シークレットガーデン~小さな箱庭~
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シレーナの封じた過去編-11-
最下層 シークレットガーデン
「……ここがシークレットガーデン」
クリスタルでできた木々に囲まれた様な感じの場所だ。
中心にはクリスタルでできた花のつぼみみたいなものがある…。色鮮やかに内部から光っていて綺麗だ。
「ご主人様!見とれている場合じゃありませんよ」
「へっ?あ、あぁそうだった」
「もうしっかりしてくださいまし」
「ごんめんなさい……」
パピコさんに怒られて気をしっかり持つ。
辺りを見渡すと……
「……いた」
『ガウッ グチャッ バクッ バクッ ウグッ』
「今は卵で言う殻の部分を食べているみたいです。時間はありませんよ」
「…うん」
ゆっくりゆっくり相手に近づいて行く……。十分に近づいたら
「はぁぁぁ!」
『グぐぐぐ……』
「まだです!」
「はぁーー!」
[やめてーー!!]
「えっ!?」
クリスタルのつぼみの中からシレーナが何かを訴えている…。
あれは幻?それとも……
[やめて…お願い…ルシア……]
「シレーナ…?」
『ガウウ…』
「ご主人様!」
「うわぁぁぁ!!」
シレーナに気を取られている隙に穢れが襲ってきた。
[……それは…その人は私のお母さんなの!]
「ま、まさか……」
[私のせいで…穢れになってしまった…お母さんは……私に復讐しにきたの……だから……殺させてあげて]
「なに…言って…」
[ルシアが…助けに来てくれた。嬉しかった…でも……死にたかった]
「う…く…」
『ガウッガウッ』
[私が…悪い子だから。ルシアにもみんなにも迷惑かけて……。だからお父さんは私を捨てて……]
「違う!!」
『グアアッ!?』
伝えなきゃっ!シレーナにお父さんの本当の想いを伝えてあげないとっ!
「君は勘違いしているんだ!」
[かん…ちがい…?]
「そうっ。君のお父さんは、君が悪い子だから、君を捨てたんじゃ、ないっ!」
[嘘…嘘だよ。ルシアは優しいから嘘ついて…]
「ううん。本当の事なんだ。これが証拠だよ」
第七階層でシレーナを探していた時に見つけた。お父さんが最期にシレーナへ書いた手紙を手渡した。
【シレーナへ
この手紙を君が見ている頃にはもう私はこの世にはいないだろう。
君を捨てた私を恨んでいるかい?いや優しい君はむしろ、自分が悪い子だからだと自分を責めて罪に苦しんでいるんだろうね。
ごめんな、本当の事を言えなくて…。
君のお母さん…私の妻、ユリアは闇病と呼ばれる心の病にかかっていたんだ。
急に言動がおかしくなったり人間不信に陥ったりするらし…。治し方は現医療技術すべてを用いても不明。
誰にも治せない不治の病。
ユリアが闇病で入院していると知ると、元医者の私はどうしても治してあげたかったんだ…。
でも闇病は感染症。まだこれからの未来ある君にまで感染してしまってはいけない。君の未来を奪う権利なんて誰にもない!
…と思った私はああする事しか出来なかった。
君を捨てた。君を助ける為であってもその事実は変わらない。
本当にすまなかった。許してほしいとは思わないよ。
ただ…どうか自分をもう責めないであげてほしい。自分を許してあげてほしい。
君は悪い子なんかじゃない。とても心優しい良い子なんだ。
シレーナ。君は私とユリアの大切な…大切な宝物だよ。
お父さんとお母さんは天から見守っています。どうか幸せになってください。
お元気で】
[お父さん……お父さん……]
「あの手紙にはそんな事が……」
「うん。ただ少し気持ちがすれ違っていただけなんだ。本当はみんなお互いを思っていたんだよ」
[うっ……うう……お父さん、お母さん……]
『ぐ……あぁぁぁ……』
「あっ穢れが…」
「闇が晴れて、浄化されてますね…」
「そっか…良かった」
「ご主人様」
「ん?」
「ご苦労様でした」
「ぁ…いや…」
「これをどうぞ」
「…ブレスレット?」
「用途はのちのちわかりますので♪」
「………ありがとう」
なんだろう…パピコさんの笑みが怖い…。
でもせっかく貰ったんだから身に着けておかないと悪いよね…?
だんだん意識が薄れていく。僕も元の世界に戻るんだ…。
プリンセシナ……初めはどんなところなのかわからなくて、不謹慎にもワクワクしていたけど、やっぱり人の心を見るのはあまり好い気はしないな…。
ここは二度とやるもんかっ!って言いたいところだけど。…また誰かが困っていたら助けに行きたいかないと。
――それが僕のヨナを助けるのともう一つの使命だと思うから
(-ルシアside-終)
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