終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?赤き英雄
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太陽の傾いたこの世界で
走る黒猫と灰色の少女
なのかは判断がつかなかったが、少なくとも、妙に萎縮していた先ほどまでよりは年相応に見える。
そして、今。
「わあー」
申し訳程度に設置された手すりから身を乗り出すようにして、分かりやすい感嘆の声をあげている。
確かに、良い眺めではある。間近に見ればごちゃごちゃしているだけのあの街並みも、遠く見下ろせば、精緻に描かれた飾り模様のように見える。誰に設計されたわけでもなく自然に広がっていったのだという路地のまがりくねり具合も、俯瞰してみれば本物の生物のような躍動感があるようにみえなくもない。
そこから少し視線を上げれば、港湾区画。浮遊島の外縁の一部を金属で覆い、飛空艇の発着に必要な設備を整えた、島にとっての玄関に当たる場所。
そしてその向こう側には当然のように、蒼い空が広がっている。
ここは、空の上だ。
かつて地上と呼ばれていた世界は遠く、様々な意味で手の届くところにはない。
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