夢幻水滸伝
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第十七話 淡路合戦その十七
「一つ一つな」
「それでその中にはあたしもいるんだね」
「その通りだ、いいな」
「よし、思う存分暴れてやるか」
その時のことも考えてだ、玲子はここでも槍を見た。朱槍は銀色の強い光を放って玲子の手の中にある。
「待ち遠しいね」
「本当に楽しそうだな」
「戦、喧嘩はね」
そうしたものはとだ、玲子も即座に答えた。
「三度の飯と同じだけ好きさ」
「同じだけか」
「以上じゃないさ」
あくまで飯は越えないというのだ。
「腹が減っては戦が出来ないしな」
「だから飯以上にはか」
「好きじゃないさ」
そこまでは至らないとだ、玲子はまた話した。
「あくまでな」
「飯と同じだけか」
「あと酒もな」
これもとだ、玲子は笑って言った。
「大好きだぜ」
「こちらの世界では毎晩飲んでるな」
「昼でも暇だとな」
その時はというのだ。
「飲んでるさ」
「昼から酒か」
「だからあたしは不便者なんだよ」
悪びれずに言う。
「政なんてからっきしでな、茶飲んで和歌もして面白い本を読んでな
「稽古もだな」
「そんなのは馬に乗って喧嘩して槍振ることだろ」
まるで日常生活の様に言うのだった。
「いつもだからな」
「だからか」
「そうだよ、稽古はしてないさ」
「そういうことか」
「飯と酒と喧嘩と戦だよ」
「君が好きなものか」
「それでその戦をな」
それはというのだ。
「今からやろうかい」
「そろそろ見える」
敵軍がとだ、吉川は今は己の目で海とそこに現れるものを見ていた。真珠の色だが強く鋭い光を放つその目で。
第十七話 完
2017・5・9
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