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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百十六話 長崎の街その十三

「歴史と歌劇の場所です」
「その両方がある場所ですね」
「そう思います、グラバー氏の邸宅であり」
 現実の話だ、あの場所で志士達とも話をしていた。
「見事な庭園ですが」
「悲劇の舞台でもありますね」
「そうでもあります」
 蝶々さんは所謂現地妻だった、アメリカ海軍の若い将校の日本でのそうした存在だった。蝶々さん自身はそうは思っていなかった。その為真実を知った蝶々さんは子供を託してそのうえで自決してしまうのだ。
「歴史、そして歌劇」
「二つが入っていて」
「共にあるんですね」
「そうです、そして今からです」
「そのグラバー園に入って」
「両方を観ましょう」
「そうですね、蝶々さんも観ましょう」
 僕は笑顔で応えた、そしてだった。
 早百合さん、畑中さんの奥さんと四人でグラバー園に入った。グラバー園は長崎らしく坂が急だ。もっと言えば山みたいだ。坂どころか。
 だが奥さんはその坂をだ、すいすいと上がっていく。僕はそれを見て奥さんに尋ねた。
「辛くないですか」
「坂道の行き来がですね」
「はい、そこは」
「全くです」
 奥さんは僕に微笑んで答えた。
「坂道も階段もです」
「辛くないんですね」
「いつも鍛えていますので」
 足腰の鍛錬を行っているからだというのだ。
「ですから」
「だからですか」
「これ位は何ともないです」
「畑中さんと同じですか」
「はい、主人も鍛錬を欠かしていませんが」
「奥さんもですか」
「そうしています」
 まさにというのだ。
「薙刀を」
「それで鍛えておられるんですね」
「そうしています、日々」
「成程、そうしていればですか」
「この歳になってもです」
 それでもというのだ。
「坂道も階段も苦にならないです」
「鍛えていれば」
「そうです、ただ痛めてはならないです」 
 鍛錬をしていればというのだ。
「ですから鍛錬の後の整理体操もしています」
「ストレッチとかもですか」
「欠かしていません、それも鍛錬のうちです」
 ストレッチもというのだ。
「入浴して身体を温めてもいます」
「ああ、お風呂で」
「膝や腰もです」
「そうですね、シャワーだけだと」
 どうしてもだ、僕もこのことはわかる。
「身体がほぐれないんですよね」
「左様ですね」
「身体は奇麗になっても」 
 洗ってだ。
「それだけで」
「ですから疲れを取りほぐしてです」
「痛めない為にですね」
 筋肉も関節もだ、その両方をだ。 
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