夢幻水滸伝
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第十九話 四国上陸その十五
「民も慕いだしとる」
「このことを考えますと」
「負けかのう、わし等の」
こう言うのだった。
「もうな」
「では」
「下手に戦しても銭を失ってじゃ」
「国力も消耗し」
「田畑とか町とか巻き込む場合もあるしな」
「そうですね、この十河城も囲まれますと」
「どうしても城下町が焼かれたりする」
後で復興させるにしてもだ、この世界でも日本の城の周りには城下町があり城攻めの時には民達は安全な場所に逃れ後は戦見物に入るが城下町は城攻めに邪魔なので焼かれて戦の後で復興されるのが常だ。
だがその町を焼かれることもというのだ。
「それだけでやっぱりのう」
「戦禍になりますね」
「そうじゃ、最近は町には工場もあるし」
「戦禍も大きくなっています」
「そうじゃな、戦はないに限る、それにじゃ」
正岡はさらに言った。
「わしの第一の願いはじゃ」
「天下人になるのではなく」
「貿易で日本を豊かにすることぜよ」
「ひいては太平洋を」
「だからじゃ」
それでというのだ。
「戦にはあまり興味もないぜよ」
「それでは」
「姫巫女さんの器もわかったしのう」
「あの方ならばですね」
「無事にじゃ」
まさに万全にというのだ。
「天下を治められるわ」
「そうですね」
「民を大事に出来れば出来る程じゃ」
「天下人に相応しい」
「そうじゃ、わしはあそこまでいかんぜよ」
到底とだ、正岡は自身の器と綾乃の器を自分の中で見極めてそのうえで織田に対して話した。
「だからぜよ」
「これで、ですね」
「戦は終わりじゃ」
「我等が降り」
「それで終わりじゃ」
こう言ってだ、実際にだった。
正岡は十河城に向かっている関西の軍勢のところに自ら、織田も連れて来た。そうしてだった。
綾乃との面会を求めた、綾乃はその話を本陣で聞いてすぐに行った。
「降ってそしてやな」
「戦を終わらせてですね」
「そしてそのうえで田畑や町を守る」
「その考えですね」
「あの二人ならそう考えます」
空で巨体で飛んでいる八岐大蛇が言ってきた。
「そして自ら参上してです」
「そのことを言いに来たのでしょう」
「おそらく正岡氏の案ですね」
「そやろな、あの子器大きいさかい」
それでとだ、綾乃も応えて言った。
「それで来たんやろな」
「ではどうされますか」
「お会いになられますか」
「そうされますか」
「そうするわ」
即座にだ、綾乃は断を下した。
「二人と会ってね」
「そうして話をして」
「そのうえで」
「決めるわ、まあ大体決まったな」
綾乃は笑って大蛇に応えた。
「うちの読みやと」
「わしもそう思います」
「これで四国の戦は終わりですわ」
「四国全土の戦覚悟してましたけど」
「これで終わりですか」
「ええこっちゃ、やっぱり戦はすぐに終わるに限るわ」
その分国土や民に禍が降りかからないからだ、綾乃は勢力の棟梁としてこのことがいつも念頭にあるのだ。
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