夢幻水滸伝
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第二十二話 人の星その四
「そうですか、それでF組にですか」
「行ってこっちの世界ではどうかな」
「中里さんに紹介しくってことで」
「してたけどな」
それがというのだ。
「まさか弥生ちゃんと会うなんてな」
「まあたまたま」
弥生は綾乃に笑って話した。
「廊下歩いてただけで」
「用事やないん」
「はい、特に」
違うというのだった。
「ありません」
「そうなんやな」
「授業の気分転換で歩いてただけで」
それだけだったというのだ。
「特にです」
「それやったらな」
その話を聞いてだ、芥川が言った。
「自分も一緒に来るか?」
「F組にですか」
「そうせんか?」
「F組言うたら月ちゃんですね」
「月ちゃんって織田の仇名か」
「はい」
実際にというのだ。
「一年の間ではそう言われてます」
「そうなんか」
「よくG組の大ちゃんと一緒にいます」
「大ちゃんって正宗か」
その仇名を聞いてだ、芥川はすぐに察した。
「そうなるか」
「はい、そうです」
その通りという返事だった。
「正宗大二郎君です」
「その名前やから大ちゃんやな」
「元プロ野球選手とちゃいますで」
「そう言っても二人おるやろ」
中里は弥生の今の冗談にすぐにこう返した。
「大ちゃんって仇名の野球選手って」
「山下大輔さんと大石大二郎さんですね」
「知ってるんやな」
「はい、パワプロやってますから」
そこからの知識からだというのだ。
「知ってます」
「そのシリーズOB選手も出るからな」
「お二人共能力高いですよ」
「守備がな」
「そうですよね」
「お二人共阪神の選手ちゃうかったけどな」
中里としてはそれがいささか残念ではあった、大石は近鉄のセカンドであったし山下は太洋今の横浜のショートだった。
「名選手やったな」
「うちお二人共好きです」
「それでその仇名で言うとか」
「はい、何か親しみを覚えます」
そうだというのだ。
「どうにも」
「それだけ好きか」
「はい、ほな今から大ちゃんにも連絡しますわ」
携帯を取り出してだ、中里に応えた。
「それで三人で」
「あの子は今は東海やけどな」
そちらの勢力だとだ、綾乃が言った。
「まあええか」
「こっちの世界やちゃいますし」
「ほなな」
「はい、お話しましょ」
こう話してだ、そしてだった。
三人は弥生が正宗に連絡してから彼女と共に織田のクラスである一年F組に向かった。するとだ。
そのクラスに青い長ランを着たスポーツ刈りの大柄な少年とだ、ジャーマングレーのプロイセン軍の軍服を思わせる詰襟の制服を着た小柄で黒髪の少年もいた、小柄な少年の口はいささか前に出ている。
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