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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百十七話 ある晴れた日にその一

                 第百十七話  ある晴れた日に
 僕達はグラバー邸から下の場所に降りてある銅像のところに来た、着物を着た女の人が子供を連れている像だ。
 その像についてもだ、裕子さんは僕に話してくれた。
「ご存知とは思いますが」
「はい、三浦環さんのですね」
「蝶々さんを演じておられる時の像です」
「そうですよね」
「蝶々さんを当たり役にしていました」
 日本人としてだ。
「大戦前のことです」
「それで世界的な名声も得ていたんですね」
「そうでした」
 こう僕に話してくれた。
「古い昔ですが」
「そうでしたね」
「苦労されたと思います」
「最初の世界的な日本人のオペラ歌手として」
「当時は人種的偏見も強かったですし」
 排日移民法なんて法律があった位だ、今こんな法律があったらその国は間違いなく世界中から糾弾を受けることは間違いない。
「苦労されたことは間違いないです」
「そうですよね」
「人種差別を煽る新聞もありましたし」
 所謂イエローペーパーだ、残念ながら今の日本にもそうした悪質なタブロイド紙があるらしい。とんでもない話だ。
「酷いことに」
「そうした新聞もあって」
「今以上にです」
 それこそ想像も出来ない位にだ、今からだと。
「苦労されたと思います」
「やっぱりそうですよね」
「ですが」
「それでもですよね」
「世界的な名声を得られていました」
 そうした偏見にも負けずにだ。
「私達が生まれる遥か前に」
「凄い人ですよね」
「私もそう思います、それに」
「それに?」
「三浦環さんの歌は残っています」
「録音が残ってますか」
「今ここでもかかっている」
 実はこの場にはある晴れた日にの曲がかかっている、三浦環さんが得意としたその曲がだ。
「このある晴れた日にだけを集めたCDがありまして」
「その中にですか」
「三浦さんの歌もあります」
「そうなんですね」
「他にも代々の名歌手の録音がありまして」
 ある晴れた日に、を歌ったそれがだ。
「その最初の人がです」
「三浦さんですか」
「そうです」
「それも凄いですね」
「マリア=カラス等の歌もありますが」
「カラスよりもですか」
「年代順に並べられているにしましても」
 あのカラスよりもというのだ。
「先にあります」
「それは凄いですね」
「そしてそれだけの人だと思います」
 三浦環という人はだ。 
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