DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~
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認められないわぁ
前書き
今回のサブタイに悪意を感じる人!!挙手(^^)/ハイッ
その日、穂乃果たちはなんとか学校から一番近い河川敷の硬式野球ができるグラウンドを借り、あと少しのところまで来た部員数で練習に励んでいた。
「行くぞ、矢澤」
「はい!!」
ショートを守っている少女に向かってノックを打つ天王寺。際どいその当たりに対し、にこは逆シングルで捌くと、左足で地面を蹴り、ジャンピングスローをする。
パシッ
「アウトですね、これは」
ファーストを守っている海未が自分の胸元に投げ込まれたボールを受け驚きを押さえつつそう言う。
「すごい!!にこちゃ・・・にこ先輩ってどこでも守れるんですね!!」
「まるでプロみたいニャ!!」
先程からノックをずっと行っているが、にこはどのポジションもそつなくこなしており、守備の名手であることが伺える。
「じゃあ次、西木野!!」
「いいわよ!!」
続いてレフトを守っている真姫にフライを打ち上げる。真姫はそのボールを見ながら落下点へと向かい、足を止める。
ポトンッ
だが、ボールが落ちたのは彼女がいた場所よりもさらに後方だった。
「「「「「・・・」」」」」
「な!!何か言いなさいよ!!」
恥ずかしさに顔を真っ赤に染めながら、叫ぶ真姫。にこが名手だとしたら、真姫はその真逆。全く守備が出来ないタイプの選手だった。
「真姫ちゃんバッティングはすごいのに・・・」
「守備は全然ダメみたいですね・・・」
穂乃果と花陽が何とも言えないような表情でそう言い、ことりが苦笑いを浮かべる。
「たまにいるんだよ、バッティングは思いきりがいいからいくらでもできるけど、守備は苦手なやつが」
よく小中学生で見られるのだが、あまり運動神経が良くないため、瞬間的な判断要素の多い守備はからっきしできないが、あらかじめある程度の準備ができるバッティングは得意とする選手がいることがある。真姫の場合、思いきりがいいことも幸いしバッティングはまさしくスラッガーだが、頭がいい分あらゆる事態を想像してしまい、守備面は全然ダメになってしまっている。
「まぁ、野球は経験だ。守備も慣れればできるようになるよ」
能天気というか、当たり前というか、そんなことを言う青年に対しちょっと不安げな表情を浮かべる面々。
「ちなみに東日本学園にもそう言う人いましたか?」
「いるわけないでしょ!?天王寺先生の時の東日本学園は最強だったんだから!!」
昨日にこと花陽から天王寺の出身校を聞かされた穂乃果たちは、そんなすごい人だったことに驚き、感動した。彼に教えてもらえれば、きっと全国制覇し、廃校を阻止できると希望を持つことができた。
「いたよ、一人だけだけど」
「「え!?」」
その言葉に信じられないといった花陽とにこが駆け寄ってくる。二人は全国制覇を実際に経験した野球名門校にそんな人物がいたことが信じられなかった。
「その人はどこやってたんですか!?」
「控えだったんですよね!?」
東日本学園は三人の特S推薦と五人の特A推薦、さらには七人の声をかけられた選手たちが基本的な主力選手になる。
その中に一般入試からセレクションを受け、監督が将来性があると判断された選手に一般入試組として五人入部することができる。それほどまでのチームに、そんな人物がいるのはにわかに信じられないが・・・
「いや、レギュラーだよ?本職はピッチャーだけど、めっちゃ練習して最後の夏は外野に入ったよ」
それを聞いた穂乃果やことりは、かなり嬉しそうだった。自分たちも頑張れば、うまくなっていける可能性が十分あることがわかったからだ。
「その人ってもしかして・・・」
「あぁ、あいつだよ」
野球ファンである二人は天王寺が指している人物が誰なのかわかった瞬間、気まずそうに押し黙った。その理由がわからない他のメンバーたちは、顔を見合わせる。
「さて、そろそろ次のメニューをやろうか。時間も限られてるしな」
「「「「「はい!!」」」」」
重たい空気を振り払うべく、ノックバットをベンチに置きに行く天王寺。その姿を見送りながら、穂乃果は二人に小さな声で質問をぶつけた。
「ねぇ、その人ってどんな人なの?」
「何かあったのかニャ?」
「えぇ・・・ちょっとね・・・」
「あんまり聞かないで・・・」
何やら触れてはいけないことだとようやく理解した穂乃果たちは、今後はこの話に触れないようにしようと暗黙の了解にすることにした。
「さて、それじゃあこれからテストをするぞ」
「えぇ!?何の!?」
「凛!!英語のテストは勘弁してほしいニャ!!」
そこに現役時代使用していたキャッチャーミットを持ってやってきた天王寺のセリフに顔を真っ青にする穂乃果と凛。だが、こんなところまで来て勉強するはずないとわかっていた海未たちは、二人を冷静に宥めていた。
「これからやるのはピッチャーのテストだよ。英語は明日職員室でやってやるから」
「「そんなぁ!?」」
軽い冗談のつもりだったが、二人が絶望したような顔になっているのでこの話題には触れないようにしよっと切り替える。彼はまだ新しいボールを手に取ると、指で数回弾いてみせる。
「まだ人数も揃ってないけど、できる限りポジションは決めていかないと間に合わない。特にピッチャーは重要だからな。早めに決めておかないと間に合わないかもしれない」
今は四月の下旬だが、夏の大会は七月の上旬から始まる。わずか3ヶ月足らずで勝てるチームに仕上げるには、投手の力は必要不可欠だ。
「今から一人ずつ投げてもらう。俺が受けてピッチャー向きな奴等を選ぶから」
「わぁ!!天王寺先生に受けてもらえるんですか!?感激です!!」
「一生の思い出に動画録らなきゃ!!」
「こんなのを一生の思い出にするな!!」
どうせならもっと勝ち進んでいったところを一生の思い出にしてほしいと思った彼は、興奮して周りを置き去りにしている二人を放っておいて、早速テストに入る。
「じゃあ、早速投げてみてくれ。まず高坂から」
「はい!!」
返事をした少女はマウンドに向かうと、すぐさま軽い肩慣らしを行い、テストに入る。
「行きま~す!!」
大きく振りかぶり、力一杯ボールを投げ込む。だが、それは天王寺の構えたところから大きく外れており、慌ててボールを押さえていた。
「す!!すみません!!」
「いいから、気にせず投げろ」
その後も何球か投げてみるが、どれもゾーンに入ることなく終わってしまう。
「・・・」
あまりのノーコンぶりに言葉を失っている天王寺だったが、彼は誰にも気付かれないほどの小さな笑みを浮かべる。
「よし、じゃあ次、南」
「はい!!」
続いてことりがマウンドに上がり、テストを受ける。だが、ことりは力が足りないのか、どれも山なりのボールになっており、ストライクはおろか、キャッチャーにノーバウンドで届くこともなかった。
「うぅ・・・ダメだったよ・・・」
「大丈夫!!アイドルみたいで可愛かったよ!!」
「それは大丈夫とはいいませんよ」
フォローになっていない穂乃果の言葉に呆れつつ、海未が次なるマウンドに立つ。
「やっぱり本命はあの子よね」
「海未ちゃん運動神経いいもんね!!」
「きっとすごいボールを投げるはずニャ!!」
海未はこれまで弓道部に入っており、日頃から体を鍛えてきていた。ゆえに一番の期待が持てる。
「行きます!!」
足を大きく上げ、腕を目一杯伸ばしたテイクバックからボールを放つ。そのボールは他の二人よりも遥かに速く、天王寺のミットに吸い込まれた。
「わぁ!!やっぱり速い!!」
「さすがです!!海未先輩!!」
「やっぱり海未ちゃんがエースかなぁ?」
海未のストレートに文句なしの様子の面々。だが、受けた天王寺の表情は一切変わらず、険しいものだった。
「はい、今日はここまでだな」
「「「「「お疲れ様でした!!」」」」」
その後、一通りテストが終わると、丁度グラウンドを借りている時間も終わりに差し掛かったこともあり、整備をした後ベンチの前に集める。
「それでそれで?誰がピッチャーになったんだニャ?」
「凛ちゃん、そんな口の聞き方したらダメだよ」
皆気になっているのは、先程のテストの結果。ピッチャーは野球の花形と言われており、やりたがるものが多数いる。しかし、それゆえに選ぶ側は慎重な判断が求められる。
「とりあえず二人は確定した。が、その前に・・・」
天王寺はおもむろに自身が持っていたミットを取り出すと、全員に視線を向ける。
「その相方となるキャッチャーを発表しようかな」
「「「「「!!」」」」」
何の前触れもなく天王寺の口から言われたその言葉に衝撃を受ける生徒たち。驚いた彼女たちの中で、いち早く冷静を取り戻したツインテールの少女が手を挙げる。
「待ってください。キャッチャーを発表するって、もう決まってるんですか?」
「あぁ」
そう言って天王寺はキャッチャーミットをある人物に差し出す。その人物はというと・・・
「え?私ですか!?」
野球部の発起人、高坂穂乃果だった。
「あぁ、よろしく」
「でも私、キャッチャーなんかわからないし・・・」
「大丈夫大丈夫、俺がしっかり教えるから」
「でも・・・」
いきなりの大役抜擢にあたふたしている穂乃果を宥めている天王寺。その姿を、訝しげな目で見ている二人の少女。
((キャッチャーの重要性をよくわかっている天王寺先生が、なんで穂乃果をキャッチャーに?))
ずっとキャッチャーだったからこそ、天王寺はそのポジションの重要性を理解している。フィールドの司令塔とも呼ばれているそのポジションに、まだ始めて間もない人物を置くことなど、普通に考えておかしいとにこと花陽は考えていた。
「さて、それじゃあひとまず決まったピッチャー二人w「わぁ!!天王寺さんだ!!」」
いよいよチームの命運を握る投手の発表に入ろうとしたその時、突然グラウンドの外からそんな声が聞こえ、そちらを振り向くと、天王寺目掛けて走ってきている金髪の少女が目に入った。
「お久しぶりです!!天王寺さん!!」
「亜里沙ちゃんか、久しぶりだね」
その少女はかつて天王寺が西木野病院で遭遇した、野球少女だった。
「すごい!!こんなところでまた会えるなんて!!」
大興奮の少女を見た穂乃果たちは、ここでやっと本当に天王寺がすごい人だったのだということを認識する。
「亜里沙ぁ!!勝手にグラウンドに入っていっちゃダメで・・・」
しばらく興奮している少女を落ち着かせようとしていると、そこに保護者と思われる金髪のポニーテールの少女と紫がかった髪を二つにまとめた少女が現れ、その場にいる全員が固まった。
「生徒会長」
「と、副会長」
亜里沙を注意しにその場にやって来たのは、音ノ木坂の生徒会長絢瀬絵里と副会長東條希だった。
「お姉ちゃん!!天王寺さんだよ!!やっぱり格好いいよね!!」
「え・・・えぇ」
気まずい雰囲気の一同とは対照的に一人大盛り上がりの亜里沙を、希が手を引き少し距離を置く。重苦しい雰囲気になった中、真っ先に青年が口を開いた。
「君だったのか、亜里沙ちゃんのお姉ちゃんって」
病院で彼女から、姉と同じシニアに入ったと聞いていた天王寺は、それが絵里だったことに少々驚いている。彼はなおも黙っている少女に、ある問いをぶつけた。
「そんな君が、なんで野球を拒むんだ?」
シニアに入ってまで野球をしてきたその少女が、なぜ高校で野球を行わず、ましてやその部活を設立しようとしている少女たちの邪魔をするのか、彼にはわからなかった。
「先生はいいですね、まだこうして野球に携われて」
「何?」
攻撃的な口調に思わず目を細める。そんな彼に、少女は冷酷な目でこう言い放った。
「私にはできません、人にケガを負わせても野球を続けることなんか」
「「「「「!?」」」」」
その言葉がどう言うことなのか、穂乃果たちは理解が追い付かずただ唖然としている。しかし、天王寺はすぐにわかった。彼女が亜里沙に打球をぶつけ、ケガをさせてしまったのだと。
「勘違いしないでほしい。俺はあいつにケガさせたからこそ、野球をやめるわけにはいかないんだ」
「そういう考えもいいんじゃないでしょうか?私は認められませんけど」
そう言ってグラウンドを後にしようとする絵里に、穂乃果が待ったをかける。
「あなたが野球をやらないことを、亜里沙ちゃんは望んでいるんですか!?」
「・・・あなたたちに関係ないわ」
妹の気持ちがどうなのか、彼女はよくわかっていた。しかし、それでも自分を許せない絵里は、こうする以外に道が思い浮かばなかった。
「なぁ、絢瀬。一勝負してみないか?」
「何ですって?」
野球に未練があるように感じ取った天王寺はある提案を仕掛けてみた。
「今度の日曜日、ここのグラウンドを午前中借りてるんだ。そこで三打席勝負をしよう。君はバッターらしいから、こっちは一打席一投手出す。全ての打席で抑えたら、君に野球部に入ってもらうよ」
「私が勝ったら、野球部にはここで解散してもらいますけど、いいですか?」
天王寺は後ろにいる少女たちに視線を向ける。それを受け、全員を代表し穂乃果が前に立った。
「わかりました。それでいいです」
ここまで来た以上やるしかないと腹を決めた少女たち。それを遠目で見ている希と亜里沙が、不安そうにしていた。
「じゃあ、日曜日に」
「よろしく」
こうして、野球部の運命を決める戦いが、幕を開けることになった。
後書き
こんな勝手な教師でいいのか!!とか思いながら書いていた今回のお話。
次は絵里vs音ノ木坂野球部です。そろそろ部員全員揃うかな?
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