『塗り潰した7日間』
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『終焉』
勢い良く誠が来たのでビックリした。いつもと違うのは解る。何かあったのも解る。でも、妙に安堵してると思うのは気のせいなのだろうか...。
『...何があったん?他の組の奴等?』
誠は首を横に振った。
『侵入者?』
また首を横に振った。
零は、未開封のお茶を差し出した。誠は素直に受け取り、一気に飲み干した。
今は聞かない方が良い感じ。零は横にただ黙って座っていた。懐かしい感じだった...。
預かってた銃を返した。素直に受け取った。と、言うことは...一応、安全は確保されてる筈。
『...コンビニ行ってくるから、ちゃんと此処で待っといて』
『ん?...んっ』
なんで『此処で待っといて』なんか引っかかった。抜け出せるわけ無いんやから此処で待つのは当たり前やん。
なんか気が動転するようなことでもあったんかな...?誠らしくない...。
帰って来た誠が、何も言わんまんま。だから零も何も言わんまんま。ただ、寄り添ったまんま黙ってた...。
なんなんやろ...。
それにしても自称父さん遅いわぁ。
てか、こんなとこ見たら絶対なんか疑われるよなぁ...
過去の関係性とかバレたらヤバいよな?騙しとったって、嘘吐いとったって思ったら絶対腹立つよなぁ...
思い切って誠に話しかける。
『誠、此の状況見られたら誤魔化しきれんくなるし、そろそろ戻った方がえんちゃう?』
誠が首を横に振った。
どっちに対してやろ...
誤魔化せるよ(笑)的な?それとも、いちいち何も想わんって事?
『戻らんのん?』
誠の首が縦に頷く。
上で何かあった何かってのが誠をこんな風にしてる。其れが何なんかは誠の口に出来る事じゃないって事...。
だから零に此処に居るように、間違っても上に抜け出さんように、念を押した。自分で確かめに行くべきなんか...今の誠は、声は届くものの放心状態に近い。
誠を一旦寝かそう...。
『誠、横んなって、目ぇ瞑ってみぃ』
言われた通りに動く誠。零が施設にいた頃、幼児を寝かしつけてた。同じ様に、誠の頭を瞼を閉じる様に顔の方に向いて撫で続ける。
神経も使ってただろうから疲れてる筈。
10分程で深い眠りに堕ちた誠。誠のポケットから、ゆっくり慎重に鍵を抜き取った。
悪いと思いつつ、ケータイも拝借。組長からの受信BOXを開く。返信する。
『零です。誠は眠ってます。此処で何かが起きてます。話してくれず落ち込んでしまってます。確認する為、鍵とケータイを拝借し、地上に上がります』
此処に来る時いつもポケットに入れてた鍵。此で鍵が開く筈。此処から出て、誠が目にした真実を...現実を、零も見るべきだと思う。
覚悟はしてる。誠があんな状態に成るほどの何かが在るって...。でも、其れが何なんかってのは全然想像つかん。
初めて目隠し無しで此のドアの向こうに行く。少しだけ怖い気持ちはあった。未知の場所はいつでも少しだけ怖い...。
鍵を開け、閉じこめられていた部屋から出る。階段が終わると目の前に廊下を挟んで大きな部屋が在る。左右に分かれ部屋がいくつも在る。
まず目の前の大きな部屋には誰も居ないのを確認した。次に右側へ行き、奥の部屋から見ていった。誰も居ない。最後に左側の奥から。
地下のあの部屋の上は此の左側。どの部屋に当たるのか...そして其処に何が在るのか。嫌な予感しかしないのは当然だろう...。でも、そんな予感は外れてしまえと思うしかない。
誰も居ない。残るは階段横の風呂場と脱衣場が在る此のドアの向こう。ゆっくりドアを開ける。脱衣場を見渡す。白い封筒に目がいった。なんだろう。
『娘、零へ。父さんより』
え...
手紙が入ってた。
『記憶の戻らない零、父さんとやり直そうと、一緒に行こうと言ってくれた零、ありがとう。昔、娘が産まれた頃を思い出す事が出来たのは零のおかげだ。汚い人間になってしまった父さんには零が眩しい。父さんの傍に置いとくには勿体ない。先がある娘は連れてけない。自分を大事にして、何事にも本気で向き合って生きなさい。父さんは向こうで待ってるから、60年後位にまた話そう!最後に幸せをありがとう』
涙が溢れると同時に悲しみと怒りが沸き出す。きっと自ら終わらせたのだろう。
意を決して風呂場を開けた。
微笑んでいるようにも見える其の死に顔は、あまりにも死人に見えず、尚更心が潰されそうになる。
誠のケータイが振動する。組長からのメール。
『どこや!侵入成功や』
『地上1F風呂場にて死人1人。他の人間は留守』
零は、自称父さんの右手に在る銃を手にとり、スカートのウエスト部分に。こめかみに銃口を当て、撃った後に物音がしたんだろう。
サイレンサーさえ無ければ即駆けつけた!何が何でも誠に鍵を開けさせた!
そんな今更、無意味なことを思った。せめて綺麗にと、血痕を拭き取る...。
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