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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百二十四話 夏休みの宿題その三

「僕が思うにね」
「だといいけれど」
「けれど詩織さんとしては」
「ええ、本音はね」
 いいけれど、と妥協の言葉を言ったけれどだ。パソコンの席に座る僕の横に椅子を一つ持って来て座ったうえで答えてくれた。
「もっとね」
「いい曲をだね」
「作りたいの」
「それで課題に出したいんだ」
「全部の曲を」
「詩織さん完璧主義なんだね」
 これまで気付かなかったけれどそうだった、ここまで音楽にこだわるのはそのことを雄弁に物語っている。少なくとも僕はそう感じた。
「そうなんだね」
「そうかも知れないわ」
 詩織さん自身否定せずに言ってきた。
「私好きなものは何でも」
「完璧にだね」
「したい方ね」
「そうなんだね」
「自分でも思うけれど」 
 こう前置きしてだ、僕にさらに話してくれた。
「だからこの課題も」
「音楽好きだから」
「するとなるとね」 
 それこそというのだ。
「完璧にしたいわ」
「だからだね」
「もっといい曲作りたいわ」
「完璧な」
「そうした曲が」
「そうだね、僕としては」
 三曲目の曲をもう一回かけてから言った、パソコンを操作して。
「これの曲が一番いいかな」
「その曲がなのね」
「バラードだよね」
「ええ、そうよ」
「歌詞もいいし」
 夏の夕暮れの中で失恋を想った曲だ、聴いていてしんみりとなった。
「これがいいかな」
「そうなの」
「けれど詩織さんとしては」
「その曲は私も嫌いじゃないけれど」
「それでもだよね」
「もっといい曲を作りたいの」
 その想いが切実に出た言葉だった。
「本当に」
「ううん、そこまで言うのなら」
「それなら?」
「あと十日位だけれど」 
 夏休みがあるのはだ。
「もうその十日の間にね」
「一番いい曲をなのね」
「作ろうとやってみる?」
「チャレンジね」
「うん、そうしてみる?」
「十日の間に出来なかったら」
「これまで作ったね」
 作詞、作曲をしただ。
「その曲を出せばいいよ、何曲もあるしね」
「いいっていうのね」
「うん、あとその曲発表する気あるかな」
 僕は詩織さんにこうも尋ねた。
「そのつもりは」
「インターネットとかね」
「最近ボカロ流行ってるし」
「今のところは」
 少し考えてからだ、詩織さんは僕に答えてくれた。
「ないわ」
「そうなんだ」
「けれど言われてみたら」
「いいと想ったんだ」
「ええ、だからね」
 それでという返事だった。
「やってみるわ」
「それじゃあね」
「そしてね」
 詩織さんはさらに言った。 
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