八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百十八話 大浦天主堂その十六
「その中で生きていったのでしょう」
「悲しいことですね」
「そうですね、物語ですが」
「不思議なことに」
本当にだ、僕自身思うことだが。
「実際にいる人みたいですね、蝶々さんは」
「そう思えますね」
「いた、ですね」
ここで僕は自分の言葉を訂正もした。
「そうなりますね」
「そうですね、過去のことですから」
「明治の頃ですから」
大体一八九〇年位の話と設定されているらしい。
「そうなりますね」
「そうですね、ですが実際にあの頃の日本では」
「蝶々さんみたいな人もいたかも知れない」
「実際に海外に行かれた人もおられるとか」
「あっ、そのお話は」
「聞かれたことがありますか」
「からゆきさんですね」
昔ジャパゆきさんという言葉があったらしいがこの言葉がもとらしい。
「確か」
「そうです、そうした方々が本当におられたので」
「蝶々さんもですか」
「本当にあったお話としてもです」
「有り得たんですね」
「そうでした」
「そうですか、じゃあ本当に」
僕はまた天主堂の中を見回した、今度は目だけで。
「蝶々さんもお子さんも」
「ここに、ですね」
「来られていたかも知れないですね」
「蝶々さんの様な方が」
「そうなんですね」
そう思うと不思議な気持ちだった、その気持ちのままだ。
僕達は天主堂の中も見た、そうして僕達は天主堂の中を後にした。それから外もよく観て回ることにした。
第百十八話 完
2016・12・1
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