夢幻水滸伝
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第二十話 現実の世界でその七
「そやからな」
「ここではか」
「ただ会いに来ただけやからな」
「友好的にか」
「友好的っていうかナチュラルやな」
敵対的でもないがというのだ。
「今の僕は」
「そうか、わかった」
「ああ、しかしこっちの世界でもな」
「雰囲気は似ているというのだな」
「ああ、何かな」
「そうだろう、あちらの世界での私はエルフだが」
「あんま変わらんが」
外見も雰囲気もというのだ。
「実際のところな」
「自分でエルフに似ていると思っていたが」
「そうしたらか」
「あちらの世界ではエルフになっていた」
「成程な、あと今気付いたけれどな」
「何に気付いた?」
「自分の喋り方方言強いな」
出す言葉自体は堅苦しい感じだが、というのだ。
「金沢辺りの言葉か?」
「実際金沢生まれだ」
「やっぱりそうか」
「今は寮にいる」
「ほな坂口とかと一緒か」
「あいつとは寮でも仲良くしてもらっている」
そうだとだ、室生は中里にこのことも話した。
「名古屋と金沢だがな」
「どっちもお城あるしな」
「そうだな、しかしだ」
「天主閣ないっちゅうんやな」
「金沢はな」
そうだというのだ、室生はこのことを苦い顔で言った。
「残念な話だ」
「昔はあったんやろ?」
「あったが建ててすぐに火災でなくなった」
その歴史的経緯を話す時も苦い顔だった。
「そして今もない」
「皇居と同じ理由と経緯やな」
「そうだ、全く以てな」
「ほなその話はせんな」
「そうしてくれたら有り難い、どうも再建の話も出ているが」
その天守閣のだ、金沢城の天守閣は江戸時代がはじまるかはじまらないかの頃に焼け落ちてそしてそれ以来ないのだ。
「私としては是非な」
「建てて欲しいか」
「あちらの世界ではあるしな」
金沢城の天守閣がというのだ。
「こちらの世界でもだ」
「何か天守閣にこだわりあるな」
「あるとないとでは全然違う」
室生は金沢の訛りの言葉で言った。
「ない者にとっては切実な話だ」
「兵庫いうたら姫路城やけどな」
「姫路城の天守閣は実に立派だな」
「ほんまにな」
「だからだ」
「この話はか」
「あちらの世界ではどんどんしよう、北陸はいい城も多い」
「本拠地の金沢城にやな」
芥川が言ってきた。
「福井城、七尾城、それと春日山城やな」
「そうだ、四つもある」
「どの城もええ城や」
「そうそう陥落しないと言っておく」
「そうやな、まああっちの世界の話やしな」
「あちらでしよう」
「自分がそうしたいんやしな」
笑ってだ、芥川は室生に返した。
「そうしよな」
「そういうことでな」
「ああ、しかしな」
「しかし、何だ」
「このクラス星の奴自分だけやないやろ」
「難波のことか」
「あいつは何処や?」
もう一人の星の主のことも聞いたのだった。
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