終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?赤き英雄
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太陽の傾いたこの世界で
走る黒猫と灰色の少女
この空には、百を越える数の巨大な岩塊が浮かび、風に彷徨っている。『浮遊島』と呼ばれるその小さな大地の上が、いま、人々が息づき住まうことのできる世界のすべてだ。
「……どうしたの?」
少女が、こちらの顔を覗き込んでいた。
「いや、何でもない。青空が目に染みたとか、そういうのだ」
カイトは軽く首を振ると、いつもの笑顔に戻した。
「なに、それ」
少女はくすくすと笑うと、辺りに誰の姿もないことを確認して、帽子を脱いだ。
蒼い髪が空と同じ色の髪が、風にほどけて流れるように、あふれ出す。
「この眺めが見たかったのか?」
「そう。
もっと高いところからとか、もっと離れたところから浮遊島を見たことはあるんだけど、ちゃんと街の中から街を見下ろしたことが、今までなくて」
辺境寄りの浮遊島に住んでいる子なのだろうか、と思う。
カイトは少女の笑顔見て少し昔の事思い出しそうなるが今ここでの自分の立場思い出して少女に言おうとしたことを止めた。
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