艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~
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第二十六話
前書き
どうも、世界バレーをみながら執筆してたら、圧倒的に遅れてしまいました。てへ。
―練習海域―
さて、俺は今、練習海域にて雷撃の訓練を始めていた。本来であればこの場所に木曾がいるはずなのだが……アイツは今、二日間の自室謹慎を食らっている。なんとなく申し訳無い。
そんなわけで俺は天龍辺りに見てもらおうと思っていたのだが。
「いやー、本当に海の上に立ってんのな。今でも信じられねぇや。」
何故か知らねぇが、悠人が手漕ぎボートで俺の近くに浮かんでいた。
「…………なんでお前がいるんだよ。拓海はどうした。」
「拓海は今、提督の仕事の手伝いとかだってさ。あいつがここに来たお題目は研修だからな。多少はしとかなきゃダメなんだろ。」
悠人はそう言った後、他のところで訓練している艦娘を見始めた。
「ふむ…………なかなかいいな………………。」
と、方角的には軽巡洋艦や重巡洋艦の方向だった。
…………なんだ、女の子の見極めか?でもなんか基本的にみんなレベルは高めだしな………。
「なぁ千尋。」
と、いきなり悠人が話し掛けてきた。
「どうした?」
「お前、こんなに最高な所で生活してんのかよ。」
意味がわからなかった。俺的には命懸けてるだけで気分的には最低なんだけどな。
「女の子のパンツ見放題じゃねぇかよ!!」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。」
俺は、黙って訓練用の砲門を悠人が乗っているボートに向けた。
「ちょま、おま」
ドォン!
なんの躊躇いもなく引き金を引いた。
砲撃は目視できなかったが、砲撃してから直ぐに、悠人のすぐ後ろで水柱が立った。
「ちっ。外したか。」
俺は再び砲門を向ける。
「ストップストップ!お前はあれか!親友を殺してもなんとも思わねぇのかよ!」
「親友?バカ言うな。」
俺はそう吐き捨てる。
「テメェらの命守るために訓練してる奴等を見てそんなこと言う親友なんざ、俺は一人も持ち合わせていないね。」
そりゃあ俺もここに来てから、そんなもの何回も見たさ。ぶっちゃけ興味ねぇけど。
でも、あんなにボロボロになりながら戦ってる奴を見たら、そんなことも言えなくなった。
確かに目の前の男は親友だ。大親友だ。
だが、だからこそ許せない。
「………………すまん。」
悠人は、そのまま頭を下げた。
「次から気をつけろ。次は外さん。」
俺はそう告げると、遠くの的の方に体を向けた。
俺は昨日木曾に習った、固定砲台法、またの名をハイパーズポーズ(いまだに思い出し笑いが止まらない。)をとる。
息を吸って、集中。
発射。
右肩への衝撃に耐えた後、魚雷の行くえを見守る。
魚雷は途中まで真っ直ぐ進んでたのだが、途中で左に大きく旋回したかと思えば、近くの岩場に激突した。
訓練用の魚雷だから爆発はしなかったが、それ以外は本物と同じはずだ。
「ちくしょう、なぜ当たらん。」
木曾ですらわからなかったものが俺に分かる訳もなく、この二日間位悩みっぱなしだ。
いっそのこと、魚雷を手に持って投げてやろうか。今の状態なら絶対その方が精度高いだろう。
そんな感じで悩んでいる時だった。
「入れようとしなきゃ入らない、だろ?」
いつの間にか隣に移動していた悠人がそう言った。
「…………それって、中学の時の顧問のセリフじゃねぇか。」
俺が中学生のとき、少しスランプに陥っている時期があった。何本シュートを打っても入らない、むしろゴールやボードにかすりもしない、そんな状況だった。
そんなとき、顧問の先生が俺にそのセリフを言ったんだ。
「要するによ、またあのときと似たような状況なんだろ?だったら原点回帰だ。」
あのときも、こうしたらどうだろう、ああしたらどうだろう、このほうがいいかな、どうしたらいいだろうと、ひたすら考えてた。
その時と同じだ。
「まずはあれに絶対当てると思っとけ。当たるかもなんて中途半端な気持ちじゃ、当たるもんも当たらねぇ……そうだろ?」
あぁ。
こいつは、確かに親友だ。
俺のことをよく知ってらぁ。
「サンキュー。いいこと聞いたわ。」
俺は再び的の方に向き直って、構える。
…………ぜってー当てる。これ当たんなかったら昼飯お握り一個だ。
俺はそんなことを思いながら、約二百十メートル先の的に狙いを定める。
バスケで言うなら、ラスピリ残り一分、同点で貰ったフリースローの様な気持ちで望む。
「…………………。」
俺はじっと海の様子を見ていた。
波は低めで左から右。少し右よりで撃とう。俺はそう思って少し右に体を向ける。
大きく息を吸って、止める。
「………………はぁ!」
俺は意を決して引き金を引いた。右肩に衝撃が走った後、魚雷が発射された。
「いっけぇえええええええええ!」
魚雷はほぼ真っ直ぐの軌道で進んでいた。しかし、途中で波に軌道を変えられたのか、少し左に曲がり始めた。
「当たれえええええええええ!」
願いが通じたのか、魚雷はそのまま的に向かって進んでいって…………。
ドォン!
中心に完璧に当たった。ここまで完璧に当たったのは、はじめての戦闘の時の相手の魚雷にぶち当てた時以来だった。
「ッシャラァ!見たか悠人オラァ!」
と、俺は後ろを振り返った。
「おう、見てたぜ。やっとこさスタートラインだな。」
そこには、悠人と、もう一隻のボードに乗っている木曾がいた。
「な!?お前、自室謹慎中じゃねぇのかよ!?」
俺は驚いて木曾に近づいていった。
木曾はなにも悪ぶれる様子はなく、いつものクールな表情だった。あいかわらず一晩寝たら切り替えてくる奴だ。
「だってほら、約束したからな。お前に摩耶さんに勝てる位の雷撃技術を教えるってな。部屋で大人しくしてられるかっての。」
やはり思った通り、木曾は約束事は本気で守ろうとしてくれる。他の奴らからの信頼が暑いわけだ。
流石にここまでのバカとは思わなかったが。
「いやー、やっと当たったな!後はその精度を上げるだけだな!」
悠人は満面の笑みでこちらに話し掛けてきた。裏表のない性格ってのはある意味楽なんだろうなと、こいつを見てたらよく思う。
でも、確かに悠人の言う通り、後はこれの精度を高めていれば良いだけだ。ホント、やっとこさスタートラインだ。
「いや、まだまだやることだらけだぜ?」
俺は自分の耳を疑った。木曾の顔を見ると、ものすごい悪そうな笑顔を浮かべていた。悪巧みが成功したような顔だった。
「どうせ摩耶さんのことだからな。点数テストでの勝負じゃなくて実戦形式での勝負だろうな。」
このとき、俺は自分の顔からどんどん血が引いていくのが感じた。ヤバイ、物凄く嫌な予感がする。
「と、言うわけでこれからは精度アップ&速打ち&雷撃回避の練習だ!あと六日あるからな!大井レベルにはしてやるぜ!」
「ざけんじゃねぇえええええええええええええええええええええええ!」
このあとの数日間、俺は生き地獄を見るはめになるのだが…………ご想像にお任せしておこう。
後書き
読んでくれてありがとうございます。僕はバレーボールをずっとしているので、バスケのことはよくわかりませんが、それでも通じる所はあると思います。「入れようとしなきゃ、入らない。」は、僕の恩師の言葉です。うん、どうでもいいですね。
それでは、また次回。
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