話しているのかはわからないが察しはつく。剛はベンチにいる者や準備をしている次の打者たちにそう指示をする。彼女たちはそれにうなずき、真姫は打席に向かっていった。

(外角狙いか。だがこんなに踏み込むということは内角は捨てているといっていい。なら内角にストレートを入れておくか)

若干甘く入っているが真姫はそれを見送り1ストライク。それでようやくUTXナインは監督の言ったことが本当なんだと思い知らされた。

(ならここはスローカーブで1球タイミングを崩そう。西木野さんはまだ見てないから、捉えられないはず)

お化けカーブでカウントを整えその様子を見て決め球を決めようと考えた英玲奈。あんじゅもそれに同意し投球に入る。

(消えた・・・ということは)

穂乃果たちから聞いたように視界から一瞬消えるボール。彼女はそれに気を取られずに踏み込むとバットを振るう。

カキーンッ

「「え・・・」」

ほぼ勘で振ったバットに変化してきたボールが衝突し打球は右中間を深々と破る。二塁ランナーの穂乃果、さらには俊足を飛ばして一塁ランナーの凛もホームに生還するタイムリーツーベースを放った。

(バカな・・・左打者であんじゅのスローカーブを打つなんて・・・)
(すごい子ね、あの子)

二塁ベース上でガッツポーズする真姫を驚愕の目で見ている面々。英玲奈はここでタイムを取るとマウンドに駆け寄っていく。

(これで7対3。まだ中盤だがここまではこちらのペースで来ていると言っていいか?)

リードを広げたもののまだ安心するわけにはいかないと気を引き締める剛。ただ、相手もこちらの投手陣にタイミングが合っていないため、どこか油断しているようなところも伺える。

『4番サード園田さん』

2人の会話が終わりプレイが再開される。その初球バッテリーが選択したのはカーブとは真逆の変化をするボール。

(初球からスクリューですか。本気で打ち取りに来ましたね)

これまでとは異なる配球。次のボールは内角から入ってくるスライダー。これで2ストライクと追い込まれてしまう。

(強気に攻め始めてきたな。点差がついて逆に開き直ったのか?)

3球目は外角へのストレート。本来なら打ち頃だったはずの球も左右に散らされたことで反応できず見逃し三振になってしまう。

(カーブ狙いが読まれたか?だがそんなに何度も打てる代物じゃないし、俺なら使っていくところだけどな)

そう思っていた矢先に屈伸カーブを駆使するバッテリー。絵里はそれに食らい付くが力ないセカンドゴロとなる。

『6番センター東條さん』

2アウトランナー三塁。打席に立った希は剛をチラッと見ると、何やら笑みを浮かべる。

(??)

その笑みの正体がわからなかったが次の瞬間、スクリューを使ってきたバッテリーの裏をかくように希が三塁線にセーフティを転がす。

「切れるぞ!!」

際どいところに転がった打球。英玲奈の指示で三塁手はそれを見送るが、ラインギリギリにボールが残ってしまった。

「希ちゃんナイスバント!!」
「追加点!!」

野手が定位置に戻ったのを見逃さなかった希のファインプレー。続くにこがセカンドフライに倒れたが、音ノ木坂はこの回一挙3点を上げ大きくリードを奪った。

「どんまいにこちゃん!!」
「今はピッチングに専念すればええよ」
「うっさいわね!!わかってるわよ!!」

守備に散っていく音ノ木坂はさらに士気が高まっている。一方のUTX学園の円陣は沈黙していた。

「・・・どっちが春の覇者かわからんな、これじゃ」

呆れたような声で雰囲気をさらに凍てつかせる西村。選手たちはそれに顔を俯かせただ押し黙っている。

「あの投手はストレートとカーブしかない。二択だ。この意味がわかるな」

2本の指を立てて全員の視線を集める。彼女たちが顔を上げたところで青年は話を続ける。

「仕方ねぇからここからは球種のサインを出していく。お前たちはそのボールにタイミングを合わせて振り抜け!!」
「「「「「はい!!」」」」」
「迷うなよ、基本はセンター返しだからな。取られたもんは倍にして返してこい!!」
「「「「「はい!!」」」」」

打順はA-RISEこと強力クリンナップの3番。あんじゅは打席に入りサインを確認する。

(初球はストレートね)

監督のことは好きではないが、その実力には一目置いている。あんじゅは外角のストレートに山を張ると、まさしくそこにボールはやってきた。

カキーンッ

「センター!!」

快音を響かせぐんぐん伸びていくボール。希が手を伸ばすが、その鼻先をかすめボールはフェンスへと到達した。

「ボール3つ!!ショート中継!!」

クッションボールを拾い内野へ返す。受けた絵里も三塁に急いで転送。あんじゅは二塁を蹴ったところで止まりツーベースで止めることができた。

(悪いな天王寺、うちの本領はここからだぜ)

0アウト二塁のチャンスを得た西村。ここからUTXの逆襲劇が幕を開ける。


 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
いよいよ王者UTXが牙を剥きます。
果たしてにこちゃんはこの点差を守れるか、お楽しみに。 
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