夢幻水滸伝
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第十二話 西の動きその十六
「勿論本体はどれかわかりません」
「しかもそれぞれ動けます」
「そして攻撃も出来ます」
「そやから強いですで」
「わしとその術で戦うか」
山本は七人の佐藤兄を前に強い目で言った。
「そういうことか」
「さもないと勝てませんさかい」
「山本さん強いですさかい」
「さやからこの術使いました」
「強い相手には強い術」
「それがお約束ですさかい」
「わしを認めてくれたんは嬉しい」
それはとだ、山本は佐藤兄ににこりともせず返した。
「しかしじゃ」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「それだけでわしに勝てると思わんことじゃ」
そのにこりともしない顔での言葉だ。
「わしと喧嘩するならな」
「それはわかってます」
「僕かてアホやないですさかい」
「さやからもう一人います」
「そこは忘れてもらったら困りますわ」
「もう一人か」
「はい、うちですわ」
ここでだ、そのもう一人である佐藤妹が山本に言ってきた。
「うちもいますさかい」
「我も術使うか」
「そうしますわ」
その通りだとだ、佐藤妹は山本に答えた。その手に神具を持ちつつ。
「これから」
「ほなその術も見せてもらおか」
「ほな」
佐藤妹もにやりと笑ってだ、そしてだった。
両手で印を結んでだ、こう言った。
「忍法幻影の術」
「!?」
急にだ、場を濃い霧が包んだ。それは己の身体も見えなくなるまでに濃い霧だった。その霧でだ。
山本は槍を構えてだ、こう言った。
「見えんか」
「僕等棟梁よりずっと弱いです」
佐藤兄の言葉がその霧の中から来た。
「そのことは事実です」
「そのことはわかってます」
妹も言ってきた。
「その実力の違いはどうしようもありません」
「けれどそれでも戦い方がありまして」
「強い人相手には術を使う」
「そうしてます」
こう山本に言うのだった。
「ほないきますで」
「容赦しませんさかい」
「思いきりいきます」
「今から」
「来い」
山本も冷静な声で返してきた。
「これでわしを倒せる思うんならな」
「ほな」
「やりましょか」
お互いに霧の中で言い合う、そしてだった。
三人もまた戦いに入った、星達の戦いはここでも幕を開けたのだった。
第十二話 完
2017・4・1
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