レーヴァティン
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第二十話 新妻その四
「では待たせて頂きます」
「私が完全に女性になるまで」
「そうさせて頂きます」
「女性ならですね」
「はい、どうしても男はです」
このことは少し苦笑いで言った。
「苦手なので」
「だからですね」
「待たせて頂きます、若しそれで」
男のハンナを受け入れない自分が嫌ならとだ、久志はそのハンナに対してあらためて言うのだった。
「私が嫌いになったなら」
「それならですね」
「拒んで下さっても構いません」
「そうですか」
「私に少しでも落ち度があれば」
「いえ、ではその時に」
これがハンナの返事だった。
「宜しくお願いします」
「そうですか」
「男性の身体ですね」
「はい、その心は別にして」
「愛せないのですね」
「ベッドを共には出来ません」
だからだというのだ。
「ですから待たせて頂きます」
「わかりました、それでは」
「その時にこそ」
「愛し合いましょう」
二人で約束をした、そしてだった。
久志は誓いを結んだハンナにだ、こうも言った。
「それで今からですが」
「何か」
「飲みますか」
「お酒をですか」
「生涯を誓い合う為に」
「是非ですね」
「はい」
ハンナに向ける顔は笑顔のままだった。
「どうでしょうか」
「ではワインを」
ハンナが出した酒はこの酒だった。
「赤で宜しいですね」
「それでは」
「今からやがて結ばれれることを約して」
「飲みましょう」
誓いの酒をというのだ、二人で話してだった。
そのうえで二人は実際に誓いの美酒、一つの杯に入れたその酒を交互に飲み合った。その後でだった。
久志はハンナに暫しの別れを告げて源三の家に帰った、すると三人はその久志を迎えて席に座らせてだった。
そのうえでだ、彼にワインを勧めつつ尋ねた。久志はここでもワインそれも同じ赤ワインを飲むことになった。
智がだ、久志の杯にそのワインを注ぎつつ彼に笑って言った。
「早かったな」
「ああ、そうだろうな」
「この時間ってことはな」
「振られてないよな」
「ああ、約束したよ」
「それだけなんだな」
「そうさ、しくじってな」
ここではだ、久志は真実を隠し嘘を述べた。
「それでな」
「そうか、はじめてはそうだな」
「やっぱりあれだな」
久志は笑ったままだ、智にこうも言った。
「どっかのお姉ちゃんとな」
「経験しておくべきだったか」
「今思うぜ、まあな」
「相手が見付かったからだな」
「もういいさ」
そうした店の女達はというのだ。
「これから行かないさ」
「そうか」
「それでこっちの世界の話だけれどな」
智が注いだ酒を飲みつつだ、久志はさらに話した。
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