八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百二十二話 光の車輪その九
「あくまで理想だ」
「理想の街ね」
「現実を忠実に再現すればとんでもないことにもなる」
「いや、再現しなくていいから」
「全くだな」
「そうね、後ね」
「後?」
「イルミネーションは絶対にないし」
ダオさんはそのイルミネーションを見て言った、観覧車からだと観覧車のものだけでなく街のそれ全体が見られるから本当に嬉しい。
「色々入ってるわね」
「今の要素もな」
「そうね、イルミネーションにしても」
「その通りだ、光を見ているとな」
井上さんもイルミネーションを見続けている、そうしつつの言葉だった。
「夜は特にだな」
「ええ、何か心が落ち着くしね」
「闇が払われてな」
「イルミネーションじゃなくても」
それでもというのだ。
「いいわね」
「うむ、実にな」
「けれどイルミネーションはね」
ダオさんはイルミネーシをずっと見ている、その目は微笑んでいる。そうしてそのうえで言葉を続けていた。
「余計にいいわね」
「普通の夜の光よりもな」
「奇麗に見せているからね」
それを目的にしてだ。
「丁寧に考えて」
「そうだな、考え抜かれた芸術だ」
「光のね」
「そうだな、降りるまで観てだ」
「そして降りてからもね」
「最後まで観るか」
イルミネーションが光っている最後の時までというんおだ。
「今日も」
「それでホテルに帰って寝ましょう」
「そうしよう、そして問題はだ」
「降りる時よね」
その観覧車からだ、ここでもその話になった。
「やっぱり」
「そうだ、それはだ」
井上さんは僕に顔を向けてそれで僕にも言ってきた。
「君は特にだな」
「さっきお水飲んで何か」
僕はイルミネーションと二人を交互に観ていた、そして井上さんに言われて井上さんに顔を向けて応えた。
「頭にお水がくる感覚がしました」
「そうか、それはつまりだ」
「酔いが醒めてきてますね」
「飲んだ分だけな」
「お水を飲んでよかったですね」
僕はあらためて言った。
「ペットボトル一本分」
「そうだな、では私もだ」
「ダオもね」
ダオさんもここで言った。
「ちょっとね」
「飲むか」
「そうするわ」
実際にという返事だった。
「そうするわ」
「わかった、ではな」
「飲みましょう、そろそろ」
「少しで違う」
「そうそう、お水を飲むか飲まないか」
一杯だけでもだ。その一杯がペットボトル一本分だとしても。
「それで違うわね」
「酔いの醒め方がな」
「ダオ達はあまり酔ってないけれど」
「少しでも酔いが醒めていた方が降りる時に安全なのも確かだ」
「そうだからね」
「飲むとしよう」
「今からね」
こう二人で話してだ、そしてだった。
ダオさんも井上さんもそれぞれお水を飲んだ、ペットボトルの水を。二人共五〇〇ミリリットルのそれを空けた。
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