夢幻水滸伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二十話 現実の世界でその八
「今はこのクラスおるか?」
「いると思うが」
「あいつかなりでかいしな」
中里は彼と共に戦った時のことを思い出しつつ話した。
「目立つやろ」
「いや、あちらの世界ではかなり暴れるらしいが」
「ちゃうんか?」
「そうだ、違う」
こう言ったのだった。
「学校では大人しい」
「そうなのか」
「そうだ、だからクラスにいてもな」
それでもというのだ。
「あまり目立たない」
「そうなんやな」
「人付き合いは悪くないし部活の自転車部でもだ」
室生は彼の部活の話もした。
「エースらしいがな」
「それでもやな」
「もの静からしい」
「それで目立つことはないか」
「そうだ」
それがこちらの世界の難波だというのだ。
「だからいてもだ」
「あまり気付かへんか」
「おるで、彼」
綾乃はクラスの端に座っている彼を見付けて言った。
「クラスに」
「あっ、ほんまや。というかな」
中里は綾乃の言葉で難波を見たところでふと気付いたことがあって綾乃に問い返した。
「綾乃ちゃんあいつ知ってるんか」
「一回都に来たことあってん」
「そうだったんやな」
「それでやねん」
「あいつの顔知ってたんや」
「そやねん」
綾乃は中里にあっさりとした口調で話した。
「まあ会って少し話しただけやけどな」
「知ってることは知ってるんやな」
「そやで」
「僕のこと話してるんか?」
その難波が来て彼等に聞いてきた。
「あっちの世界のことはあっちで話そうな」
「あれっ、何かこっちの世界では感じちゃうな」
その難波の言葉を聞いてだ、中里は首を傾げさせて言った。
「穏やかな感じやな」
「今言ったな」
室生がその中里に話した。
「クラスや部活ではこうだ」
「そうやねんな」
「あちらの世界では違うがな」
「あっちはあっちや、暴れるのはあっちでだけや」
難波は穏やかな口調のまま中里に話す。
「というか戦の場だけや、僕が暴れるのは」
「そうなんか」
「普段暴れてどないするねん」
こうも言うのだった。
「迷惑かけるだけやろ」
「それはそうやけどな」
「クラスで暴れたらアホや、部活は自転車に専念してるわ」
その自転車部でもというのだ。
「部長も同級生も後輩もしっかりしてるし何も言うことあらへん」
「それで部活でもか」
「この通りや」
やはり穏やかな口調だった。
「変わらんで」
「そうか、わかったわ」
「ああ、後僕今はロシアにおるさかい」
そちらの陣営に加わったというのだ。
「今度会ったら出来同士ってことでや」
「そうなったか」
「ああ、けどこっちの世界では仲良くしような」
「別に喧嘩する理由ないしな」
「暴力は何も解決せんで」
難波はあちらの世界での彼とは正反対の言葉も出した。
「あんな意味のないものもあらへん」
「戦は別やしな」
「そや、戦はまたちゃうけどや」
「暴力は、やな」
「人を殴って蹴って何が面白いねん」
その顔の中の割合では比較的小さな目は動かない、そして白く大きな歯並びのいい歯で語っていく。
ページ上へ戻る