夢幻水滸伝
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第二十二話 人の星その九
「さっきから聞いてたら裏だの真だの言うけどな」
「あれっ、うちがリーダーですよ」
「うちですよ」
「うちに決まってますやん」
「うちしかいませんで、リーダー」
「全員がリーダーって何や」
そこに突っ込みを入れるのだった。
「有り得んやろ」
「いやいや、ですからうちがですよ」
「うちがリーダーですよ」
「うちやって言うてますやん」
「うちしかいませんし」
「そやからわかるか」
四人共リーダーだと言っては、というのだ。
「ほんまに何やっちゅうねん」
「何やって言われましても」
「うち等こうしたグループですさかい」
「リーダーについても」
「全員で言ってますよ」
「つまりリーダーはおらんのやな」
中里はこう解釈した、とうよりかはこう解釈して彼が聞く限り不毛な論争から抜け出たかったのだ。
「そういうことやな」
「あっ、そう言います?」
「それはちょっとちゃいますで」
「グループがいればリーダーいますで」
「それは絶対ですやん」
「絶対でも何でもそういうことにしておくわ」
中里としてはというのだ。
「正直どうでもええことやしな」
「そう言いますか?」
「うち等のリーダーについては」
「かなり大事ですけど」
「それで終わらせるんですか」
「自分等にとっては大事な話でも僕にはどうでもええ」
少し怒った顔になって四人に返した。
「そやからこの話はこれで終わりや」
「何か冷たいですね」
「うち等の在り方話してますけど」
「こっちの世界でもあっちの世界でも」
「人の道の話ですのに」
「そやからリーダーはどうでもええ」
人の道についてはというのだ。
「というか何でそんな不毛な話になるねん」
「僕から見てリーダーの話は蛇足や」
芥川も言う。
「正直どうでもええわ」
「軍師さんまでそう言います?」
「どうでもええって」
「ほんまにどうでもええ、とにかくな」
あらためて言う芥川だった。
「自分等は人の道は外れんか」
「はい、そうしてます」
「とにかくいじめや意地悪はしませんで」
「そういうのあったら身体張って止めてます」
「相手が誰であっても」
四人共まっすぐな淀みのない目で答えた。
「それは守ってますさかい」
「安心して下さい」
「そういえば四国攻めの時も」
綾乃もここで言った。
「略奪とかするなって真っ先に言ってたな」
「そして実際にさせませんよ」
「何時でもです」
「お金は貰った分働いて」
「そして腐ったことはしませんさかい」
「そのことめっちゃええわ」
綾乃は中里や芥川とは違い四人ににこにことして話した。
「人の道は外れたら終わりやさかいな」
「傭兵で色々なところに雇われてますけど」
「どの勢力に行ってもそれは守ってますで」
「仁義、信義は人の心」
「真の傭兵こそ人の道を守るもんです」
四人も強く言う。
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