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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百二十四話 夏休みの宿題その四

「その十日の間、いえ」
「いえ?」
「もっと短い方がいいかも」
 強く考える顔でだ、詩織さんはこうも言った。
「それは」
「三日でなんだ」
「それだけの間でね」
「いい曲をだね」
「作ってみようかしら」
「あえて自分を追い込むんだ」
「というか部活の方が」
 テニス部がというのだ、詩織さんjはテニス部所属だ。
「忙しくなるの」
「夏休み前に?」
「そうなの、実は練習試合が三つ入ってるの」
「この三日の間に」
「そうなのよ、これが」
「それはまた凄いね」
 残り十日程の夏休みに練習試合が三つ、こんな話ははじめて聞いた。
「過密スケジュールだね」
「部長さんが夏休みの部活の総仕上げにって」
「それでなんだ」
「もう一気にね」
「入れたんだ」
「そうなの」
「凄い部長さんだね」
 僕はここまで話を聞いてしみじみとして言った。
「それはまだ」
「うちの中等部、神戸市内の高校、あと尼崎の高校と」
「中等部もなんだ」
「そうなの、まあこっちは練習試合っていうよりは」
「練習の相手だね」
「教えるって形ね」
 高校生が中学生にというのだ。
「そうなるわ、けれど練習試合は練習試合で」
「それでだね」
「一日やるから、それが三つよ」
「ううん、凄いことしたね」
「それで忙しいから」
 だからだというのだ。
「この三日、その練習試合がはじまる前に」
「一曲だね」
「作ってみるわ」
「そうするんだね」
「後は忙しいから。三十日まで」
 八月三十日、ラスト前の夏休みを名残惜しんで仕方がない日だ。
「だからね」
「それでなんだね」
「うん、もうね」
「三日の間に完成するんだ、一曲」
「そうするわ」
 詩織さんは意気込んだ顔で言った。
「もうね」
「それじゃあ」
「何とか作ってみるわ」
 作詞、作曲をしてというのだ。
「そうするわ」
「頑張ってね」
「そうするわ、何とかね」
「三日で曲作られるの?」
 僕は詩織さんに怪訝な顔になって問うた。
「そんなことは」
「難しいわ、それもかなりね」
「やっぱりそうだよね」
「それだけで一曲作ったことはないわ」
 夏休みの間に数曲作った詩織さんでもというのだ。
「一週間がね」
「一番短い時期なんだ」
「そうなの、けれどそこをね」
「何とかだね」
「やってみるわ」
 こう言ってだ、そしてだった。
 詩織さんは早速だ、自分の部屋に戻った。そうして一人で作詞作曲にかかった。僕はこれで一人になって。
 何もすることがなくなった、書斎で本を読むか自分の部屋で二学期の予習やインターネットをしてもよかったけれど。 
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