八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百二十話 明けない夜はないその十三
「それで飲んでいくから」
「わかったわ、それじゃあね」
「六杯だね」
「飲むわよ、最低でも」
こう言って僕の倍の勢いで飲んでいく、小さな身体だけれどビールはどんどん入っていく。そして三杯からだ。
四杯五杯と飲む、それは井上さんもで。僕がお酒が回っていく中でも普通のお顔で六杯を飲み終わってだった。
ダオさんは笑ってだ、こう言った。
「飲んだわよ、六杯」
「私もだ」
井上さんもその六杯目を空けた、二人ほぼ同時だった。
「この通りだ」
「目標達成よ」
「僕は」
六杯目だ、けれど半分残っている。その半分を見つつ言った。
「これでね」
「その半分でなのね」
「終わりかな」
「だらしないわね」
「いや、というかね」
「晩御飯の時にワイン二本空けたし?」
「うん、それで六杯目だからね」
それでだった、本当に。
「もうこの半分でね」
「終わるの」
「そうなると思うよ」
自分の予想ではそうだ、正直ここまでよく飲んだと自分では思っている。
「限界だよ」
「義和も強いと思うけれどね」
「ダオさんと井上さんは」
僕が見たところだ。
「凄過ぎるよ」
「そう言うのね、けれどね」
「けれど?」
「気付いてるでしょ、ダオも沙耶香もね」
ダオさんは井上さんの席を見た、だが今は井上さんはいない。どうしていないのかをここで僕に話してきた。
「しょっちゅういなくなるでしょ」
「それはやっぱり」
「そう、ビールだからね」
「おトイレだね」
「もうしょっちゅうよ」
それこそというのだ。
「行ってるでしょ」
「そうだね、僕もだけれどね」
「義和以上によ、女の子は男の子より冷えやすいから」
だからだというのだ。
「ダオも行ってるし」
「井上さんだね」
「夏でもね」
よく汗をかくこの季節でもというのだ。
「ビールを飲むとそれだけでね」
「おトイレが近くなるよね」
「冬なんかもう」
それこそだ、暖かいお部屋の中で飲んでいてもだ。
「そう聞いてるわよ」
「あっ、ベトナムは暑い国だから」
「冬はないけれどね」
東南アジア全体がそうだ、赤道直下かその周りにあるのでとにかく暑い。冬がある筈もない場所にあるのだ。どの国も。
「そう言われたわ、クラスでね」
「そうなんだね」
「もう北欧の子なんか」
特に寒いこの国だとだ。
「飲んだらすぐによ」
「おトイレだね」
「よく飲むらしいけれどね」
何でもノルウェーはお酒を売っていないと聞いている、そうしたことが国の法律で決められているとのことだ。
「もう寒いから」
「すぐにおトイレに行くんだね」
「そうなるっていうから」
だからだというのだ。
ページ上へ戻る