八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百十六話 長崎の街その六
「曽祖父が目立つ派手なお店ではなくて」
「普通のですか」
「コーヒーや紅茶の味で勝負をする」
「そうしたお店にですか」
「したいと言っていたそうで」
それでというのだ。
「外観は普通です」
「そうですか」
「はい、味で勝負です」
そうした考えのお店だというのだ。
「今もそうした考えで父が経営しています」
「そうしたお考えですか」
「そうです、そして兄が店を継ぎますが」
「お兄さんも味、ですか」
「コーヒーと紅茶を淹れる勉強をしています」
現在進行形でというのだ。
「それも毎日熱心に」
「毎日ですか」
「そうです」
こう僕に話してくれた。
「紅茶とコーヒーに」
「カステラですね」
「それもありますので」
だからだというのだ。
「お楽しみにしておいて下さい」
「では今から」
「行きましょう」
裕子さんの実家であるその喫茶店にだ、僕達は案内されていった。路面電車の駅からすぐそこの場所に。
中に入るとこれまた落ち着いた造りだった、白を基調とした奇麗なお店だった。
テーブルや椅子も白い、その白が確かに地味だけれど奇麗で好感が持てた。その店の中に入るとだった。
お店のカウンターから声がした、その声は。
「今度は男の子がいるな」
「その子誰なの?」
「八条荘の人よ」
そうだとだ、裕子さんが二人に話した。
「この人は」
「ああ、そうか」
「いつも携帯でお話してた人ね」
「八条荘の管理人の人か」
「その人なのね」
見れば白いエプロンの顎鬚を生やした少し太めの大柄の男の人と裕子さんを中年にした感じの女の人がいた。白いエプロンは男の人と同じだった
「いい人と聞いていたが」
「そんな感じね」
「あれっ、悪人じゃないとか」
その言葉についてだ、僕は驚いた。初対面なのにわかるのかとだ。
「わかるのかな」
「客商売だからな」
顎鬚の男の人が笑って言ってきた、お髭は顎だけにあってそれが見事なまでに黒々としている。長さは髪の毛と同じ位の長さだ。
「わかるさ」
「そうなんですか」
「目でな」
「目、ですか」
「そうだ、人は目に出るんだ」
そうだというのだ。
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