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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百二十話 明けない夜はないその七

「そんな輩の本なぞ読むつもりもない」
「まあダオもそうよ」
「そうか」
「ベトナム嫌いでベトナムにいたら出て行けば、って思うわ」
「そうだな」
「そして好きな国で暮らせばってね」
「北朝鮮なりだな」
 井上さんはまたこの国の名前を出した、どうも井上さんは北朝鮮が嫌いらしい。考えてみればああした国を好きになる方が難しい。
「行って暮らせばいいな」
「あの地上の楽園よね」
「自称はな」
「じゃあ行っても暮らせるから」
 あの国の言う通りならだ、もっともあの国の言うことは下手な詐欺師の言葉以上に信じることは出来ないが。
「行けばいいわね」
「全くだな」
「本当にね」
「その通りだ、もっとも本当に行けばだ」
「死ぬわね」
「そうならない筈がない」
 北朝鮮がどんな国かは言うまでもない、とんでもない国だ。こんなことはそれこそ誰でも知っていることだ。
「必ずな」
「餓死か粛清?」
「そんなところだな」
「そうしたこと知ってて行かないのね」
「そうだろうな」
「確かに卑怯ね」
 ダオさんも厳しい顔で頷いた。
「そうした奴は」
「そして日本に害を為すしだ」
「そんなことまでするから」
「そのことも嫌いだ」
「北朝鮮とかのスパイかもね」
「そう思える奴も中にはいる」
「じゃあ余計にまずいじゃない」
 ダオさんはその顔を余計に顰めさせた、そのうえで言った。
「本当に」
「そう思うな」
「そういう連中さっさと捕まえないと」
「それが中々難しい」
「証拠とか?」
「そうだ、それに日本はスパイを捕まえる法律がだ」
 法律で動く国だ、法治国家ということだ。
「あるかあっても根拠が希薄でだ」
「中々なのね」
「逮捕出来ないのだ」
「それはまた厄介ね」
「全く以てな、しかし本当に日本が嫌いで居座るというのはだ」
「卑怯ね」
「本当にそう思う」
 こう言ってだ、井上さんは足を止めた。そのうえで僕達にあらためて言ってきた。
「着いた」
「あっ、そうですか」
「ここだ」
 露店の方を指差す、するともうビールやソーセージを楽しんでいる人達がいた。ジョッキで楽しそうに飲んでいる。
 その人達も観ながらだ、井上さんは僕とダオさんに微笑んで言ってきた。
「では飲むか」
「このお店でね」
「うむ、そうしよう」
「さて、大ジョッキでね」
 ダオさんは今から実に楽しみという顔で言った。
「どんどん飲むわよ」
「君もそうするな」 
 井上さんは僕にも顔を向けて微笑んで尋ねてきた。
「今から」
「はい、そうさせてもらいます」
「痛風は気にするな」
 これはというのだ。
「いいな」
「今はですね」
「君は酒好きだがビールは殆ど飲んでいない」 
 このことを指摘してきた。 
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