八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百十八話 大浦天主堂その十三
「私も」
「そうだったのですか」
「仏教なので」
お家がというのだ。
「ですから」
「キリスト教の式典にはですね」
「出たことがありません」
「そうだったんですね」
「はい、一度も」
「そういえば僕も」
かく言う僕自身もだ、僕はおろか八条家の人は皆そうだが天理教だ。おみちの人と天理教では言っている。
「一度も」
「そうですか」
「親父も教会にはたまにですね」
「行かれる位ですか」
「はい、ただ教会に行っても」
それでもだ。
「シスターさん口説いたりしませんね」
「そうしたことはされないのですか」
「尼僧さんも巫女さんもです」
お寺や神社の人もだ。
「そうした場所は女の子は忘れるものだって言ってます」
「それも筋ですか」
「筋っていうか粋だって言ってます」
僕にそうしない理由を話してくれた時にこう言った、実際に。
「そうしたものだって」
「そうですか」
「一歩出たら美人さん見たら声をかけますが」
本当に敷地内を一歩でもだ。
「それでもなんです」
「そこはですか」
「しないです」
敷地内にいる限りはだ。
「あとそうした役職の人達には声をかけない」
「それもですね」
「粋だって」
「そう言われてですか」
「実際にしないです」
見境がない筈の親父がだ。
「僕が見ていても」
「神にお仕えしている人には」
「しないって言ってです」
本当にしない、人妻さんや彼氏がいる人だけでなくそうした人にも声をかけたりしないのが親父の遊びだ。
「しないですから」
「やはり立派な方ですね」
「そうなりますかね」
「やはり神仏にお仕えしている方にそうした気持ちで声をかけることは」
「よくありませんね」
「褒められたことではありません」
こう僕に言った。
「シスターの方もです」
「神仏に仕える人は」
「そこをわかっているのならです」
「親父はいいんですね」
「そう思います」
「まあああした親父にしても」
言われてみればだ、確かに。
「人の道は弁えてるってことですね」
「そうなるかと」
「こうしたことでも」
僕は天主堂の中を見回しつつ裕子さんに応えた。
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