DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~
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歴史に名を刻む者
前書き
明日大会なのにこんな投稿してていいのかね?
いいね!!うん!!きっと大丈夫!!⬅何この自信
翌日・・・
ピンポーン
ここはとある場所にある大豪邸。そこのチャイムを押すと、中から私服姿の赤髪の少女が現れる。
「真姫ちゃん!!来たよ!!」
「見ればわかるわよ。早く入って」
昨日、練習試合を終えて学校に戻ったあと、試合の反省会を終えると、剛から「明日はお休み」と言われたため、試合中に思い付いた剛の高校時代を見てみようという企画を、真姫の家で行うことになった。
「それはそうと、にこと花陽はなぜそんなに大荷物なのですか?」
「ぬぁーに言ってるの!!剛さんの輝かしい歴史なら、にこたちが語るしかないでしょ!?」
「はい!!私たちが持ってる剛さんの高校時代のビデオを全部持ってきました!!」
自分たちと同じくらいあるのではないかというほど大きなリュックを背負っている二人の熱の入りように、質問した海未は圧されてしまう。
「それ全部剛さんのビデオなの?」
「というか、花陽ちゃんのキャラが変わってるような・・・」
「凛はこっちのかよちんも好きだよ!!」
野球のことになったら誰よりも熱い二人。そんな彼女たちがいてくれたので、今さら調査する必要がなくなったので感謝したい気持ちもあるが・・・
「まぁまぁ、今日は二人に色々教えてもらおう」
「そうね。まぁ、私は剛くんの試合なら何度も見てるけど」
暑苦しい気持ちが強くなっているが、希がうまくフォローしてくれて真姫の部屋へと入る。彼女の部屋に入りビデオの準備をしていると、真姫の母がおやつを持ってきてくれたが、いつもニコニコの彼女も二人の真剣な眼差しにそんな雰囲気ではないのかもと思い、そそくさと部屋を出ていった。
「じゃあ早速行くわよ。まずは東日本学園を語る上で絶ッッッ対に忘れていけないのがこの試合!!」
テレビを挟むように立つにこと花陽。にこがリモコンを操作すると、そこにはテレビでよく見られる黒土の野球場が映し出される。
「あ!!ここって甲子園だよね!?」
「あの全国の高校球児が憧れる聖地・・・ですか」
「わぁ!!お客さんがいっぱ~い!!」
まだ試合前らしく和やかな雰囲気の選手たち。その中に、坊主頭の見覚えのある人物が映る。
「あれが剛さんね」
「今より細いニャ!!」
「なんか初々しい感じの雰囲気やね」
「ぬぁーに言ってんよ!!」
若かりし頃の監督の姿に各々感想を述べていると、にこが大きな声を上げる。
「この頃の剛様は身長179cm、体重78kgです!!全然細くなんかないんですよ!!」
「ちなみに現在の剛さんは75kgだから今よりこの時の方が重たいわね」
「剛様?」
「にこちゃんはなんで今の体重を知ってるの?」
顔だけしか見ていなかったためわからなかったが、ベンチから出てくるとユニフォームの上からでもガッチリしているのがわかる。足にレッグガード、肘にはエルボーガードを付けて背番号10の少年と何やら話しているその姿を映しながら、解説者たちは試合の展望を語っていた。
「この試合は六年前・・・剛さんたちが二年生の時の夏の準決勝」
「相手は甲子園史上初の三季連続優勝がかかっている神奈川の強豪『山堂学園』よ」
「山堂学園なら聞いたことあるニャ!!」
「確かマニュアル野球を駆使して戦う絶対王者・・・だったはずよね?」
マニュアル野球・・・予め決められた戦術通りに戦うことで試合を優位に進め、相手を圧倒するそのスタイルは、まるでプロ野球のようとも言われており、強さに興奮するものと高校生らしさに欠けると嘆くものと大きく別れさせる。
「そう。しかもこの時は最強の世代とさえ言われていて、レギュラー陣にのちにプロに行く人がなんと5人!!投手は一年時からベンチに入っている三人を中心にローテーションを組んでいて、全員が完投能力を持っているわ」
「しかもこの試合の先発はエースの牧村!!甲子園での防御率は一点とまさしくこの世代最高の投手と言っても過言ではありません」
他にも捕手やクリンナップもプロで通用する逸材が数多くいるらしく、前評判だけでその強さが桁外れなことが理解できる。
「ちなみに東日本学園は?」
「もちろん東日本学園も強いです!!トップバッターの剛さんを筆頭に打率の高い打者たちが顔を揃え、エラーも少なくここまでわずか1!!」
「投手もすごいわよぉ。一年夏から登板経験がある背番号10の二年生、『プリンス』こと綺羅光。そして彼を遥かに上回る天才投手、この春からエースナンバーを背負っている同じく二年生、『神の子』こと佐藤孔明」
「佐藤孔明・・・」
その名前には、皆聞き覚えがあった。野球をやっているものもいないものも、この名前だけは聞いたことがあるというものも数多くいる。
「佐藤さんのことは聞いたことがあると思います。最多奪三振、連続奪三振、一試合最多本塁打記録、大会最多安代記録など多数の記録を塗り替えた人ですし」
「それより、『悲劇のヒーロー』として取り上げられることの方が多いけどね」
投手としても打者としても数々の記録を残し日本中を震撼させた彼は、三年の夏を最後に表舞台から姿を消した。その理由は、投げ過ぎによる肩と肘の故障。
「自らの体を犠牲にしてチームを甲子園制覇に導いた、東日本学園を伝説とまで言わしめる大きなキーとなったのが彼です」
「それと同時に、現在の打高投低と呼ばれる時代になったのも、彼が大きな要因と言われているわね」
打高投低・・・打者の力が投手を上回っており、比較的打撃戦になる場合に使われる言葉。佐藤の故障を受け、より継投やオーバーワーク撲滅等の対応を迫られた結果、打者の力に投手の力が及ばず、打ち合いになることが多くなってしまった高校野球。しかし、それは現在の高校野球を見直す上では良かったのかもしれないとの見方もあり、意見は様々だ。
「話を戻すわ。この試合は大方の予想だと山堂学園の方が圧倒的に格上ね」
「東日本学園は10年ぶりの甲子園、さらにはここに来てから佐藤さん一人で・・・しかも前日の準々決勝では延長13回まで戦っています」
「牧村をいかに打ち崩し、佐藤さんがどれだけ粘れるかが焦点になったこの試合ですが、東日本学園は試合前から早速仕掛けてきました」
整列が終え、出場メンバーが発表されるとバックスクリーンに両校の名前が映し出されているのが見える。そこで一時停止すると、東日本学園のオーダーに違和感を感じた。
「気付きましたか?東日本学園はエースで四番の佐藤さんをこの試合スタメンから外したんです」
「えぇ!?なんでぇ!?」
ここまで予選からすべての試合に出場していた佐藤を投手どころか野手としても外し、打順を繰り上げる形を取ったことに疑問を感じる穂乃果。その疑問をにこが語り出す。
「さっきも言った通り、佐藤さんはこの前日延長13回、159球の熱投だったわ。この年までは準決勝の前日に休養日がなくて、東日本学園は準々決勝から三連戦になる日程だったの。だからエースの佐藤さんを休ませる意味で外したのよ」
「でも、これじゃあ打力も下がっちゃうんじゃない?」
「確かに下がります。ですが、佐藤さんは守備が決してうまくありません」
「エラーをするリスクを払ってまで野手として残すのは得策じゃないと判断したのよ」
地区予選で彼はライトの守備でバンザイをしたらしく、強豪東日本学園で初めてバンザイをしたと衝撃を与えたらしく、監督も渋々ベンチに下げざるを得ない状態らしい。
「でも、この試合で先発の綺羅さんは中学時代日本代表として世界一に輝いていて、その時も剛さんバッテリーを組んでいました。投手としては佐藤さんに決して劣ることはありません」
「でも打線を変えたことで東日本学園は一点勝負の展開になるとみんな考えていたわ。ただ・・・」
整列、投球練習が終わり打席に入るバッター。
『一番、キャッチャー天王寺君』
左打席で投手に右腕を伸ばした後、バットを構えるかつての最強捕手。彼が果たしてどんな打撃を見せるのか、全員が食い入るように見つめる。
「東日本学園は毎年『攻めの野球』を行っています。ファーストストライクから積極的に打ちに行くことから、投手は容易にストライクを取りに行けず、かなり神経質になる傾向になります」
「でもこの山堂学園の牧村はすでにプロに通用するほど完成された投手。普段通りの戦い方では勝ち目は薄いと世間では言われていたわ」
牧村の球種は150kmを超えるストレート、フォーク、スライダー、シュート。どれも一級品であり、打ち崩すのは至難の技。
その投手をいかにして剛は打つのか、ますます興味がそそられる。
今では珍しくなった振りかぶっての投球。ゆったりとしたフォームから足が地面に着こうとしたその時、剛に動きがあった。
「「「「「あ!!」」」」」
思わず声が出た。初球から149kmのストレート。それに対し剛が繰り出した策はなんとセーフティバント。
コッ
三塁線にキレイに転がっていく打球。三塁手はそれに猛ダッシュで突進し、素早く一塁にジャンピングスロー。
『セーフ!!』
だが、一塁手が捕るよりも早くヘッドスライディングで飛び込んでいた剛はもちろんセーフの判定。楽々一塁を陥れたその姿に、呆然としている穂乃果たち。
「驚いた?相手の方が遥かに格上。ならばと初回の先頭バッターがセーフティを仕掛けてくる。しかも剛さんは50m5秒9。転がした場所もライン際ギリギリ、そして速度を落とすことないヘッドスライディング。まさしく完璧な初手と言えるわね」
これでノーアウト一塁。続くバッターはすでに送りバントの構え。当然ここはチャンスを広げるために定石を使ってくる。そう思っていたが・・・
「走ったわ!!」
「「「え!?」」」
カメラが切り替わる直前、絵里が剛が動き出したことに気付いた。クイックからスライダーを投じた牧村。捕手はそれを受けると崩れた姿勢から二塁に送球するが、剛はそれよりも先にベースへと到達し盗塁を決めていた。
「ここで盗塁・・・」
「しかも決まっちゃってるよ・・・」
セオリー度外視の戦法に言葉を失っていると、続く投球で動き出す直前、リードを取っていたランナーの頭が画面からいなくなる。
「また!?」
「さすがにそれは!!」
にこの話ではこの捕手もプロで高卒一年目から活躍する選手。その人物から二盗どころか三盗しようというのは無謀すぎる。そう思っても仕方はないが・・・
『セーフ!!天王寺三堂学園斉藤から本日二つ目の盗塁!!』
剛は三塁へ、それも二盗を決めた時よりも早く到達し盗塁を決めていた。
「剛さんは二盗よりも三盗の方が得意なの。一塁より二塁の方がリードを大きく取れるからね」
「それに剛様は三盗の時はフライング気味に走り出すんです!!セカンドショートが入るのに時間がかかる分それを行うことができるんです」
実際二盗はできないが三盗はできるものも多くいる。そんな解説を小耳に挟みつつ、少女たちは画面に集中している。
「この場面では何をするのが一番いいのでしょうか?」
「スクイズもありだけど、まだ初回やしね」
「もちろん三堂学園はスクイズも強打も考えているでしょうけど、何もよりも警戒しているのはホームスチールだと思いますよ」
「「「ホームスチール!?」」」
本塁への盗塁のことを指す言葉だが、通常それを警戒することはあり得ない。なぜならその作戦は、ほぼ確実に成功しないのだから。
「東日本学園はこの前日の準々決勝で東東京代表のUTXと対戦したの。この時のUTXのエースはプロ注目の最速151km左腕三村。そして東日本学園はエースの佐藤さんの二人の好投手の投げ合いは延長13回まで行ったわ。どちらのチームも打ち崩せずにいたんだけど、最後の最後で東日本学園は2アウト三塁を作った。そしてそこでホームスチールを敢行して見事に成功させたの」
「その得点が決勝点になって準決勝に進出したから、三堂学園は警戒せずにはいられないの」
二盗三盗と決めた上にそんな説明をされては気にせずにはいられない。一体どうやってこのチャンスを生かすのか、気になって仕方ない。
ホームスチールを警戒していることから牧村はセットポジションからの投球になる。ランナー三塁ではあるがクイックからの第三球。
カキーンッ
内角へのストレートを二番打者は弾き返し、レフト前へと運んだ。
「先取点・・・」
「それもたったの4球で・・・」
わずか数分の出来事。甲子園三連覇という前人未到の記録を達成すべく戦う王者を相手に、機動力を駆使した戦法で点数を奪い取った師匠の姿に、彼女たちはただただ見入っていることしかできなかった。
後書き
よくスポ根物である衝撃を受ける展開になってきている今回のお話。たぶんの次で衝撃を受ける回は終わりますかね。本当はもっと長々やりたいですけど(笑)
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