八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百十八話 大浦天主堂その十四
「親父のそうしたところが出ているんですね」
「そうでしょう」
「ああした破天荒さでも」
本当に守るべきところは守っている、イタリアでも教会では至って紳士なのだろう。シスターの人達にも礼儀正しくて。
「守るべきものを守っていれば」
「いいかと」
「そしてそれが粋ですか」
「そうなると思います」
「醜くはないですからね」
親父はだ、どうかという部分は多いけれど決してそんな人間じゃない。
「何でいいますか恥を知っていて」
「そして弁えることは弁えていて」
「しっかりしたものはありますね」
「それならいいかと」
「そうなりますね、では義和さんも」
「そうしたことは守ってですね」
「やっていきましょう」
僕に顔を向けて微笑んで話してくれた。
「これからも」
「そうですね、しかし」
「しかし?」
「ここは何度観ても奇麗ですね」
裕子さんも天主堂の中を観ていた、そうしてにこりと笑ってそのうえでこんなことを言った。
「絵を描きたくもなります」
「絵ですか」
「それを。ただ」
「裕子さん絵は」
「実は自信がないです」
すぐに困った、寂しい感じの顔になった。そのうえでの言葉だった。
「どうしても」
「そういえば描かれたことないですね」
「そうです」
「絵ですか」
考えてみればだ、裕子さんも早百合さんも絵についてお話したことはなかった。他のことは色々お話出来ても。
「そちらはどうもですか」
「昔からです」
「私なぞはです」
早百合さんも苦笑いと共にだ、僕に話してきた。
「絵の具の使い方が苦手で」
「絵の具の」
「よく混ぜてしまって変な色にしてしまいます」
「絵の具はそうですね」
このことは美術の授業で習った、中学の時に。
「あまり混ぜると」
「色が変に濃くなっていきますね」
「それで変な色になりますね」
「黒ともそうした色でもない」
「変な色にですね」
「なりますね」
「そうした色にしてしまうんですね」
僕も早百合さんの言うことを理解して応えた。
「そうなんですね」
「残念なことに」
「そうですか」
「絵の具はそうなってしまって光は」
それはだった、僕は天主堂の中のステンドガラスの赤や青や黄色、そして緑のそうした光を観て言った。ステンドガラスは太陽の光をそうするからとても神々しい。そこに神の存在さえ感じさせてくれる程。天井のガラスはアーチ型で緑のものが多く青と白のものもある。
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