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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百十五話 長崎へその十五

「あの名作を作曲しました」
「ある晴れた日、ですね」
 僕は蝶々夫人は一年の時に情操教育とのことで高校の授業の一環で学園内の劇場で聴いた、それも原語でだ。
「あれが一番よかったですね」
「あのアリアですね」
「何といっても」
「あの曲は、です」
「名曲中の名曲です」
 早百合さんだけでなく裕子さんも僕に言ってきた。それも真剣に。
「あれだけの曲はです」
「そうはありません」
「プッチーニ最大の名曲の一つです」
 早百合さんはこうまで言った。
「ですから私もよく弾きます」
「ピアノで」
「そうしています」
 実際にというのだ。
「好きですから」
「何といってもですね」
「そうです」
 こう僕に話してくれた。
「一ヶ月に一回はです」
「弾かれてるんですか」
「そうしています」
 今も革手袋で覆っている手をさすり合わせながら話す、早百合さんは夏でもピアノを弾く手を大事にして手袋を嵌めているのだ。
「あの曲も」
「確かあの曲は」
「歌劇の曲ですから」
「オーケストラですね」
「その為の曲です」
 本来はというのだ。
「あの曲は」
「そうですよね」
「ですがピアノでも弾けますので」
「弾かれているんですね」
「そうしています」
 こう僕に話してくれた。
「一月に一回位は」
「そうですか」
「そして今月もです」
 その時もというのだ。
「弾いています」
「そうですか」
「そして来月も」
 その時もというのだ。
「弾くつもりです」
「九月も」
「それからも、それでは」
 僕に微笑んで言ってきた。
「その長崎に」
「はい、今から行きましょう」
 僕は早百合さんに微笑んで応えた、泥の海は自然と親しみを感じた。普通とは違う海なのに観ているとそれが普通に思えてきた。
 そしてその海が終わってだ、もうすぐ長崎駅というところで裕子さんが僕に言ってきた。 
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