ハイスクールD×D/EXTELLA
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月光校庭のエクスカリバー
幼馴染登場
棟夜side
・・・おはよう。神咲棟夜だ。
いきなりの質問だが、寝ている間に困ったことが起こること。1つや2つあるよな? 例を挙げるなら、目覚まし時計が鳴らず遅刻した。あるいは寝相が悪くベッドから転げ落ちた・・・他にもいろいろあるだろうが、俺の場合、それを超える出来事が起こっていた。
「うぅん・・・」
耳元に艶かしい声が響く。しかもかなり近く。
ゆっくりと視線を隣に移すと、そこには長髪の紅色をした女性リアス・グレモリーだ。駒王学園の三年。俺の先輩に当たる人だが、実は上級悪魔の時期当主だ。
先日から家に強引に住むことになり、一緒に生活を送っている。
俺の記憶が正しければ、昨日は自分の部屋で寝てはずだ。いつのまに潜り込んだのやら・・・そして床には黒歌と小猫にアーシアが寝ていた。
・・・おそらくだが、3人を何らかの魔術で眠らせて、床に置いたか。
そして一番の極めつけは・・・リアスが裸だということだ! 可笑しくねぇか? 何で寝るのに裸なんだ?・・・もしかして悪魔の女性はみんなそうなのか? よく分からん。
しかも俺の半身に抱きついて寝てるから色々ヤバいんだよ!!
何だか甘い匂いがするし、左腕には完全に胸が密着し手がモモの間に挟まれている! ヤバい! 実にヤバい! 理性は保てるのだが、この状況を黒歌たちに見られれば確実に面倒くさいことになる。
動こうにも微動しただけで・・・。
「んっ」
って声を漏らすから動きたくても動けねぇぇぇんだよ!!
一誠が見たら煩いだろうなぁ。
「・・・あら、起きていたの?」
ドッキーン!
「り、リアスも起きてたのか? それと、こ、この状況はいったい」
「ゴメンなさいね。トーヤを抱き枕にして寝たい気分だったのよ。あなたが就寝して、頃合を見計らって3人を眠らせてからベッドにお邪魔したの」
俺を抱き枕にすんなら抱き枕を購入しろよ! まったく理解できん!
「あ、あのさ。今日は学校だからそろそろ起きないといけないんだが・・・」
ゆっくりと体を起こし、左手を抜こうとしたが。
「待って」
肩を押され、倒れたところにリアスが上に乗り出した・・・ってうぉい!
「ふふ。服越しでも逞しい体ね・・・どうしましょうか? このまま何時ものトレーニングより、少しエッチなことをするのもいいかもしれないわね。後輩とのコミュニケーションよりも、いいかもしれないわ・・・ん」
不意にリアスが俺の額にキスを落としてくる! ヒエェェェェェェェ!! 何でこうなってるの!? なんかライザーとの一件以来、リアスの何かが変わった気がするのだけど、気のせいか?
「おいリアス・・・いくら何でもこれは度が過ぎるぞ? これ以上何かするなら・・・」
「襲いたくなる?」
凛とした口調ではなく、微笑を悪戯っぽい口調で返してくる・・・心なしか、体を更に密着させてきている。
「いいわよ、あなたの喜ぶことなら何でも・・・し・て・あ・げ・る」
「!?」
耳元で囁く声はさっきの悪戯口調とはまた違い、完全に誘惑してくる声音。
思考が雷に撃たれたかのように、弾け飛ぶ。瞬間・・・。
「リアス・・・早朝からなにしてるにゃ?」
「うぅ・・・トーヤさん」
「・・・・・・先輩」
とてつもなく冷め切った引く声音に背筋が凍るほどの殺気。ギギギギギと、恐る恐る首を動かすと、怒りと殺気マックスの黒歌と小猫に、涙目で頬を膨らませ不機嫌マックスのアーシアだ。
・・・何て最悪なタイミングだ。しかもこの状態では弁解の仕様がない。
俺は上半身だけを起き上がらせ笑みを作る。
「あ、お、おはようみっ」
「あら? おはよう黒歌に小猫にアーシア。よく床で眠れたわね」
ニッコリ笑うリアス。
黒歌の目元が引きつり、小猫が腕を回し始め、アーシアは泣く寸前だ! マズイ! 非常にマズイぞ! 何とかこの場を収めないと・・・。
俺が必死に脳細胞をフル回転させているのにもかかわらず、リアスが首に腕を回し体を預けてくる。
「今私はトーヤと朝のコミュニケーションを取っているの。だからもう少し待っていなさい」
リアスゥゥゥゥゥゥ! 何で火に油を注ぐまねをするのさ!?
「「「トーヤ(先輩)『さん』」」」
3人が我慢の限界なのか、次の瞬間いきなり服を脱ぎ始めた・・・って何してんだよ!?
「リアスだけずるいわ! 私もトーヤとコミュニケーションするにゃ!!」
「私も・・・・・・裸になって・・・・・・先輩と密着します!」
「私も裸になります! 仲間はずれなんて嫌です!」
「ちょ! お、お前らマジで勘弁してくれ!! 今日は学校だろうがーーーーーッ!!」
早朝から近所迷惑といっても過言ではない大声を上げる。
今日も一日過激な一日だぜ。
「いただきます」
ちょっと遅めの朝食。俺の両脇にはリアスと小猫、目の前には不機嫌マックス黒歌とアーシアが座っている。
美女2人と美少女2人との朝食。俺はなんて幸せ者なんだ!・・・とはとても言いがたい。何せ最近じゃ、食事をとる時、俺の両席に誰が座るかなんて一勝負が毎日ある。正直言ってやめてほしい・・・この勝負が長ければ10以上は続くのだから。
俺の両隣に座っているリアスと子猫は普通に食事をしているのだが、黒歌とアーシアの期限がすこぶる悪い。
んー。 本当に何に対して怒っているのだろう?・・・検討がつかないな。
・・・それにしても今日の朝食は旨い。今日はリアスが作ったらしい。味付けも完璧で、絶品と言うほど美味しい。子猫もさっきからお代わりを何度もしている。
同居することになってからわかった事だが、リアスは料理が上手だ。和食洋食中華、レパートリーも幅広く、たいがいのものを極上の一品として調理している。
お嬢様育ちだからこの手の作業は苦手だと思っていたのだが、予想とは正反対だ。
移り住む前は一人で炊事家事洗濯、全てをこなす。
聞いてはみたが、「お嬢様育ちだからといって、何もできないと思われるのは嫌いなのよ。やれることはやりたいわ」とのことだ。
料理もできて才色兼備。彼女にしたら最高だろうな。できる彼女っていいよな・・・ま、俺には無縁の話だがな。
んでもって、なぜかリアスをライバル視している黒歌と子猫にアーシアは、いつも差を見せ付けられている。
まぁ3人とも努力はしているが、リアスが相手だと厳しいだろうな・・・。
料理の腕では現段階ではリアスが一番だろう。もちろん、みんなの作ったご飯も美味いのだが、相手が悪いと言うのか・・・。
ずずっと味噌汁をすする。おー! うめぇ! やっぱ日本人は和食だよなぁ。
-ゲシッ!-
ッ!? いきなり脛を蹴り上げられた。
・・・原因は分かっている。黒歌と小猫だ。しかも二人とも気で強化してるから結構イテェ。
アーシアはそこまで暴力的ではないのだが、最近は頬を抓ってきたり足を踏みつけてくる。
最近じゃ言葉よりこういう風に訴えてくることが多くなった・・・一体なぜだろう? 見当がつかない。
とまぁ朝食を食い終わり俺たちは学校へ向かう。
何とか無事に学校に到着し、席に座ろうとした時だった・・・。
「「とーーうーーやーーッ!!」」
また煩いバカ二人がやってきやがった。
「貴様!? アーシアちゃんや小猫ちゃんだけでは飽き足らず、リアス先輩と一緒に登校してくるとはどういうことだ!!」
「納得のいく説明を要求する!!」
「ハァ・・・簡潔に言えば、一緒に住んで交流を深めたいとのことだ、以上」
俺の答えに、二人。いや、クラス内の男子が動きを止めた。
「ちくしょう!! 何故こうも棟夜だけ美味しい思いばかりするんだぁぁッ!?」
「イケメンだけがモテる世界なんて間違っているぅぅ!!」
「おのれ神咲ィィィィィ!!」
「今こそ、クラス一丸となる時だ!!」
何名かが騒ぎ、元浜がそう言った直後、男子全員が立ち上がり俺を睨みつけてきた・・・何の真似だ?
「おいおい。これは何事だ?」
「神咲棟夜! 我々『イケメン撲滅部隊』はたった今、現時刻を持って貴様を葬ることに決めた!!」
はい? イケメン撲滅部隊?・・・なんじゃそりゃ?
「我々は悩んだ・・・何故イケメンばかりがモテるのだろうと・・・何故イケメン以外はモテないのだろうと・・・」
別にイケメンじゃなくてもモテる奴はいるだろうに。
「悩みに悩んだ結果、我々は一つの結論に至った・・・それは、この世界にイケメンが存在していることだった!!」
「そして我々は決断した! ならば、全世界のイケメンを消してしまえば、我らにもチャンスは巡ってくるはずだとッ!」
・・・こいつらの言ってる意味が分からない。
「その第一歩として、この駒王学園にいるイケメン。神咲棟夜と木場祐斗を撲滅すると!」
「総員、かかれーーーーッ!!」
「「「「「「「「「「ウォォォォォォォォォォォォォ!!」」」」」」」」」」
・・・やれやれ。バカを相手にするのは気が引ける。
「よっこいしょっと・・・身の程を弁えろよこのバカども!!」
-ドゴバキベキゴンドガズドンゴガ!-
「「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」」←屍。
まったく。実力差をしっているだろうに、無謀なことをする。これを企てた元凶二人は少々人前には出せない程酷い状態であることには違いない
「「・・・・・・・」」←言葉では言い表せない程、ボッコボになっている元浜と松田。
まぁ、どうせ数分後には元に戻っているだろう。気にする必要はない・・・。
「うおぉ!? 何だこりゃ!?」
「お、一誠か。おはよう」
「あ、おはよう・・・ってそうじゃねぇよ! どういう状態だよこりゃ!!」
「襲ってきたから返り討ちにしてやった・・・ただそれだけだ」
「お・・・おう。そうかい」
目元を引きつらせ苦笑いを浮かべる一誠。ここにお前がいなくて正解だな。
「でもこれどうするんだ? 後10分でHR始まるぞ」
「放っておけ。俺は寝る」
それだけ伝え、俺は椅子に座り直し寝入る。
一誠side
「・・・連絡事項はこれくらいだな」
朝のHR。いつもより少し遅めに起きた俺は、眠気と戦いながら連絡事項を聞き流している。
今日は休日の土曜日。休みがあった教科の補講を行うために学校に来ている。正直言って休みたいのが本音だが、半日授業なのでワザワザ学校に来ている。
この後は俺の家でオカ研の会議を行う。今日は旧校舎を業者に頼んで掃除させると言っているが、これは嘘。部長が言うには、使役している使い魔に旧校舎の全体を掃除させるらしい。
「後一つ重要な話がある・・・このクラスに転校生が入ってくる」
転校生? この時期に?
「先生! 相手は女の子ですか!?」
「女子だ・・・しかもとびっきり可愛いぞ」
「「「「「おぉぉぉぉ!!」」」」」
松田の質問に先生が答えると、男子が色めきだった。本当にお気軽な奴らだ。
「入ってきていいぞ」
廊下に向かって言葉を投げかけると、扉が開き・・・おぉ! 茶髪でメガネっ子。結構可愛いぞ!! ってかあの子? どこかでみたような感じが・・・。
「紹介する。京都の学校から転向してきた柴崎綾だ」
「あ、あの。柴崎綾です・・・よろしくお願いします」
「茶髪美少女ーーッ!!」
「バスト99! ウェスト58! ヒップ79! グゥ~!」
「「「「「グゥ~!」」」」」
柴崎・・・! 思い出した!! たしか棟夜の幼馴染の女の子だ!
「これから卒業まで一緒に過ごすクラス仲間だ。仲良くしてやれよ。とりあえず柴崎の席は・・・」
「あ、あの先生。このクラスに神咲棟夜君はいますか?」
「神咲?・・・アイツならあそこで寝てるぞ?」
指さす方には一人だけ寝てる棟夜の姿が映る・・・よく寝れるよな。
「何だ? アイツの隣が良いのか?」
「はい。神咲君の隣だと安心できるから///・・・」
頬を赤く染める柴崎・・・これは棟夜にほの字か。
「それなら座って良いぞ。丁度隣の席が空いているしな」
「はい!」
嬉しそうに小走りで駆け寄り、隣に座る。
「ち、チクショウ!!」
「何故棟夜だけぇぇぇ!? 理不尽だ!!」
元浜と松田が嘆く。最初は俺もそうだったけど、所詮イケメンには勝てねぇしな。
「それじゃ。半日だけだが、何も問題を起こすなよ」
担任が出ていくと、クラスの男子が柴崎に一斉に近づく。
「柴崎さん! 好きな男はいますか!?」
「どういったタイプが好みですか!?」
「どういったところに住んでいたんですか!?」
「え!? あ・・・あの。わ、私は・・・」
うわぁ。よってたかるからメチャクチャ困ってるじゃねぇか。
「柴崎さん! 神咲とはどういう関係ですか!?」
「イデェ!? ンの野郎~」
あ・・・滑り込んできた奴が棟夜にぶつかって倒しやがった。後頭部を摩りながら棟夜が起き上がってぶつかってきた野郎に足をあげて・・・。
「ヌン!」
「グハ!?」
ゴンと鈍い音を響かせ、踵落しがさく裂した。痛そう。
「一体何の騒ぎだ・・・って柴崎!?」
さっきまで怒ってた棟夜だけど、柴崎を見た瞬間、目を見開いて驚いている。
「あ、神咲君!」
柴崎は笑顔を浮かべて、棟夜の背に隠れた。
確か男性恐怖症なんだっけ? そりゃいきなり来られたら怖いよな。
「あー悪いんだが、柴崎は男性恐怖症でな。あんまり近づかないでくれ・・・それでも近づくなら少々痛い目にあうよ?」
・・・笑みを浮かべて拳を握りしめる仕草を見せると、全員の顔が真っ青になった。
そりゃあんだけボッコボコにされりゃぁな。
「そういうことだ・・・柴崎。少し話しようぜ」
「う、うん!」
手を握って廊下に出ていく二人・・・羨ましいぜ。俺も欲しいな。
あ。アーシアが涙目で不機嫌の様子だ。
「うぅ・・・トーヤさん」
こりゃまた何かありそうだな。
棟夜Side
柴崎と一緒に廊下に出て、教室から離れ人目がつかない場所に移動する。
「久しぶりだな柴崎。3年振りか?」
「4年振りよ」
「そっか・・・4年か。あっという間だな」
「うん」
「親父さん元気か?」
「もう毎日元気だよ・・・体に気をつけてほしいのに、本当に心配させるんだから」
「ハッハハ! あの人は幾つになっても元気だからなぁ」
柴崎の親父さん・・・仕事は建設関係の係長で、気前が良くて部下から信頼が厚く、親のいない俺を実の子のように思ってくれた人だ。
それから俺たちは他愛ない話をした。
「おっと、あと少しで授業が始まるな。教室戻ろうぜ」
「あ! 待って!!」
教室に戻ろうとした時、柴崎に引き止められた・・・何だろう?
「歩きながらじゃダメか?」
「ダメじゃないけど・・・えっと・・・その・・・」
頬を紅くし両手を合わせモジモジとする。何か言いたいのか?
「私の事、柴崎じゃなくて・・・・あ、綾って呼んでくれないかな?」
「? 綾って呼ばれたいのか?」
「う!・・・うん///」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうに俯く。
まぁ別に良いけどさ。
「OK。それじゃ、教室にもどろっか。綾」
「!! うん!」
綾と呼んだ瞬間、嬉しそうに笑みを浮かべて俺の後ろをついてくる。
こういっちゃ何だが、後ろからついてくる綾が小動物に見えたのは秘密だ。
そして半日授業が終わり、俺と一誠、アーシアに小猫。そして綾を加え一誠の家に向かってる最中だ。
・・・しかし、その一行の雰囲気は重かった。
「・・・なぁ棟夜」
「何だ一誠?」
怪訝な表情を浮かべた一誠が小声で話しかけてくる。
「お前さ。マジであの子連れて行くのか?」
あの子とは綾の事だ。これからオカ研会議をするところに綾を連れて行くわけだが・・・そのせいでなぜか小猫とアーシアの不機嫌オーラを発しているだ。仲良くしないといかんぞ?
「大マジだぜ」
「絶対部長が拒否するぜ。俺たち悪魔の集まりに人間を加えられねぇよ」
確かに綾は外見上人間だが・・・まぁいいだろう。
「綾の事はみんなに話すからさ。今は黙っていてくれ」
俺がそういうと、一誠は納得のいかない表情を浮かべていたが、小声で『分った』と言ってくれた。
そうこうしているうちに一誠の家に到着した。中には木場と朱乃にリアス、黒歌が既にいた。
俺がリアスに綾の事を話、オカ研に入れてくれないかと話したが・・・。
「絶対にダメよ」
と拒否された。まぁ予測は出来たことだ。別段驚く必要はない。
「トーヤ。彼女に私たちが悪魔だって話したの?」
「いや。神話やファンタジーに出てくる悪魔や神がいるかどうか研究会と嘘をついたがな」
「・・・それ、大丈夫なの?」
「問題ない」
木場に苦笑いでツッコまれた・・・まぁ、ここに全員そろっているし、綾の正体を離しても大丈夫だろう。
「なぁリアス。そうしてもダメか?」
「ダメよ」
「フゥ・・・分かった。なら、これでもダメって言えるか? 綾。いいぞ」
「・・・いいの?」
「俺が保証する。大丈夫さ」
綾は少し考える素振りを見せると、『分かった』と言い目を瞑る。そして変化が起きた。
頭部から黒歌と小猫と同じ猫耳が出てきた。
「! 耳!?」
「あなた、人間じゃないの!!」
「でも尻尾がないけど・・・」
耳を出した綾は皆の反応に恥ずかしそうにして、俺の背に隠れてしまった。
「綾は純粋な人間じゃない・・・猫獣人と母と、人間の父の間に生まれたハーフだ」
「よ、とろしくお願いします」
背後から弱々しい声であいさつをする・・・もうちっと人見知りは治した方がいいな。
「と言うわけで、オカルト研究部に入部させてはくれないかな?」
「・・・理由は何? どうしてそこまで入部させたいの?」
「綾が人見知りで男性恐怖症だから。それに、綾はめずらしい精霊魔術を扱える・・・綾」
「うん・・・炎精霊≪サラマンダー≫。水精霊≪ウンディーネ≫。風精霊≪シルフ≫。土精霊≪ノーム≫。みんな、出てきて」
綾が胸に手を当て何かに呼びかけると、何もない空間から、炎が灯り、水が集り、風が収束し、人の形を形成していった。
「何だ、綾よ? 何がおこっ・・・悪魔か?」
「ファ~・・・マスタ~。何か用~? ってあれ~? 悪魔だ~」
「この感じ・・・悪魔ね」
強気な口調の炎の精霊サラマンダー。ゆったりとした口調の風精霊シルフ。物静かな水精霊ウンディーネ。そして・・・ってあれ?
「綾。ノームはどうした?」
「あれ? さっきまで私の中に・・・あ! 神咲君、足元!」
「足元? おぉ! いたのか」
「・・・・・・・・」
綾の言う通り、無言で俺の足に抱き着き皆の様子を窺っている土精霊ノーム。
ちなみにノームは喋ることはない。
「それって、みんな精霊?」
「正解。綾は幼い時、偶然人間界に来てた4精霊と契約できたんだ」
みんなに話をすると、いきなり俺に飛びついてきた。
「神咲ではないか! 久しいな!!」
「神咲お兄ちゃん! おひさ~!」
「・・・久しぶり・・・神咲」
「・・・・・・・・・・」
サラマンダーは頭、シルフとウンディーネは肩に。ノームは胸元に抱き着いてきた。
「あらあら。仲がよろしいのですね」
「まぁ俺も良くこいつ等と遊んでた時があったからな・・・これを見ても、まだ入部させてはくれないかい? 責任は取るからさ」
俺のお願いにリアスは頭を抱えていたが、大きく息を吐いた。
「分ったわ・・・特別にその子の入部を許可するわ」
「ぶ、部長!! 良いんですか!?」
「ええ。何より、私自身精霊魔術というのを見てみたいから」
何とか許可が下りた。一安心と思っていると、扉が開き、一誠の母親がお盆にお茶を入れたコップを人数分入れて持ってきてくれた。
一誠Side
棟夜の幼馴染、柴崎綾がオカ研に新たに加わり会議が始まるかと思いきや。
「で、こっちが小学校の時のイッセーよ」
「あらあら。全裸で海に飛び込んでますわね」
「ちょっと朱乃さん! って母さんも見せんなよ!」
母さんが持ってきたアルバムで崩壊した。
「・・・・・・イッセー先輩の赤裸々な過去」
「小猫ちゃんも見ないでぇぇぇぇぇ!」
最悪だ! 俺の恥ずかしい過去を収めた悪夢が!! うわぁぁぁぁ! 死にたい!
・・・そういや母さんは昔から言ってたっけな。
「いつか女の子のお友達がたくさん家に来たら、イッセーのアルバムを見せてみたいわぁ」
その夢は俺がモテないことから、儚いものだと思っていた・・・が、悪魔になったことで俺の人生が反転したせいか、、このような事態に・・・。嫌な夢が叶っちまったよ!
「・・・幼いころのイッセー幼いころのイッセー幼いころのイッセー幼いころのイッセー・・・」
部長。幼少期の俺の写真をまじまじと見られると恥ずかしいんですけど・・・ってか部長? 顔を真っ赤に染めているのですか?
何やらぶつぶつ言ってらっしゃるけど、満足そうだ。部長って、まさかのショタコンですか? そういう風には聞いてないけど・・・。
「私もなんとなく部長さんの気持ちがわかります!」
アーシアも部長と同じアルバムを見て目を輝かせている。
ってか木場と棟夜もアルバムを見てやがる! クソ! 野郎に見られると腹が立つ!
「おい木場! 棟夜も見てんじゃねぇよ!!」
二人からアルバムを取ろうとするが、軽快な動きで躱しやがる。
「そうケチケチすんなよ」
「いいじゃないか。もう少し楽しませてよ」
とびかかっても、二人はひょいひょいと避けやがる! こんなところで実力差を感じる!
暫く追いかけっこをしていると、笑顔でアルバムを見ていた木場の奴が、何か予想外のもの見つけた感じでまじまじと見ている。チャンス!
動きが止まっている木場のアルバムを取ろうとした時。
「イッセー君」
振り向きもせず真剣な声音で俺の名前を呼んだ。おいおい、なんかいつもと声のトーンが違うぜ。
俺が近づくと、一枚の写真を見せてきた。そこにはガキの頃の俺と同年代の男の子が映っていた。
この男の子、覚えているぞ。幼稚園児時代、近所に住んでいた子だ。よくヒーローごっことかして遊んでたっけな。
小学校に上がる前に、親の転勤とかで外国に行っちまって、それっきりだ。
「これ、見覚えは」
木場が指差す方には、壁に立てかけられた剣だ。
「うーん・・・いや。何分ガキの頃過ぎて覚えてないな」
「そっか。こんなことがあるんだね。思いもかけない場所で見かけるなんて・・・」
一人ごちて苦笑する木場。だけど、その眼には寒気がするほどの憎悪に満ちていた。
その一枚の写真が、今回の出来事の始まりだった。
「これは聖剣だよ」
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