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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百二十二話 光の車輪その八

「蚊とかいるから」
「そうだな、しかしそこまで不潔な状況ではないな」
「何それって世界よ」
「だが当時の欧州はそうでだ」
「ペストが大流行したのね」
「そこにはオランダも入っていた、確かだ」
 井上さんは微かだけれど眉を考えさせる顔になった、そしてそのうえで僕とダオさんに話してくれた。
「独立してからも流行った時期があったか」
「じゃあここのモデルになった街も」
「おそらくまともなトイレはなくてな」
 そしてというのだ。
「こんなに奇麗ではなかっただろう」
「実際は」
「とにかく欧州全体がそうだった」
「プラハもなのね」
「おそらくな」
「何かイメージ狂うわね」
「大阪が奇麗でないという人がいるが」
 どうしてもそんなイメージがある、昔と比べるとそれでも相当に奇麗になったと聞いているけれどだ。
「あんなものではない」
「大阪ね」
「神戸と比べるとだな」
「奇麗って感じではないわね」
 ダオさんもこう言う。
「あそこは」
「そうだな」
「しっかり見てはいないけれど」
「しかしその大阪、十六世紀や十七世紀と比べるとな」
「同じ時代のプラハとかハウステンボスのもとになった街はなのね」
「遥かに不衛生だったのだ」
「そうだったのね」
「曲がりなりにも大阪にはトイレがあった」
 汲み取り式のものがしっかりとあった、今では汚いと言われているこのトイレも道の端に捨てるよりは遥かに衛生的だ。
「しっかりとな」
「その違いは大きいわね」
「その通りだ」
「今のプラハには行きたいしハウステンボスは大好きだけれど」
「当時のそうした街達にはだな」
「行きたくないわね」
 ダオさんは自分の考えをはっきりと述べた。
「いや、そうした場所は」
「私もだ、聞いていて驚いた」
「汚いって」
「それが過ぎるとな」
「そうよね」
「当時の江戸等は上下水道まであった」
「それは凄いわね」
「水路を利用してな」
 江戸は江戸城を軸とした多くの水路があった、堀がそのままつながっていた形だ。江戸の多くの川も利用していたのだ。
「そうなっていたのだ」
「プラハと比べるとずっと衛生的ね」
「そうだな」
「いや、また日本をみなおしたわ」
「トイレのことからもか」
「そうよ、そんな外にぶちまけるとか」
 それこそというのだ。
「有り得ないから」
「しかし当時の欧州はそうだった」
「それでペストが大流行したのね」
「結果としてな」
「街も汚くて」
「そんな街は嫌だな」
「論外よ」
 ダオさんは今は奇麗なイルミネーションの街を見つつ答えた。
「絶対にいたくないし入りたくもないわ」
「汚いだけではないな」
「自分もペストになったら」
「死ぬな」
「あれ今でも死亡率高いのよね」
「病気の原因もわかってワクチンもあるが」
 それでもとだ、井上さんはダオさんに強い声で言い切った。
「危険な病気であることは事実だ」
「そうよね」
「だから入らないことが一番だ」
「最初からね」
「そして第一に最初からトイレはな」
「ないとね」
「トイレは人類社会に不可欠だ」
 まさにという言葉だった。
「さもないとそうした話になる」
「全く、聞く話と現実は違うわね」
「ハウステンボスは確かに街並みを再現しているが」
 オランダのその街、ハーグをだ。 
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