白き竜の少年 リメイク前
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写す瞳
シリュウが丘の上からまだ夜に包まれた光の国を見下ろす。小さく、そして活気のない国。今や反乱の目が広がろうとしているというのに気付かない大名は毎日大名家や茶人を呼んで茶会を開く。刀を集めるのに没頭する隠居と、賄賂を渡して保身に走る商人と家老。それを今日破壊出来るという事に歓喜していた
「あの距離をこんなに短縮出来るとは・・・・助かりましたよ。ダイゴ」
シリュウがお礼をにこやかに述べる。隣に立つ目が隠れる程に伸びた黒い髪が特徴の青年 ダイゴは彼自身の雰囲気の暗さと髪の長さも相俟って、幽霊のように感じる程だ。少しでも意識を外したら隣にいるシリュウでさえもいるのを忘れてしまいそうな程である
「命令に従ったまで」
掠れた小さな声がシリュウの耳に届く。するとシリュウはフッと微笑み、命令する
「貴方は城を。私は城下町をやります」
「了解」
太陽が昇り始め、空が明るくなってくる。しかし、光の国は今、混乱に包まれていた
「姫。起きて下さい!アサヒ姫‼︎」
カナがアサヒを揺する。それを何度か繰り返し、アサヒは漸く身体を起こす。まだ、眠いのか目を擦っているが、そんな悠長にしていられる状況ではない
「どうしたのですか?」
「早く準備を!」
昨日と同じ柄の着物を着たハルマとレツが鋭い目で外を見ている。家が焼け、燃え移る。また別の家が燃えて被害は増え続け、この宿が燃えるのも時間の問題だ。今はリンやオビトを始めとする上忍、中忍が消火しようと尽力しているが被害はそれを上回る
「ハルマ。これは」
「ああ。忍の仕業だろうな」
「城も燃えてるようだしよ。夜桜はどうする?」
レツの言葉に着替えを済ませ、近くにいたアサヒが悲痛な表情で言う
「そうです!夜桜が‼︎」
アサヒの様子を見て、ハルマはレツとカナの二人に自身の考えを話す
「レツ。カナ。ああなれば作戦もどうもない。今、城は混乱している筈だ。取るのは今をおいて他にない」
「俺が取りに行く!お前らは姫を守れ」
ハルマの言葉に驚く訳でもなく、二人は顔を見合わせて笑う
「りょーかい」
「分かったわ。とりあえず私達は行きで乗った船を拾って城下町から離れた場所に移動する。船を集合場所にしましょう」
カナの言葉にそれが妥当だと判断したハルマは小さく頷く。土地勘のないこの場所において分かりやすい船を目印とした方がいい。それが三人の考えだった
「分かった。じゃあ、頼むぞ」
ハルマが城の方へ向かうとレツとカナはアサヒを連れて門へ急ぐ
城の前に着き、ハルマは城を見上げる。所々焼けているもののまだ全ての場所に燃え移ってはいない
「まだ入れるか」
そう判断すれば、すぐに門番のいない城門から城の中に入って行く
「全員死んでる」
城の中に入って驚いたのは倒れてる人間が全員生き絶えている事だ。これは犯人と戦う事も想定しなくてはならないとハルマは気を引き締める
5階からなるこの城の構造は把握してはいない為、四体の影分身を出し、本体は5階に向かう
影分身の一体が3階に着き、中を探索していると火が燃えている箇所があちこちに見える。まだ生きている人間もいるようで、火の先にありや部屋から女性の声が聞こえ、ハルマは印を結んでいく
「水遁・水乱波の術!」
ハルマの口から大量の水が放たれ、火を鎮火する。そのまま扉を開けると三人の女性がいた。彼女達に駆け寄るハルマは何があったか問い掛ける
「大丈夫か?何があった?」
年長者らしき女性が首を横に振り、答える
「詳しくは分かりません。ただ突如、何者かに城が襲われ・・・」
彼女達はおそらく知らないだろうと予想を付けたハルマは彼女達に元々この城へ来た理由である刀の場所を問う
「そうか。刀がどこにあるか分かるか?」
「刀なら5階に」
「そうか。分かった。早く下に降りるんだ」
彼女達が下へ降りたのを確認すると分身は術を解く
5階に行った本体は辺りを見渡す。一面が火ついている。それを水遁で消しつつハルマは前へ進む
「この階か」
影分身には経験値のフィードバックという特性がある。分身を解いた時、残りの分身や本体に情報が還元されるのだ。それによってハルマは刀のある場所を知る事が出来たが、気になるのはこの先にある気配だ。不気味な気配にハルマの警戒は高まっていた
「(刀よりも先に気配の方へ行くべきか。火事を起こしたのは多分奴だ)」
少し進んで部屋を開けるとそこには燃える部屋の中、縄で縛られた恰幅のいい老人と男性の二人に彼らに刀を向けるダイゴの姿をハルマは確認する。大広間らしき部屋の柱に縛られた二人を見た瞬間、ハルマは袖から巻物を取り、開く
口寄せされたクナイを取り、ハルマは投げる。避けられたものの、意識をこちらへ向けさせる事は出来たようだ。顔がハルマを見つめる
「何者だ?」
ダイゴの掠れた声でハルマに問い掛けるが、ハルマは軽く笑ってダイゴに質問を返す
「あんたこそ何者だ?」
「知る必要はない・・・・お前は死ぬ」
そう言い、迫るダイゴはハルマに剣を振るう。屈み込み躱したハルマはそのまま足に蹴りを放つが、ダイゴは後ろに大きく跳ぶ事でそれを躱した
「よく躱した。だが、次はない」
ダイゴが刀を捨てて印を結ぶ
「火遁・豪火球の術!」
「水遁・水龍弾の術!」
等身大の火の球と龍を模った水が激突する。互角のように見えたが、直後ハルマの放った水龍弾が火遁を打ち消し、ダイゴに迫った。それを躱しつつもダイゴは明らかな動揺を隠せずにいた
「水がない場所でこれ程の水遁を⁉︎」
「あんたの火遁が弱いだけだ」
ハルマは一気にダイゴに接近する。パンチで腹部に手痛い一撃を与えるとダイゴは腹を抱えながら後ろに下がる
「(今のうちに二人を助けて夜桜を回収するか)」
「待て。ここからは俺も本気でやろう」
ゾクリとハルマを悪寒が襲う。振り返るとそこにはクナイを手に取ったダイゴがいた。彼は驚く事にそれで前髪を切る。そして、ゆっくりと彼の両眼が開かれる
”三つの黒い勾玉が見える赤い瞳,,
ハルマはそれに見覚えがあった
「写輪眼⁉︎お前も‼︎」
うちはの家系にだけ現れる特殊な瞳。写輪眼。それをダイゴが持つ事ハルマは驚き、目を見開く
「そうだ。俺はうちはダイゴ。貴様にうちはの恐ろしさを教えてやろう」
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