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夢幻水滸伝

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第二十話 現実の世界でその十

「水産の方や」
「そっちか」
「ああ、吉川のとこ行こか」
「こっちの勢力やな」
「水産科のA組や」 
 彼のクラスはというのだ。
「そこに行こうな」
「ほなな」
 中里は芥川に応えて綾乃と共に水産科の方に行った、そのA組に入ると黒く腕に二本の金モールの模様があるボタンのない詰襟の制服を着た者が出て来た、見れば人間の姿の吉川だった。
 その彼の制服を見てだ、中里は言った。
「帝国海軍の軍服やな」
「八条学園の制服の一つだ」
 吉川の返事はこうだった。
「そしてあちらの世界でも着ている」
「そういうことか」
「やはりこの服が一番いい」
 制服は、というのだ。
「旧帝国海軍のものがな」
「今の海自さんはどうやねん」
 中里は海上自衛隊の軍服について尋ねた。
「あかんか?」
「恰好いいとは思うが」
「帝国海軍の方がええか」
「私としてはな」
「それでその制服か」
「夏は白だ」
 そちらを着るというのだ。
「薄い生地にしたな」
「あの白い軍服か」
 中里は山本五十六等がその軍服を着ている写真を思い出した、それと共に海自のことも思い出して言った。
「今も海自さん着てるな」
「そうだな」
「夏はあれか」
「あまりにも暑いと略装を着るがな」
「そっちは海自さんやな」
「夏に長袖はどうしても辛い」
 幾ら好きな服でもというのだ。
「だから略装を着る」
「成程な」
「ただ前から思ってたけど」
 ここで綾乃が吉川に尋ねた。
「白い制服って汚れ目立つから」
「そのことだな」
 吉川は今はこちらの世界なので綾乃への口調は普通のものになっている。
「それは私も気をつけている」
「やっぱりそうなん」
「特にカレーを食う時はな」
 まさにその時はというのだ。
「かなりな」
「カレーはなあ」
 芥川が言うには。
「白い服着てる時は地雷みたいなもんや」
「大好物だが」
「やっぱり注意してやな」
「食べている」
 そうだというのだ。
「そうしている」
「やっぱりそうか」
「そうだ、ちなみにカツカレーとシーフードカレーが好きだ」
 そのカレーの中でもというのだ。
「今日は食堂でシーフードカレーを食べたい」
「あのカレーか」
「そうだ、なければカツカレーだ」
 そちらを食べるというのだ。
「そう考えている」
「そうか、そういえばカレーも」
 ここでだ、中里はあることに気付いた。その気付いたことは一体何かといと。
「海軍からやったな」
「そうだ」
 その通りだとだ、吉川も答えた。
「あちらの世界でもよく食べている」
「シーフードカレーをか」
「そうしている」
 そうだというのだ。
「美味いうえに栄養もある」
「そやからか」
「カレーはいい」
「あちらの世界でもか」
「かなりな、それでここに三人で着た理由を聞きたいが」
「ただ会いに来ただけや」
 中里は吉川に明るい笑顔で答えた。 
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