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とある3年4組の卑怯者

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9 空気杖球(エアホッケー)

 
前書き
 まる子とその祖父、みどりとその祖父と共にデパートに行くことになった藤木。そんな時、みどりのクラスメイトと遭遇し、みどりをいじめるその2人組の男子に藤木がキレた!! 

 
「よってたかって女の子を馬鹿にして泣かすなんて君達は卑怯だぞ!!」
 藤木はみどりをからかう男子2人に自身の汚名を浴びせた。2人組の男子は驚いた。まる子も、みどりも、それを見ていたまる子の祖父も、みどりの祖父も。
「何だお前は?」
「僕達はみどりちゃんの友達だ。ここで何をしたって別に君達には関係ないだろう?」
 藤木は自分でも何を言っているんだと思いながらもみどりを庇おうとした。
(藤木さん・・・)
 みどりは照れていた。
「へえ、こいつを庇うってことはお前もしかして吉川のこと好きなんじゃないのか?」
 藤木は顔が赤くなり、ぎくっと背筋が凍り付いた。
「う、そんなことはどうでもいい!とにかく君達はしつこいぞ!」
「そうだね、行こう、みどりちゃん」
 藤木は去ろうとした。まる子もみどりを連れてその場を去ろうとする。
「おい、待てよ。逃げるのか?人を卑怯と言っておきながら言いたいこと言って去るのか?お前も卑怯じゃないか」
 一人の男子が皆の後ろ姿を見て文句を言った。藤木が自分の代名詞でもある「卑怯」という言葉を言われて動揺する。
「じゃ、じゃあ、どうしろと言うんだい?」
「そうだな・・・。あのエアホッケーで勝負しようじゃないか。お前らが勝ったら俺たちはもう吉川をからかわないと誓ってやる。ただしお前が負けたら、お前が俺たちに何かおごれ!」
(どうする、大変なことになってしまったな・・・、でもここで逃げたら僕は本当の卑怯者だ。なら、卑怯じゃないとこ見せてやるまでだ!)
「わかった、いいとも」
 藤木は承知した。
「藤木、私もやるよ」
 まる子も参戦しようとした。しかし、みどりがまる子を制止しようとする。
「いえ、まる子さん、ここは私が行きます」
「みどりちゃん!?」
「藤木さんが私を庇ってくれましたし、それにこれは私自身の問題ですから・・・」
「そうか、藤木、あんた最後までみどりちゃんを守るんだよ!負けたら承知しないよ!」
「あ、うん・・・、分かったよ」
 そしてその様子を見ていたまる子の祖父とみどりの祖父がお互いを向き合った。
「やれやれ、困りましたな、吉川さん」
「ええ、こうなったら私たちも応援するしかありませんね」
 まる子の祖父が動く。
「ならわしが審判をやろう。ゲーム代はわしが出してあげるよ」
「サンキュー、じいさん」
「ふん、俺達が勝つもんねー!」
 藤木とみどりは挑発に乗った。
「臨むところだ!」
(藤木さんと愛のコンビ、絶対に負けられない!)
 みどりは藤木とゲームできる事に喜びを感じていた。

 こうしてみどりのクラスメイトの男子2名のペアと藤木・みどりのペアのダブル対決となった。
「この10分でどっちかが先に15点取るか、でなきゃ制限時間で多く点を取った方が勝ちだ。いいな?」
「ああ、もちろん」
 こうしてゲームが開始した。
 台の真ん中に設置しているパックの口からパックが現れた。藤木がマレットで弾こうとする。が、相手のマレットが先だった。そのスマッシュにみどりは追いつけず、先制された。
「ふん、こりゃ楽勝だな」
「まだ勝負はこれからだ!」
 次のパックが出てきた。が、また先を越された。しかし、今度は藤木は守りに着くことを考えてゴールを何とか回避した。それをみどりが相手のゴールへと弾こうとする。しかし、簡単に守られた。
 みどりがもう一度狙う。が、これも失敗。そのパックを打ち返される。2点目を取られた。みどりが涙目になった。
「みどりちゃん、泣くなよ。泣くならこれが終わってからにしてくれ。あきらめちゃダメだ!」
「藤木さん・・・はい!」
 その時藤木はどうすれば勝てるか考えた。
(そうだ、身長は僕の方が高い・・・)
 パックが出てきた。藤木は先手を取るために腕を伸ばし、思いっきり背中を倒した。成功した。パックは弾かれた勢いでテーブルの端にぶつかり、さらなる勢いで相手のゴールを襲った。
 1点を返した。
「すごい、藤木さん」
 みどりは見とれた。次のパックは先に取られたが、上手くゴールを守り抜き、2点目を入れ、同点とした。
 次は藤木が先制したが、ブロックされ、激しい攻守の中、相手に3点目を許してしまった。
 そして、次は相手に先制され、相手のスマッシュが勢いよくゴールへと入りそうになる。みどりは必死にそれを弾いた。それを大きく端にあたり、もう片方の相手が必死に弾き返そうとするもマレットに当たっただけでゴールに入って再び同点となった。
 藤木とみどりの息が次第に会ってきていると、観戦しているまる子は思った。
 次は藤木のスマッシュでついに藤木・みどり側が4点目と勝ち越した。
 相手に焦りが見えてきた。次は相手も先制しようと焦って、先にみどりのマレットがパックを横に逸らした。これが藤木へのパスにつながり、辛うじてもう片方の男子が最初はゴールはブロックできたものの、藤木2回目のスマッシュで5点目を献上した。
 次は相手の得点を許したが、その次は藤木の強力なスマッシュがゴールを命中。さらにその次はみどりがゴールを決めた。
 藤木・みどりペアの怒涛の勢いで8点目、9点目を挙げた。残り時間が半分を切った。
 次はみどりのミスで相手チームの5点目を挙げてしまった。
「ごめんなさい、藤木さん」
「いいよ、まだ勝ってるんだから」
「はい」
 このときの藤木がまる子には頼もしく見えた。
 藤木は長身を活かしてパックを奪い、相手に渡すまいとそれをみどりにパスした。それをみどりが相手ゴールに向かって弾く。が、ブロックされる。いただきと相手は思ったが、これもまた藤木が受けとめ、相手のゴールに入り、10点目が入った。
 次は藤木のスマッシュを弾いたところでみどりの追撃で11点目を入れる。そして次は相手のゴールを献上するも、そのまた次は藤木の攻撃で12点目を陥れることに成功した。
(・・・あと3点取れば勝てる!)
 藤木はかなり熱くなっていた。
(藤木、今のアンタは全然卑怯じゃないよ)
 まる子はそう思いながら観戦していた。
 次は敵に7点目を献上してしまった。だが、藤木もみどりも取られたゴールを気にすることはなく、寧ろ先を見ていた。
 藤木がパックを奪い取る。が、辛うじて奪ったためにスマッシュに勢いがなく、簡単に弾き返された。藤木がそれを素早く受け止める。そしてゴールへと突っ込んだ。またブロックされる。が、みどりもまたゴールを阻止して迎撃に成功、13点目を挙げた。
「あと2分じゃ!」
 審判役のまる子の祖父が告げた。
 残り時間が2分を切る。13対7とリードを広げる結果にはなっているが、藤木は何とか逃げ切らなければと考えていた。
 藤木が先制に成功。端にぶつけて相手のゴールを狙う方法で14点目。あと1点となった。
「くっそ、おい、やべえぞ」
「一気に8点取るしかねえな」
「やれるもんならやってみろ」
 相手も巻き返そうとする。その勢いに押されたのか、8点目、9点目と許し、点差を5点に縮められた。
「藤木さん・・・」
「あと1点取って、このままゴールを守り抜けばいいんだ。その気持ちがあればきっとできる!」
「はい!」
 みどりは藤木が言った勝つ方法2つのことのみを考えるようにした。次のパック、相手に先制を取られたがみどりが必死に守った。パックが相手の陣地に渡り、そのスマッシュで藤木たちのゴールが襲われる・・・。が、それを藤木が見事にブロック。それを相手の方に打ち返す。このままでは不利だ、と藤木は感じた。その時、さらに打ち返されたパックをみどりがまた打ち返す。さらに打ち返したパックがさらなる勢いで端に当たり、相手のゴールにめがける。

 相手は弾き返しに失敗した。みどりのカウンター・スマッシュが決着を着けるゴールを決めた。
「うむ、この試合、藤木君・みどりちゃんペアの勝ちじゃ!」
「やったね、みどりちゃん!」
「はい、藤木さんのおかげです!」
「いや、みどりちゃんが最後を決めてくれたんだよ」
「くそ!俺たちが負けるなんて」
「絶対マグレだ!」
「マグレでも結果は結果だよ」
 藤木が勝ち誇った笑顔で言う。そして威勢よくこう言った。
「約束だ。もう二度とみどりちゃんをからかわないと誓うか!?」
「分かったよ。誓うよ。覚えてろっ!」
 気に食わぬ顔してみどりのクラスメイトたちはその場を去った。
「やったね、みどりちゃん、藤木!」
 まる子が賞賛した。同じく見ていたみどりの祖父も二人の活躍を喜んでいた。
「藤木君、かっこよかったよ。みどり、いい友達を持ったじゃないか」
「はい、おじいちゃん」
 藤木は自分の手でみどりを守ったんだなと、改めて感じた。
「藤木、アンタやるじゃん。今のアンタはヒーローだよ!」
「え!?ありがとう、さくら・・・」
 まる子が藤木の背中を叩いて褒めた。
「ふう、真剣になってお腹が空きました」
「なら上の階のレストランに行こうかの」
 まる子の祖父が提案した。
「賛成!」
 まる子が元気よく言った。こうして一行は6階のレストランへと向かった。 
 

 
後書き
次回:「土産」
 デパートを満喫した藤木は翌日、リリィと笹山にお土産を渡そうとする。その時、二人が示す反応はいかなるものなのか・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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